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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第二部 3章 ダッシュボード コンフェッショナル
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Vindicated_1

 6月1日――ホロさんのデートを見届けてボーラさんと別れたその直ぐ後、こっそりとシルフィさんから思いもよらないお誘いがあった。


「あの、シーヴさん……。その――今度いっしょに、温泉に――行きませんか……?」


き、きたーーーーーーーーーーーー!!!


「も、ももちもちもももちろんですぅぅうううっ!!!」


 そう、それはなんとシルフィさんから直々に温泉旅行のお誘い。

6月5日~7日に掛けて――2泊3日のガチなやつ。

これはもう愛の告白と思って間違いないだろう。


 夢なのか? ――いや夢じゃない!!!

だってツネッたほっぺたがこんなに痛いんだもんさぁ!!!

くぅ!! ついに……。ついに俺にも春が来たっ!!

しかもあんな可愛い美少女にっ!!

もう「パーティングギフト」で爆死したっていい!!

俺の人生に悔いはない!!


 そしてついに今日は待ちに待った6月5日。

シルフィさんがダバに乗って俺の家まで迎えに来てくれるらしい。

――ぐっふふぅううう~!!!




***




 ー シーヴさん、私……寒いです……。抱いてくれますか……? ー


白い息で小さく細い指を温めながら、彼女は頬を赤らめて恥ずかしそうにそう呟く。


 ー んもちろんさ……。んさぁ、こっちにおいで、シルフィ……。 ー


そっと優しく俺が子猫ちゃんの小さなおててを取ると、彼女は潤んだ瞳をあたふたと逸らし、僅かに声を震わせながらこう呟くのだった。


 ー や……優しくしてくださいね……。 ー




***




 ぐっふふふふふぅぅううう~~~~!! ロマンしかねぇ~~~~!!

そうして俺は、ダバの上でシルフィさんとイチャコラする妄想を膨らませながら、シルフィさんの到着を玄関で今か今かと首も鼻の下も存分に伸ばしながら待っていた所である。


 あぁ、あんなことやこんなこと、果ては禁断のチョメチョメ的なことにぃ~~~~!!

あぁこりゃこりゃどうもほんとに参ったなもーーーー!!!

こりゃどえらい春が来てまんなっ!! ってか!!――と、そう思っていた。


「シーヴさーん、ファラさーん、迎えに来ましたよー!」


さっきまでは――


「はーいっ! ほら、シルちゃん来たよ! いこ! しー君っ!」


「……。」


 ま、ですよねー。

うん。でもいいんだ。たとえ一瞬でも、夢、見れたからさ。


 嬉しそうにパンパンのリュックを背負った冬服のファラと共に外に出ると、恐ろしく冷たい空気にさっそく鼻の奥に刺すような痛みがやってきた。

僅かに雪が積もった地面は、一歩歩みを進めるたびに「ズモッ! ズモッ!」と小気味の良い冬の風物詩を存分にその足元で奏でる。


 ちなみにパトラッシュはこの時期どこかに冬眠しているらしく、ここ数日姿を見かけなかった。

なんだかいるのが当たり前だと思っていた愛しのペットに会えないのは凄く寂しいが、アスの話では、暖かくなったらすぐに戻ってくる――というので今はただ無事を祈るのみである。


 俺達がダバの足元まで来ると、上からぞろぞろと降りてくる降りてくる……。

いち、に、さん、よん――あ、メノさんまで……。

あれ、けどカインさんは、いないのか……。


「お二人ともおはようございます。おまたせしました~、今日も寒いですねぇ~。」


 と、シルフィさん。

肩には相変わらずクロちゃんがお行儀よく止まっている。

ブラウンのトレンチコートに白のマフラー、ベージュのワンピースが落ち着いた大人な印象。

両手を口元に当てて白い吐息で温めている子供っぽい姿が見た目に反して可愛いので高得点。あざす。


「そうですね、けれどケズグンマー辺りはここより更に寒いって聞きましたが……。」


 と、イスタさん。

黒のロングニットに白のダッフルコートが、なんだか可愛さと大人っぽさの両方を見事に確立していらっしゃる。

透き通った美声に幼くも抱擁感のある笑顔が、くぅ~堪りませんねぇ……。120点。ところで――


「メノさん、その恰好――寒くないんすか……?」

 

