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17話。飛将軍の葛藤

まだ長安フェイズ。

色々危険なので文章修正の可能性大!

長安。


この度、洛陽から遷都して正式に都となった都市()ではあるが、元々高祖劉邦によって漢の都とされた都市でもある。


だから長安を知らない者は、ここを歴史ある華やかな都と思っているものも居るかもしれない。だけれども、実際の長安は項羽や羌族らに対抗する為に作られた城塞都市であるので、地理的に漢の中心である洛陽と比べてしまえば、とても簡素で、とても無骨な都市である。


もしも羅馬や交州の人間が突然(ほう)にでもさらわれ、長安の近くの川べりにでも落とされ、ふと長安を見つけたなら、大きい都市であることを驚くかも知れないが、そんなに驚嘆はしないだろう。


長安という都市に憧れを持っているからこそ、この都市を素晴らしいと思うのであって、そのような俗な宣伝を一切知らず、素朴な、純粋な、うつろな心に対し、どれだけ訴えることが出来るだろうか。


狭い。漢という国の偉大さの割に、狭い。漢という、大陸を統べる国の都として誰もが納得させる為には、この倍近い規模が必要なのではないだろうかと思う。


ただ、南陽方面の峠から見る長安は良かった。開放感と言うかなんというか、一目見たとき『あそこには()()がない』と確信し、そのことが変にくすぐったく感じつい笑い声を上げてしまった。人は、頼もしさを感じるとつい笑ってしまうものらしい。


全身の力みが弛むとでも言えば良いのだろうか。戦場で自分が援軍に馳せ参じたときに笑みを浮かべる者たちの気持ちが少しわかった気がした。


だから諸君。諸君が、もし援軍に駆けつけた際、戦場に着いた際に、友軍の兵士が笑い出したら、それは慶祝である。必ず、彼らの非礼をとがめてはならぬ。彼らは、援軍に逢って、援軍のたのもしさを、全身に浴びたが故に笑っているのだ。


それはそれとして。俺は、去年の夏頃に生まれて初めて司隷の西端、三輔の地に入ったのだが、これは俺の三十幾年の生涯に於いても初めてのことであった。


元々并州の片田舎に生まれ、并州で育つこと30余年。主簿と言う役柄から并州の各地を見て回ったが、結局并州以外の土地に付いて何かを知ることなどなかったのである。


洛陽は都として栄えていた街で、ちょっと気取ったところがある街だった。よく言えば夜になっても明かりが消えない不夜城のような印象があり、悪く言えば昼でも泥水のように澱んだ暗さが見え隠れする街である。


そんな洛陽を後にし、戦場で戦って居たときは良かった。


洛陽の文官の中には「なぜ戦場に行くんだ?」と言う目を向けて来た者たちも居たが、もし口に出して問われていたならば、俺は「苦しいからだ」と答えただろう。


正直に言おう。俺は死が間近にある戦場より、死から程遠いはずの、洛陽の大将軍府の中に用意された一室が怖かった。


だからこそ、頴川の陣に洛陽から撤退命令が届いた時、ついつい「……洛陽か?」と尋ねてしまったのだが、牛輔や張遼も似たような気持ちを持っていたはずなので特に問題はないだろう。


そんな洛陽の一室に対する恐怖はともかくとして、撤退先が洛陽ではなく長安であることを確認した俺たちは、即座に撤退を開始し、連合の連中の追撃を受けることなく無事長安にたどり着く事ができた。


そして遠目に長安を望んだとき『俺たちは自由だ!』と叫んだ。このときはそう思った。


しかし、実際はそうはいかなかった。俺たちと同郷である王允とかいう奴が、董卓に頼み込んだ結果、俺たちは長安に常駐することになったからだ。


中から見る長安はくるしい。


元々馬と共に在る自分たちが、一つの都市に常駐すること自体に無理があるのだろう。董卓と共に長安を離れている涼州勢は好きに大地を駆けていると言うのに、俺たちは勝手に長安から出ることもできず。たまに外に出ることが出来ても、せいぜいが三輔地域の巡回のみ。


