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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 終章 ノー スリープ フォー ルーシィ
143/402

Everglow_1


手の中のオルゴール――その小さなゼンマイを巻くと、飽きるほど聴いたあの優しい音色が流れる


ベッドの上に横たわり、目を閉じる


願わくば、このまま永久に眠りたい


そして、あの夢に――


僕はその愛おしい夢の中で家族といた


最愛の妻、そして最愛の娘と


どこまでも澄んだ青い空、ポカポカと温かく優しい太陽、透き通った美しい海、穏やかで安らかな波の音、海鳥の声――


ここには僕ら家族以外、誰もいない


僕たちだけの、永遠の楽園


とても穏やかで温かい砂浜、そこで心地よい潮風に撫でられながら、優しくて、穏やかで、そのまま柔らかい砂に沈んで消えてしまいそうだった


夢見心地、眠りの縁、そこで何も知らない無垢な娘の安らかな寝顔を見ながら、その隣に寝転がっていた


遠くで妻が、波と砂の隙間を軽やかに歩くのが見える


僕らに気が付くと、嬉しそうに手を振って、僕を呼んでいた


そんなところで寝ていないで、アナタもこっちにきて――


そう言っているようだった


人生最高の温もりに包まれて、僕はただ光の中に溶けるように眠る


僕がずぅーっと、欲しかった、永遠の景色がそこにあった


こんな暖かい日々がいつまでも続くんだって、夢の中で思った


あぁ、今思い出しても本当にきもちがいい



あぁ…………




あぁ……




……




けれど気が付くと、低く暗い天井、息苦しい狭い部屋、全身に汗をかいていて呼吸が苦しい――身体が、鉛の様に重たいんだ


目が覚めて、泣いている自分に気づいて、悔しくて、惨めで、また泣いた


「俺は――俺は――」


何度だってあの悪夢に帰りたい


こんな糞みたいな暗い部屋で、涙を流してる自分が嫌だ


永遠に続いていく、こんな糞以下の不毛な現実が嫌だ


目が覚めるたび、気が狂いそうだ


お願いだ、一生のお願いだ


俺の全てを捧げられる


あの浜辺へ――どうしたら帰れるのかな


「おしえてくれ――」


これがもし夢なら、今すぐ覚ましてくれ


あの日々に、あの砂浜に、あの温もりに、楽園に、俺を帰してくれ


どうして俺だけ――俺だけが、こんな目に遭うんだろうか


あの時、もしみんなと一緒に死ねていたら、俺はもう――何も背負わずに済んだのに


ただ……。ただ。ただ、ただそれが、ただそれが悔しい――


俺が何をした……。なんで俺だけが、こんな苦しい想いをして生きていなきゃいけない


もう俺に構うな……


一人残らず……


何もかも……消えてしまえばいい――




………




ゆっくりと落ちていくオルゴールの音色と共に、僕は――再びこの白い部屋に戻ってくる


もう――二度と戻れないのなら


もう終わりでいいんじゃないかな




「――シーヴちゃん、おかえりなさい。」




…………




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