第八十九話 ドワーフの里
サトル達ははドワーフを連れて里のある門までやってきていた。
そして、その前には総理が待っておりドワーフが近づくと頭を下げた。
「この度の不手際は本当に申し訳ない。」
「謝罪はもう十分受け取っている。それよりも里長への説明を頼んでいいか?俺は攫われたが事情をあまり知らない。」
「分かりました。それでは同行しても?」
「ああ頼む。こちらの人達とは知り合いか?」
「ええ、古い知り合いです。」
総理は龍斗の顔を見てそう答える。
「そうか、それなら今から一緒に来てもらったほうが早いが大丈夫か。俺はこの人達の武器を里の上級スミス達に見てもらおうと全員で向かうところだ。」
それを聞いて総理は隣のものに話しかけ、これからの予定をキャンセルさせた。
彼らへの対応は国内でも上位の案件となる。
そのため、彼らへに素早い対応で誠意を見せようと考えた。
「これからご同行します。」
そう言って総理を含めたメンバーで門をくぐって行った。
そして門の中に入ったメンバーは周りを確認する。
どうやらここはフィールド型のようだ。
そして、すぐ近くの森から煙が上がっているのが見えた。
ドワーフはそこを指さし全員に説明する。
「あそこがドワーフの里だ。この辺りには強いモンスターはいないからかなり安全だ。
それに、里の者で定期的に間引いているから数も少ない。
まあ、油断はせずに行こう。」
そして、ドワーフはサトル達を引き連れ、先頭を歩き出した。
「そういえば俺の名前を言ってなかったな。
俺はメテオという名前だ。よろしく頼む。」
そう言って先を歩いて行った。
しばらく歩くと森の外延部に到達する。
そして、そこには道が里へ向かって続いていた。
それに沿って歩くと先の方から槌を打つ音がだんだんと聞こえてくる。
それを聞いてメテオの足が次第に速くなる。
そして森を抜けた時、彼は叫んだ。
「みんな、無事に帰ったぞーーー。」
それを聞いて手の空いている者が次々と近づいてきた。
「おお、メテオ無事だったか。」
「帰ってこないから心配したぞ。」
「こりゃ今日は宴会だな。」
「おい、だれか酒もってこい。料理もだ。」
全員、メテオの無事な帰還を喜んでいる。
その時、一人の男が彼の前に立った。
彼は無言で拳を振り上げメテオの頭へと落とす。
「ゴン」
「いってーーー。」
と凄い音と声がした。
周りはそれを見て声を失う。
そして、殴った男はメテオの肩に手を置き話しかけた。
「今回の事はこれで許してやる。里の近くだからともう油断するなよ。」
「ああ、すまない里長。」
そう言って二人は並んで笑いあった。
そして里長と呼ばれた男は総理へと振り向く。
「大事な仲間を無事に取り戻してくれたことに深く感謝する。」
それを聞いて総理も急いで謝罪の言葉を述べる。
「いや、今回はこちらの不手際だ。それについてはこちらこそ謝罪する。」
そう言って互いに頭を下げた。
そして、この度の経緯を里長は総理に聞いた。
「それで、今回はなぜこんな事になったのだ?」
「それが、あなた方の技術を狙った国外の者がメテオさんを誘拐したようだ。
そこの国にはドワーフがいないのでダンジョン産の鉱石が加工できない。
それを解消しようとしたのだろう。」
「そう言う事か。しかし、まっとうな国ならドワーフがいるはずだが。
その国は過去に何かやらかしたのかもしれんな」
そう言って自らの顎髭を撫でる。
「まあ、獣人を奴隷として使いつぶしにしていたようなので、もしメテオさんがあの国に攫われればどうなるかはわかりません。」
「たしかに、俺が攫われていた間は水も食料も貰えなかったからな。」
メテオもその時の事を思い出して顔を歪める。
「まあ、何はともあれ無事でよかった。
それじゃあ、メテオの無事な帰還を祝して宴だーーー。」
里長がそういうと周りの家から次々と酒の樽が持ち出され、村の中央広場へと運ばれていく。
そして、そこはあっという間に宴会場へと変わった。
ドワーフは全員、腰にアイテムボックスを持っているようだ。
彼らはその中からマイジョッキを取り出して酒を注いでいく。
しかし、その流れに付いて行けないサトル達は棒立ちになって眺める事しかできない。
そこで総理と龍斗は分かっていたのか、いつの間にか宴に参加している。