洛陽ほどではないが、名家だのなんだのと言った文弱どもが幅を効かせ、澱んだ空気が蔓延する長安という都市で、俺たちは今日も新帝陛下に叛意を抱いている名家の討伐を行っていた。


これに関して言えば、別に好きで殺っているわけではない。殺れと言われているから殺っているだけだ。そして『どうせ殺るなら楽しく殺るべきだ』と思うからこそ、笑いながら建物を壊すし、殺すべき相手も殺しているだけ。


王允どもはそんな俺たちを使って名家の人間を脅してるらしい。


なんでも「自分が呂布たちの横暴を止めてみせる」とか息巻いているとか。


寝ぼけるな。元々貴様が殺れと言ってることだろうが。俺たちを悪者にして自分が名声を得るという手法であり、武力を持たない名家連中には効果的な策なのだろうが、不愉快だ。


董卓のところから来ている李粛も、俺たちの武力を使いながら俺たちの評判を落とそうと躍起になっている王允の二枚舌には辟易しているようだ。


しかし、仕事は仕事だ。これを俺たちが拒否して、勝手に待機したらどうなることか。


まかり間違って、いつの間にやら無職扱いされた上に、どこぞの外道から『暇そうだな?働くか?』などと声をかけられ、書類が待つ部屋に連行されては堪ったものではない。


だから今日も俺たちは王允に指定された『皇帝陛下に逆らう名家』を襲撃し。彼らに悲鳴を上げさせる。


あぁ、やはり長安には名家の悲鳴がよく似合う……俺が彼女に出会ったのはそんなことを考えながら、日々の職務に当たっていた時のことだった。



~~~~



「お帰りなさいませ呂布様」


「うむ」


俺が今日の仕事を終え長安に用意された自宅に帰ると、そこには本来董卓の傍に侍るべき女性が待っていた。彼女の姓は任、名は紅昌。字は貂蝉と言い、齢は一六で、王允の養女なのだとか。


その外見は、決して見目麗しいと言えるほど美しいわけではないが、とても素直で健康的な、なんというか傍にいて癒される女子であった。


この董卓の侍女である紅昌が俺の自宅に居るのは、(ひとえ)に王允からの計らいであった。


元々俺は妻帯者であり妻も娘もいたし、生まれや育ちが良いわけでは無かったので、侍女などを迎え入れる気はなかった。しかしあるとき、王允から唐突に『今の貴殿は大将軍の養子なのだから、それなりに体裁を整える必要がある』と言われ、渋々人を雇うこととなったのだ。


しかし、いざ人を雇い入れるとなると、その人選が大変だ。なにせ俺は董卓の養子であるし、今では董卓麾下の并州勢を取りまとめると共に、名家などから逆恨みを受けている立場でもある。


つまるところ、俺が人を雇い入れる場合は、情報の漏洩だけでなく、己や妻子の暗殺も警戒する必要があるのだ。しかし、長安に伝手など無い俺には身の回りを任せるに足る人材に宛など無かった。そこで王允から紹介されたのが彼女であった。


元々紅昌は王允が董卓との繋ぎを付ける為に用意された侍女なので、本来の職場は俺の家ではなく大将軍府になる。しかし、その職場である大将軍府には普段彼女が世話をすべき対象である董卓がおらず、王允としてもどうして良いか困っていたらしい。


そこで王允が目をつけたのが、董卓の養子である俺だった。確かに董卓本人がいない以上、正式な養子である俺の世話をするのは道義的には間違っていないように思えた。


……今では、いきなり俺に侍女の必要性を説いてきた王允の狙いが、彼女を俺に預けようとしていたのだということは流石に理解出来ている。


王允としては、董卓に自分の養女を差し出したにも関わらず、無視に近い扱いをうけたことで、自身が董卓に軽んじられたと思っているのかもしれない。だが無駄に気位が高いせいか、その事実を認めたくない王允は、自分が納得出来る彼女の使い道を探し、そして養子の俺に行き着いたのだろう。


彼女は彼女で自分の扱いの軽さに思うところもあるだろうし、俺とて男だ。若い女子が嫌いなわけでもない。


