Under Your Skin_3
「しー君お腹空いたぁ~。」
「あーはいはい、後でな。ギルドが先だギルドが。」
パトラッシュを連れて家に戻った次の日、俺はファラと共に再びケズバロンに来ていた。
チトさんのお孫さん、クロエちゃん――いや、24になるというのだから「クロエさん」か。
そのクロエさんの捜索を手伝おうと思った事もあるが、なにより有耶無耶になっていたギルドでの情報収集のためだ。
なにしろこの旅を始めてからもう3カ月、俺の記憶の事はともかくとしても、未だに魔女の足取りすらも掴めていない。
日々を怠惰に過ごし、一体何のためにこの旅を始めたのか、いよいよ解らなくなっていたからだ。
そして今はお腹を空かせたウシ娘を連れて、ギルドへ向かって歩いていたところ。
「ン……?」
「あ? どした……?」
――なんだ?
ふとファラが「なにか」を見て立ち止まった。
ジーっと顔を近づけて「それ」を凝視している。
どこにでもある何の変哲もないレンガ造りの建物、その壁に貼られた何の変哲もない紙――
「ねぇ、これ――しー君じゃない……?」
「え?」
ファラが俺とその紙を交互に見ながら、不思議そうに呟く。
「しめー……。シメイ、テハイーーってかいてあるよ?」
「は?」
何言ってんだコイツ。
また馬鹿な事を言い始めたと思った俺はファラの横に並んで壁に貼られたその紙を見た。
なになに……。シメイテハイ――
ほふーん。なっほね~。
指名手配――俺によく似た似顔絵と共に、確かにそう書いてある……。
懸賞金、1000万レラって……。
生死問わずって――
「ねぇ、このペニーワイズの再来って――」
「おいーーーーー!! なんじゃこりゃーーーーーー!!」
ふざけんなふざけんなふざけんなふざけろボケクソボケこのボケーーーー!!
俺は思わずその指名手配書を壁からズタズタに破り捨てて踏みつけたが――そう、これは指名手配書だ。
ペニーワイズの再来と書かれたその指名手配書には、俺の似顔絵と共に1000万レラもの懸賞金が掛けられていた。
「おい……。アイツ――」
「ヒッ!!!」
「ペニーワイズだぁぁああああああああああっ!!」
ー え? ー
通りがかった通行人の一人が俺の顔を指さしてそう叫ぶと、周りにいたヒトビトが一斉に立ち止まってギョッとした顔で俺の顔を見た。
よく見れば街の至る所にこの指名手配の張り紙がされているよーん。
「や、やば――」
「しー君!!!」
必死な表情のファラと目が合う。
「ヒッヒーーーーーーーンッッッ!!!」
「逃げてーーーーーーーーー!!!」
見知らぬ馬面の女性の悲鳴(?)とファラの悲痛な叫びを皮切りに――
「ブチ殺せーーーーー!!」
「うおぉぉおおおおおお!! 1000まーーーーーん!!」
容赦なく襲い来る――
「囲め囲めーーーー!」
目の血走った――
「頭だっ! まず頭を殴って気絶させろっ!! 殺すのはそれからだっ!!」
亡者の群れーーー!!
「ふざっけんなぁぁあああああああああああ!!!」
「あ! 逃げたぞ! なんてスピードだ! まるで光速のランニングバックだぞ!!」
逃げども――
「絶対に逃がすなーーーーー!! 誰か対サイクロプス用ヘヴィーボウガン持ってこい!!」
逃げども逃げども――
「それなら俺に任せろ!」
逃げども逃げども逃げども――
「頭を狙うんだ! ヘッドショットで確実に撃ち殺せーーーーー!!」
シュパァッ!!!!
「ンギャーーーーーーー!」
シュパッシュパァッ!!!!
俺は延々と追われ続けた――
――この街、嫌い。
くっだらねぇ。




