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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第二部 終章 ブリング ミー ザ ホライゾン
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Deathbeds_5

 ヒステリーを起こし彼の頬を散々叩きまわしてスッキリした私は、けれど興奮してその夜はろくに眠る事が出来なかった。

逃げるように自室に塞ぎ込み、くたびれたベッドで横になってから、かれこれ2時間。

時刻は4時を回る。

何度か気晴らしに読みかけの小説を手にとっては見たけれど、内容が頭に入ってくるはずもなく。

私はただ、天井を見つめてボーっとしていた。

もうすぐ、朝が来る――もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。


――それならどうして、俺やエンベリィさんを護りたいだなんて言うんですか?


あの日から、これまで散々自分に問いかけて来た、彼の言葉を思い出す。


――本当に、全てが下らないと思うのなら、どうしてアナタは生涯孤独でいることを選らばないんですか?

――どうしてフィルとラニーを引き取ったんですか?


そんな事、アナタに言われなくたって、解ってるわよ。


――誰かの為だなんて、言わないでください。

――アンタはずっと、自分の中の不安と寂しさを埋める為に、ヒトの弱さを利用しているだけです。


 だからなに? 例えそうだとしても、利害が一致しているなら、それでいいじゃない。

何が悪いの? 誰が悲しむの? 誰も傷ついていないじゃない。


――本当に、解らないの?


「……。」


――それは……アナタと、アナタの思い出よ。


「……。」


 胸の奥から響く「何者か」からの声――そして、思わず手を上げてしまった。

全て図星。

もうそれ以上は聞くに耐えられなかった。

そしてもうこれ以上、手遅れになった自分に対して、残酷な真実を背負わせたくなかった。


「子供に手を上げるなんて、最低ね……。」


 私はずっと、逃げて来た。

逃げて、逃げて、逃げて、逃げ続けて――その果てに、それでもなお逃げられないのなら、私はどうしたら良いの……。

そんなの、もう、考えたくもない……。


「……。」


 もうすぐ、朝が来る。

もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。


――それならどうして、俺やエンベリィさんを護りたいだなんて言うんですか?


 もうすぐ、朝が来る。

もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。


――本当に、全てが下らないと思うのなら、どうしてアナタは生涯孤独でいることを選らばないんですか?

――どうしてフィルとラニーを引き取ったんですか?


 もうすぐ、朝が来る。

もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。


――誰かの為だなんて、言わないでください。

――アンタはずっと、自分の中の不安と寂しさを埋める為に、ヒトの弱さを利用しているだけです。


 もうすぐ、朝が来る。

もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。


――本当に、解らないの?


「解ってるわよ……。ずっと、解ってたことじゃない……。」




***




「そんな……。」


いつもと変わらないあの静かな夜――突然の騒ぎに家を飛び出した私たちは、眼前に迫るそれを見て「もう助からない」と、そう絶望した。


「ボーっとするな!! 走れ!!」


 まだ生まれたばかりのヴェセルを抱いて、旦那のアルドが叫ぶ。

震えるリリィの手を引いて、私は転ばないよう足元に気をつけて走り始めた。

ヒトビトの絶叫や呻き声を飲み込んで、徐々に近づいて来る波音。

あちこちで建物は振動に崩れ、街は既に見る影もなく、泣き崩れる者に、転んで助けを呼ぶ者。

親と逸れて泣く子供……。

親が崩れた建物の下敷きになったらしく、懸命に助けようとする子の姿もあった。

それら全て、見殺しにして、ひた走る私達家族。

けれどその頭上にも瓦礫と共に崩れた岸壁が落ちて来て――




私は――




私だけ――




「はは……助かった……。はぁ、クソ……。俺もアンタも、ラッキーだよなぁ……。」


「ラッキー……。」


 私を助けてくれた、その翼人の男に、決して悪気は無かった。

興奮状態で、それを聞いた私の気持ちなんて、解る筈もない。

それはもう解ってる。

解ってるけれど――


 ラッキーだった。

困ってるヒト達を見捨てて、ラッキーだった。

ひとりだけ、助かって、ラッキーだった。

ひとりだけ、生き残れて、ラッキーだった。

私だけ、ラッキーだった。




私はもう、ここで生きてる意味なんて、これっぽっちもないのに――




ラッキー――今もその言葉が、脳裏に焼き付いて、離れない。




***




「くだらない、なんて……。本当にそう思いたいわけ、無いじゃない……。」


 もうすぐ、朝が来る。

もうずっとそればかり延々に考えているが、一向に朝は訪れないままだ。

そんな残酷な、夜明け前の無限。




朝が来る




もう、逃げたくない――




朝が来る




ちゃんと、向き合わなくちゃ――




朝が来る




前に、進みたいのに――




また、朝が来る




「でも……。怖いのよ……。」




ぶっちゃけウィラさんの話は思い付きながらで書いてるんだけど、ケズトロフィス関連の話が悲しすぎる。

なのであまり詳細には掘り下げないこととする。

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