それに今年十歳になる娘のこともある。俺は歳の近い彼女には、娘の話相手になってやって欲しいという思いもあったし、それ以外にも、娘に対してそれなりの家の娘として、どこに出しても恥ずかしく無いような教養を授けて欲しいと思っていたのだ。


だから、董卓が長安にいない時の紅昌は俺の自宅で娘や妻の世話をしてくれている。これにより王允は面目を潰すことなく俺や董卓との繋ぎを取ることが出来ているし、彼女も女としての自尊心を傷付けずに済む上に、俺も妻や娘に寂しい思いをさせずに済む。


誰もが得をしているから良いことだ。俺はそう思っていた……この時までは。


「……実は呂布様にご報告すべきことがあります」


「どうした?」


普段は明るく振舞う紅昌が、今日は珍しく暗い表情をして話しかけてくる。


「暫くはこちらに来られなくなりそうなのです」


「……何故?」


泣きそうな顔をする紅昌をみれば、それが彼女の意思とは関係ないことは明白である。しかし、自分の妾であり、娘の教育を任せている彼女に何かしらの無理を強いることが出来る者などそうそう居ない。


そんなことが出来るのは彼女の養父である王允か、もしくは……


「養父より、しばらくは董卓様の下へ行けと」


「……そうか」


元々紅昌は董卓の為に用意された侍女。王允としても一度董卓に差し出した養女を勝手に引き上げたりすれば董卓との間に要らぬ不和を招くと判断していることもあって、今も大将軍府に籍を置いている。


普段は董卓が長安に居ないからこそ、こうして俺の下に来れるが、今は董卓が新年の挨拶を受けるために長安に滞在している。ならば本来の職務に当たらなければならない。そういうことなのだろう。


彼女は自分の職務に戻るだけ。そして俺としても養父である董卓の顔を潰す気はない。ならば紅昌は侍女として董卓の傍に侍るべきだ。と言いたいのだろう。その理屈はわかる。


しかし、しかしだ。


侍女がする『世話』の中には、当然夜の世話も含まれる。そのため、もし董卓が紅昌に興味がなくとも、手を出さねば王允への不義理となるのだ。


つまり紅昌はこれから数日の間、董卓に……


そう思うと、俺は思わず紅昌を抱きしめていた。


「呂布様……」


「あぁ、わかっている。皆まで言うな」


泣きながら俺の胸に縋り付く紅昌を見れば、彼女が何を言いたいのかなど聞かずともわかる。


大丈夫だ。王允らが流している悪評も有って、世間では董卓のことを血も涙も心もない暴君のように語られているが、実際の董卓は本当に血も涙も心もない弘農の外道とは違う。


彼には俺を初めとした家臣の声を聞く度量があるし、娘や孫娘に甘いところもある、れっきとした人間だ。だから、話せばわかってくれるはず。


この日、俺は紅昌が董卓の世話を始める前に董卓と話をしようと決意したのだ。




この時呂布は、己の腕に抱かれて涙を流す娘の影に、自分たちを嵌めようとしている老人がいることを理解出来ていなかった。彼がそれに気付くのは、もう少し後になってからのことである。

呂布はなぁ。普通に娘と奥さんいるのになぁ。いい年こいて何をしてるんだか。


作者程度が巨匠の作品をネタにしようとして失敗してる感が半端ない。

文学青年、呂布はどこに進むのかってお話。


――――


独断と偏見に塗れた人物紹介


貂蝉ちょうせん:三國志では三本の指に入るくらいの有名な女性ではあるが、王異や孫尚香、何太后と違って架空の人物であり、基本は演義にだけ登場する。元ネタは董卓の侍女であり、それが王允と関係あるかどうかは不明。絶世の美女だったり、醜女だったりと、出てくる話によって外見がまるで違う人。細かくはググろう!(説明責任の放棄)


――――


燃料ポイント枯渇が囁かれる昨今。皆様いかがお過ごしでしょうか?

令和に活躍した思想家ペ=コパは言ってます。

燃料ポイントは水のようなもの。独占してはいけない。


そんなわけでよろしくオナシャス!


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