「ん?」


 メノさんはいつも通りというかなんというか。

いつものように一応小汚いズボンは履いてるが、上半身はいつものように剝き出しなんだ。

更にこの真冬には似つかわしくないほど、逞しい筋肉がいつになく艶やかに煌めていた。

はて――秋冬は魚に脂が乗って美味くなるって言うが、その類だろうか。


「あぁ、オレの居た世界は年中極寒だったからな。そもそもリザード族は寒さにかなりの耐性がある。素っ裸でも何も問題はない。」


「そうですか。」


 いや、アンタの中ではな。

それを見てるこっちが寒いんですけどねぇ。

メノさんは腕を組んで得意気にうんうんと頷いている。


「そんなことよりシーヴちゃん可愛い格好してるじゃない? 今のアナタ、きっとモテるわよ~?」


「ヒッ……。」


 ボーラさん……。

先日と同様、首元にベージュのファーをどっしりこさえたロシア軍の着ていそうな真っ黒なロングコート。

殺意の波動を垂れ流し、ジュルリと舌なめずりをすると俺の目を見てウィンクをした。

おぅ……、急に寒気が……。

そういえば俺はヒロシって最低野郎と似てるんだったっけか……。

いつ襲われてもおかしくねぇかもしれない……。

ところでところで――


「ウタさん……。その恰好はなんすか……?」


「あ?」


 ウタさんの恰好。

これでもかという程どっさりとモッフモフの毛を全身にこさえた、明らかにサイズオーバーなグレーの毛皮のロングコート。

フードをしっかり奥まで被ったウタさんの顔は、ぶかぶかのコートの襟で鼻まで覆われて、口はおろか不機嫌そうな目元以外はフードの毛にすっぽりと埋もれてしまっていた。

後姿だけ見れば、それは完全に雪山で発見されたUMAであろう。

というか、なんかすごく――モフモフ可愛い。

おっきいポメラニアンみたいな――くぅ~、さ、触りてぇ……。


「うるせぇ、私はさみぃのが苦手なんだ。」


 なら何故に来たのか。

ちなみに俺はというと、グレーのチェスターコートに白のニットとマフラー、黒のズボンと――まぁ普通に地味だ。

うん、けどこれで良いのだ。 

普通が一番。


「それじゃぁ早速行きましょう!!」


 かくして6月5日の朝――時刻は8時、最高の晴れ空の下、俺達7人と一羽はダバの背中に乗ってケズグンマーの温泉地帯へと出発した。



ゴニョゴニョ大帝国の襲撃から一週間、大エドの人々はまだ心に深い傷を負ったままみたい……。


ゴニョゴニョ大帝国総帥、フクヤーママ・サハール…本当にヒドイやつだわ!!


ジョー・ノグチを救えなかったヨシネンは再び心を引き裂かれ、火消しの仕事にも支障が出てしまう。


そんな、ヨシネン…アナタがしっかりしてくれなきゃ、もうこの街はおしまいなのよ!!


けれど心の炎が消えかけてお布団の中でポテチを食べるクズのヨシネンも待ったなしに、次の大火災が大エド城を襲う。


ひび割れた心とポテチの袋を抱いたまま駆けだすヨシネン、なんとか大エド城には間に合ったようねっ。


けれど大変!! ショーグンがまだお城の中にいるみたい!!


大急ぎで大エド城内へ向かうヨシネン、どうか、どうかショーグンを助けて!!


急げばまだ間に合う!! ヨシネン!! 頑張って!!

 あなたならきっとショーグンを助けられる!!


次回!! ヒケコイ4999話!!


「ショーグン!! 死すっ!!」


お楽しみに!!

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