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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 終章 ノー スリープ フォー ルーシィ
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Everything I Never Was_4

「実は今朝、亡くなったフレンの奥さんのお父さんの弟さんから、こんな手紙が届いたの。」


「え? なんです?」


「亡くなったフレンの奥さんのお父さんの弟さんよ。ほらコレ。」


「あぁ……。」


 いやいや、わざわざ言い直してもらって悪いけどややこしいな。

沸き上がる笑い声の中お茶菓子を買って戻り、お昼ご飯を御馳走になった後、俺達はボーラさんから先ほどの話の続きを聞いていた。

頭の中で相関図を整理しつつ、ボーラさんから手紙を受け取ると、ファラが興味ありげに手元を覗きこんで来た。


「しー君、その亡くなったフレンさんの奥さんのお父さんの弟さんからの手紙――なんて書いてあるの?」


「もうやめろやめろっ! シリアス展開台無しじゃねーか! あぁもう!!」


「ん???」


 ん??? じゃねぇこのアホ。

その手紙の差出人である叔父さんは「ルギィ・ロコノック」というらしい。

手紙の内容はこうだ。




***




 ~ 親愛なるフレンへ。 ~




 お元気ですか。

 いかがお過ごしでしょうか?

 先日、ついに私の妻が他界しました。

 葬儀は慎ましく静かに執り行いました。

 その御報告です。


 まぁそれはどうでもいいのですが。

 実は今、一人寂しくヒケコイなる小説を熟読する毎日を過ごしております。

 意外と面白いです。

 特に面白かったのはヨシネンが自分の偽物に放火の罪をかぶせられてしまう話で、その放火魔が実は、死んだはずのヨシネンのお父さんだった事です。

 そんなこんなでヒケコイももうすぐクライマックスです。

 そこで今度、ウチに遊びにきませんか?

 一度、兄のお墓参りに一緒に行けたらと思っています。




 ~ ルギィより。 ~




***




 ておいっ! ちゃっかりネタバレすんなよ!!

それはどうでもいいのですがって――なんだこの手紙、半分ヒケコイのファンレターじゃねーか!

てかまじかよ――あの狡猾な放火魔がまさか死んだはずのヨシネンのお父さんだったなんて……。

これはいよいよ盛り上がって来たな、ヒケコイ!!


「その亡くなったフレンの奥さんのお父さんの弟さんはね、もう何年も、フレンの亡くなった奥さんのお父さんのお墓参りに、フレンを誘ってるの。フレンは亡くなった奥さんのお父さんの――」


「あの、ボーラさんすみません。ルギィさんのお兄さんのお名前は?」


「あぁ、そうね。彼はシゴール・ロコノック。それでその亡くなったフレンの――」


「シゴールさんのお墓参りに、フレンさんは一度も行っていないんですね?」


「ん? えぇ……。そうなの。」


「そしてルギィさんは、シゴールさんのお墓参りに、フレンさんを何度も誘っていると。

 そして今回も、フレンさんはこの誘いを断るつもりでいる――と。そうですね?」


「そう……そうよ。あとはもう、言わなくても解るわね……。」


「はい。」


 このヒトさっきからふざけてるのか、会話がめちゃくちゃややこしいんだよな。

これ以上話をややこしくしないためにも、俺が会話をリードしなくてはいけない。


 ざっくりまとめると――要するにルギィさんは、フレンさんの事を心配しているのだ。

フレンさんが引き籠り始めたのがいつごろからなのかは不明だが、ここ数年という事は5年以内だろうか。

お父さんともいうべきシゴールさんの死後、お墓参りにも行かずに引き籠ってしまったフレンさん。

ルギィさんはそれを見かねて、遊びにおいでと、そしてお墓参りに一緒に行こうと、誘っているのだ。


 そしてフレンさんは今回も、それを断るつもりでいる。

今回はこの手紙を皮切りにボーラさんとの口論に発展し、ついに殴り飛ばされて賭博区へ逃げた。

とまぁ、こんなところだろうな。


「あの、ボーラさん。」


「ん?」


「ルギィさんに、会えませんか?」


 一瞬、沈黙が訪れる。

けれど、俺のやるべきことはこれだと思った。

勿論ヒケコイの話も少ししたいし、何よりフレンさんが引き籠ったままでは、いずれボーラさんも一緒に潰れてしまう。

フレンさんの叔父にあたるルギィさんなら、立ち直るきっかけになる「なにか」を持っているかもしれない。

例え無駄でも俺は、このヒト達の為に出来る限りの事をしたいのだ。

無駄でもいい、でもきっと無意味じゃないはずだから――


「構わないけど……。どうして?」


「俺、ボーラさんには困ってた時に助けてもらった恩がありますし、それにフレンさんの想いも、俺が無視できるものじゃなかった。

 ただそれだけだけど、それでも出来る限りの事がしたいです。」 

 

「そう……。それならワタシも、シーヴちゃんを信じてみようかしらね。

 あとでラピッド便で手紙を出しておくわ。2~3日中に返事があると思うから、その時またいらっしゃい。」


「はい。ありがとうございます。それじゃあ3日後にまた来ます。」


ボーラさんはニコッと笑うとよっこいしょーいちのすけっ! と席を立った。


「さてと、そろそろワタシも仕事に行く準備をしなくちゃね。

 ――そういえばフレン、いつもより帰りが遅いわねぇ? なにかあったのかしら?」


「賭博区、でしたっけ。よければ俺、帰るついでに様子見てきましょうか?」


「あらそう? 悪いわね……。でももし見かけても刺激はしないでね。」


「わかっています。ファラ、行こうか。」


「ん???」


「あ、おまえ……。」


 みんな、言わなくても解るよね?

そう。アタシはデブウシ。お茶菓子全部食べちゃったぁ~っ。てへぺろぉ~っ。

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