そして、寅は宴会料理を作り始めていた。
それを後ろで見ていたエリザは動けない者達へと声をかけた。
「ドワーフってこういう種族なのよ。何かにつけて酒を飲む。
だから私達も参加しましょう。」
そう言ってエリザはちゃっかり悟の手を引いて宴会に参加していく。
それを追って自然と他のメンバーも参加していき、宴会は盛り上がっていった。
そして現在は宴会も半ばまで差し掛かっていた。
「おい、酒が切れたぞ」
「なに、その樽が最後だぞ」
それを聞いて周りのドワーフ達が騒ぎ始める。
その時3人の男と一人の女が広場の中央に進み出た。
「ドワーフ達よ、心配するな酒ならここにある。」
そういったのは総理だ。
そして、その横には龍斗と銀二とエリザが並んでいる。
まずは総理が服のポケットに手を突っ込む。
そしてそこからは人ほどもある樽が現れた。
「これは最上級のウイスキーだ。それに樽はこれだけじゃない。」
そういった総理は樽を10個取り出す。
「これは日本政府からのお詫びの品だ後日さらに大量の酒を提供する。好きなだけやってくれ。」
その言葉を聞きドワーフ達のテンションが上がる。
次に前に出てきたのは龍斗だ。
「俺は沖縄で大量の泡盛を買い込んできた。」
そういうと龍斗も同じくらい大きな酒瓶を10個ほど出した。
「みんなで飲み明かそうぜーーー。」
それを聞いてドワーフの男たちが騒ぎ出す。
続いては銀二だ。
「俺は大量の日本酒を持ってきた。酒の味が分かる奴は飲んでみてくれ。」
それを聞いてさらに上がるテンション。
そして最後にエリザがアイテムボックスからそれらと同じくらいの酒樽を取り出して見せた。
「これはヨーロッパの各地方のワインよ。私はこれを全て提供するわ。
女性でも美味しく飲める物も多いから安心よ。」
それを聞いて女性陣の叫びも加わり広場は大変な騒ぎとなる。
さらにそこへ寅の料理が登場する。
「俺の料理も食ってくれ。本調子ではないが味の保証はする。」
そして、匂いに誘われて料理を食したドワーフは言葉を失い固まった。
そして次の瞬間。
服が弾け飛び筋骨隆々の肉体には軋む音が聞こえそうなほどの力が入っている。
そして吠えた。
「うめーーーーーーー。」
それを聞いたとたんに周りのドワーフは酒を片手に殺到した。
それを見てトラは叫ぶ。
「お前ら、落ち着け。料理は大量にある。」
それを聞いてドワーフは目を光らせ寅を見る。
そして酒が切れれば注ぎに走り、料理へ突撃する。
そのサイクルがしばらく続いた。
そして、激しい運動と旨い酒と料理に酔ったドワーフは深夜に差し掛かる前に二人を残して酔いつぶれた。
残った二人とは里長とメテオだ。
二人は龍斗達と集まり武器について話している。
「里長、俺の見立てだと穢れがたまっている気がするんだが。」
「そうだな、俺も少し気になっていた。お前たち、持ってる武器を全部出せ。」
そう言われて自分の武器を里長の前に並べる。
それを里長は一つずつ確認していった。
その結果、殆どの武器。
特に近接戦の武器には穢れが溜まっている事が分かった。
特にサトルの武器が酷く、このままでは近いうちに呪いの武器になるだろうと言われた。
里長は責任をもって明日にでも汚れを落とすと約束しその日は皆、客間で眠りについた。
そしてサトル達は朝、槌を打つ音と二日酔いで目を覚ます。
昨夜のように酒を飲んだのはみんな久しぶりか初めてだった。
悟、彩、舞、そして獣人組は全員頭を抱えている。
どうやらホロの完全体制はこんな時には役に立たないようだ。
犬の姿で床をゴロゴロ、あっちへフラフラと同じように苦しんでいる。
そして、全員仕方なく万能薬を飲んだ。
痛みは引いていき思考もはっきりとして来る。
「もう、あんな飲み方はしない。」
サトルの言葉を聞いてみんな頷いた。
そして、部屋の外からサトル達を呼ぶ声が聞こえてくる。
「お前たち起きたか。起きたら飯食って武器の穢れを落としに行くぞ。」
そう言って部屋に入ってきたのはメテオだった。
悟たちは朝食を済ませ、メテオの案内で工房へと向かう。
この工房では槌の音がしない。
どうやら俺たちが来るのを待っていてくれたようだ。
中に入るとそこには里長の姿があった。
「俺は里の上級スミスの誰かに頼むつもりだったんだが昨日の礼にと里一番の鍛冶師である里長が請け負ってくれた。」
