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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 終章 ノー スリープ フォー ルーシィ
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Daddy_2

「おや! ほんとに来たのかい! 懐かしいねぇ!」


「どうも……。」


 な、懐かしいな……。

このしゃかりきなテンション――小さい頃は特に苦手だったのを思い出した。

俺はルギィさんと別れたのち、妹のラナンさんの経営しているという「ヴァレーハート」に訪れた。

ラナンさんは何年たっても変わらない、いつまでも雰囲気が若く、誰なのか一目でわかる。


「ラナンさん、お久しぶりです。」

 

「まぁこんな大きくなって! おや、ちょっと老けたかい?」


思った事をなんでも言う癖、変わってない――


「はぁ……。そうかもしれません。」


「ほっほっほっ。まぁ元気そうでよかったさね。ほら、これが鍵ね。部屋は2階だよ。

 あそーだ、その前になんか飲むかい? ちょっと話そうじゃないか。」


 相変わらず目まぐるしい勢いで喋るヒトだ……。

俺はエントランスの客席に座らされ、活き活きと喋るラナンさんとしばし歓談した。

ラナンさんは数日前ここに来たシーヴ君とファラちゃんの話を、まるで孫の事でも語るように、嬉しそうに話していた。


「それであの坊主、ゴリラの鼻くそ入りのアイスティーを飲んだのさ!

 まったくバカだよねぇ~~~!!」

  

「な、なるほど……。」


 シーヴ君、可哀想に……。

聞けばゴリラの鼻くその入ったアイスティーを飲んだり、殺人の冤罪をかけられたり、オバケ騒動に見舞われたり「絶倫パコパコ媚薬太郎」で熱い夜を過ごしたり――俺があの部屋で眠っていた数日の間、どうやら彼は大変な目にばかり遭っていたようだ。


「ほっほっほっ。まぁけど、あの子らのお陰かね。

 今アンタが、生きてこうしてあたしと喋ってるのは。」


「……。」


 ラナンさんは大声で笑うと、穏やかな表情で俺の顔をジッと見つめていた。

それがやたらに極まりが悪く、思わず目を逸らしてしまう。

居心地の悪さというか、むず痒さというか、とても居たたまれない気分になった。


「フレン、元気そうで本当によかったよ。」


「どうも……。」


「正直、本人の前では言うまいと思ってたんだけどね、アンタは小さい頃から気が強かったから――」


「え……。」


「きっと早くに亡くなった両親に、心配させまいと頑張ってたんだろうけどね。

 ――張りつめて、張りつめて、張りつめて…あの頃から本当に大変だったねぇ。」


……。


「一人で生きていく、一人で何でも超えていく。それは一人だったから出来たんだよ。

 アンタはそれを家族に持ち込んでしまった。」 

 

なんで、そんな話を……。


「独りで全部しょい込んでね。」


今更…そんな話なんか……。


「家族ってのは、その親の代までの繋がりさね。

 みんなで助け合っていかなきゃ、夫婦だけじゃいつか苦しい時が来る。

 もっとあたしらを頼ってよかったんだよ。」


なら――どうして――


「どうして!!! …………。…助けて、くれなかったんですか……。

 俺は……。俺は……。そんな、誰かを頼る余裕すらも、なくて……。」


喉の奥が……苦しい……。


「考える――余裕すら、なくて……。アナタたちを――突き放して……。」


締め付けられるようだ……。


「知ってたなら、どうして……。助けて、くれなかったんですか……。そんな話、今更されたって、もう何も――」

 

何も――帰って、こないのに……。


「ずっと……。力になりたかった。」




そんな、言葉――




「え……。」


「――けどね、助けられないのさ。ずっと、アンタがそれを望んでいなかったじゃないか。

 だからいま、今更になってやっと……。やっとこんな大事な話ができるんじゃないか。」


 ラナンさんは、泣いていた。

静かに。

そうか……。

ずっと……。ずっと……。


 小さい頃から両親の居なかった俺は、よく近所に住んでいたこのヒトの世話になっていた。

けどあの頃から俺は、周りの大人たちに子供扱いされるのが嫌で、だれにも、心配かけたくなくて……。

早く、早く立派に――大人になりたかった。

俺は――ずっと、子供のまま、間違え続けていた……のだろうか……。

このヒトは――ずっと……。

見ていたんだ。俺のことを――


「本当に、辛かったね……。ほんとうに……。」


待っていて、くれてたんだ……。


「あの……。僕は……。」


俺が、ここに帰ってくるのを――


「なにも、なにも――言わなくていいさね。全部、解ってるからね。」


「……。はい……。」


ただいま、ラナンさん――




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