Moment_2
「ボーラさん、おはようございます。」
「あらアナタたち、突然どうしたの?」
次の日、ダバに乗って早朝に出発した俺達はお昼前にはボーラさんの家の前に到着した。
さっそく玄関をノックすると、フレンさんではなくボーラさんが不思議そうな表情で現れたのだが、どうやらフレンさんが俺達に手紙を出したことを知らなかったらしい。
「すまない、僕が呼んだんだ。けど驚いたな、もう来たのかい。」
そういって奥から現れたのは随分と爽やかになったフレンさんだった。
笑顔で、けれど少し呆れたような顔をしている。
髪を大分サッパリと切って、髭も剃ったようで、一瞬誰かと思ってしまったが、その優しい笑顔には確かに面影がある。そして恐らく、これが本来の姿なのだろう。
「おはよう、シーヴ君。」
「おはようございます、フレンさん。」
「ねぇ……。このヒトが、フレンさん……?」
「あ?」
俺の耳元でコショコショと囁くファラは、顔を見てもまだ思い出せないらしい。
まぁ、髪も髭もすっきりサッパリしたからな、無理もないか――
「ファラちゃんも、久しぶり。」
「うぁ……ど、どうもっ。」
は? なに赤くなってんだコイツ。
けれど、ニコッと笑ったフレンさんは確かに、まるで別人のようであった。
「立ち話もなんだから上がってくれ、何か食べながら話しをしよう。」
「そうね、売れ残りの焼きそばなら沢山あるわよ?」
明るく笑いながら、2人は玄関を開けたまま家の中に入って行った。
今までこの家はこんなに賑やかだったろうか――そう思う程、今は活気にあふれている。
なんだか何もかも、遠い昔の様に思えてくるな。
「ねぇねぇっ! あのヒト、すっごいダンディじゃない?
大人の色気って言うのかなぁ、アタシなんかドキドキしちゃった~!
――でも、なんでアタシの事知ってるんだろ?」
本当に覚えてないんだなコイツ。
なるほど、さっき赤くなってたのはそーゆーことか……。
まぁ確かにフレンさん身長も高いし、家具工房やってたからなのか身体も引き締まってるしな。
オマケにイケメンでダンディとくれば、女子ウケは抜群だろう。
て、なんの話してんだよ、俺。
「アナタたちー! 早くいらっしゃい! 一緒に焼きそば食べましょー!」
「はーい! やったねしー君! 来た甲斐あったねぇ~!」
「まったくお前はよぉ~! たくしょうがねぇなぁ~!」
飛び跳ねて喜ぶファラに呆れつつも、久しぶりの焼きそばに舞い上がりウキウキと家の玄関を潜ると、気のせいだろうか――中から猫の鳴き声が聞こえた気がした。