そして里長が説明を始めた。
「今から穢れを落とす。しかし、この二つは俺には無理だ。」
そう言って舞の弓と美雪の杖を返した。
それを見て美幸が答える。
「ええ、分かってるわ。この二つはエルフに見てもらうわ。」
「分かってるなら説明はいいな。そっちの娘にはあとで説明してやってくれ。」
「ええ、そうするわ。」
「それじゃ、簡単なのからやっていくか。」
里長はそういうと小物のナイフや予備武器から浄化を始めた。
里長はまず横にある水へとナイフを浸ける。
すると水にナイフから何かが染み出していく。
そして、しばらく経つと染み出していたものは止まり里長はナイフを研いでいった。
それを他のナイフや予備武器でも行っていく。
しばらくすると水は濁り他のドワーフが新しい水を持ってきた。
そして、次に手を付けたのは彩さんの特注毒投げナイフ。
これを水につけるとあっという間に水は濁った。
そして水を交換して二回目にはあまりでなくなったので里長はナイフを研いで浄化を終える。
次は龍斗の剣に手を伸ばした。
これは水につけると水は瞬く間に黒くなった。
里長は水から剣を引き抜くと炉の中で加熱しハンマーでたたく。するとさらに黒い靄が立ち上がっていく。
だが叩いていくと次第に収まり、次に水に付けた時には水は汚れなかった。
最後にサトルの剣を手に取る。
すると里長は席を立ち別の場所へと移った。
そこは先ほどの水が泉のように沸いており、炉も何やら特別製のようだ。
「この水は聖水でな穢れを払うのに使っている。
この炉も特別製だ。炉はノーム様の加護が、炎にはサラマンダー様の加護が宿っている。
おそらくこれでないと穢れを落としきれないだろう。」
そう言うと里長は剣を水につけた。
すると水は黒くなるのではなく蒸発した。
続いて里長は剣を炉に入れる。
「ギャアアアアーーーー」
剣から悲鳴のような音が聞こえた。
「やっぱり意思を持ち始めていたか。お前も危なかったな。このまま使いつ続けいたら精神を乗っ取られていたかもしれんぞ。」
それを聞いてサトルは驚愕し剣を見つめる。
「でもまだ大丈夫だ。今なら呪いになる前に躾け直しが効くからな。」
「躾け直し?」
「そうだ、こいつの呪う方向性を変えて使用者を強化する方へ変える。
そうすればこの武器はさらに強力になる。」
そう言って里長は炉から出した剣を巨大なハンマーで激しくたたいた。
その度に剣からは悲鳴が聞こえる。
そして、二度目の聖水への投入では激しい気泡が立つが蒸発まではいかなかった。
しかし今だに剣を炉に入れれば苦しむ悲鳴が聞こえてくる。
しかし、それも作業を繰り返すうちに聞こえなくなり聖水も汚れなくなった。
そして、最後の研ぎが終わり里長は剣を見つめて止まる。
「おい、これを持ってみろ。」
「わかりました。」
そしてサトルは剣を手に持つ。
するとどこからか声が聞こえた。
(あ・・・ある・・・主)
サトルは周りを見回すが聞き覚えのない声の主はいない。
「里長、これはいったい?」
サトルは里長に問いかけた
「どうやら剣に意思が宿ったようだ。」
「それって大丈夫なんですか?」
「浄化は済んでいるから大丈夫だ。それにお前を主と認めている。今は浄化直後で意識がはっきりしていないがしばらくすると話せるようになるだろう。」
「わかりました。もし問題があったらまた相談に来ます。」
「それと、定期的にここに穢れを落としに来い。意志を持った武器が呪いの武器になると悲惨だ。」
サトルは悲惨という単語が気になったため確認する。
「どういう事ですか?」
「意思があると言う事は呪われた武器に成った時。その苦しみを剣も味わうことになる。それも剣としてある限り永遠にな。だから必ず来い。」
「わかりました。その時はまたお願いします。」
そして武器の浄化も終わったため、一行は工房をでて帰り支度を始める。
「もう帰るのか?」
「ああ、外で待ってる者もいるからな。」
「そうか、また会おう」
そう言って里長や手の空いている物は里の前で龍斗達を見送った。
そして一行は森を抜けて外へと帰還する。
これにより日本は救われたのだった。
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