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第八十五話 襲撃者殲滅

黒田達は敵を撃退し、バスを発進させる。

バスの中では先ほどの襲撃により、不安を感じている者が多くいた。

特にあちらの国からサトル達に救われ、帰国してきた者たちは連れていかれた先での苦しみを覚えている者が多い。

彼らは二度とあの苦しみを味わいたくないため、祈るように座席に座り身を竦ませていた。

しかし、その不安を他所にバスは何事もなくサトルの家へ到着する。

門の前には既にアクアが待機しており、バスごと敷地内へと誘導した。

しかし、それを待っていたかのように、黒塗りの車達がサトルの家の前へ停車した。

その数は10台にものぼり車からは6人ずつ人間が下りてきた。

彼らは皆、剣や槍で武装している。

そして、バスから降り始めていた獣人たちに大声で叫んだ。


「お前たちの逃げ場はもうないぞ。観念してこちらに従え。

従うならば手荒な真似はしない。」


まさに先ほど、バスに対して手榴弾を投げ付けてきた相手とは思えない甘言である。

それに、捕まれば自分たちがどのような扱いを受けるかは、先ほど撃退した敵の一人からすでに聞いている。

そのため、獣人たちにはその言葉に耳を貸すものはいなかった。

敵の言葉を無視して、獣人や避難してきた社員はアクアの誘導で素早く家に入っていく。

そして全員の避難が終了すると先ほどと同じ男がさらに叫んだ。


「残念だ。お前たちは選択を誤った。

これより強制行動に移る。命の補償はしないので覚悟するように。」


そして、門の前に集合した敵の内50人が、サトルの家へ入るため行動を起こした。


まず、先頭の男は門に手をかけ開けようと試みる。

しかし、門には何らかのロックが掛かっているのか小揺るぎもしなかった。

一人では無理と判断した男は周りの者に協力を仰ぐ。


「一人では無理だ。手伝ってくれ」


周りの男たちは、門もろくに開けれないのかと笑いながら手伝いに入った。

そして、総勢10人で開けようと試みるも開く気配はない。


仕方なく彼らはいったん門からの侵入は諦めた。


彼らはこの時に、この屋敷の異常性に気づくべきであった。

ある程度レベルのある人間が10人も集まってもビクともしない門。

そして門の横のにある3つの注意書きに。

そこには日本語でこう書かれていた。


ウィンディーネの名のもとに、この家に侵入する者には制裁を加える。

シルフの名のもとに、この家に侵入する者には制裁を加える。

ノームの名のもとに、この家に侵入する者には制裁を加える。


この注意書きを読んでも子供のいたずらに思う者がほとんどだろう。

だが実力ある者ならば、今侵入しようとする家の気配から、この注意書きがあながち嘘ではない事に気づいただろう。

彼らの最大の失敗は相手を侮り、現状を甘く見た事だ。


そして、彼らは門や壁を飛び越えての侵入に切り替えた。

待機していた5名が、壁を背にして手を前へ構える。

そして、次々とその手に足を掛けて男たちは壁を飛び越えて行った。

そして、屋敷の敷地内に50人の敵は侵入を果たした。

彼らは剣や槍を構え、慎重に屋敷へと近づいていく。

そして入り口の扉に手を掛け力任せに押し開けようとする。

しかし、門と同じように扉は全く動かない。

仕方なく彼らは扉を破壊しようとして、剣や槍を手に攻撃を始めた。

そして、攻撃の受け扉は傷ついていく。

それを見て敵の男達は微笑を浮かべた。


しかし、彼らは次第に息苦しさを感じ始め、顔色は急速に悪くなっていく。

気づいた時には視界は狭まり、立つのも辛い状態へとなっていた。

そして、その異常事態に気づいた外の仲間が急いで家から出るように叫ぶ。


「様子がおかしい。全員、直ちに撤退しろ。」


しかし、その指示はすでに手遅れであった。

彼らが先ほど飛び越えた壁は高さを増していき、飛び越える事の出来ない高さへと変わる。

門の前にも壁が現れ、中は見えなくなった。

そして、中では悪夢が始まる。


屋敷はシルフの加護により、敵に対して酸素濃度を下げていく行動をとった。

何もせずに逃げ出していれば、ただの酸欠で終わり命は助かる。

しかし彼らは敵意をもって扉を攻撃してしまった。

それにより加護の力は撃退から殲滅にその対応を変えた。


中へ突入した者達は意識を薄れさせながらも出口であった場所に向かおうとした。

しかし、彼らは庭の真ん中で足を止める。

いや、止めざるを得なくなった。


「なんだ、足が地面に沈む。」

「助けてくれ。」


彼らはノームの加護により、地面に足が沈み込む。

そして、次第に意識を手放す者も出始めた。

しかし、数名は足を地面に拘束される前に仲間を踏み台にしてさらに外壁へと近づいた。


「くそ、絶対生き残ってやる。」


外壁に近づいた男達は武器を手に壁へと攻撃を仕掛けた。

その途端に壁際にある水路から蜘蛛の糸の様に細い水の糸が立ち上がる。

それは壁を攻撃した男達を瞬く間に輪切りにして肉の塊に変えた。

見ていた者は何が起こったのか理解出来ずその顔を絶望へと変えた。

そして、全員が意識を失った時、彼らは地面へと完全に沈んでいく。

その後、庭は完全に元に戻り何事も無かったように芝生を輝かせていた。

更に扉や外壁の傷は消えていく。

最後に外壁がもとの状態に戻り門から中が見えるようになった。

門から中を覗きこんだ残りの敵は仲間が消えたことに驚愕した。


そして敵の男は仲間へと指示を出す。


「おい、近くの家から誰でもいいから人間を連れてこい。

そいつを人質にして奴らを誘い出す。」

「分かりました。」


そう指示を受けた男は残りの人員から4名を選び、近くの民家へと走った。

そして10分が経ち人質を探しに行った者の一人が帰って来る。


「現在探しておりますが、この一帯で誰も見つける事が出来ません。」

「なんだと。クソ、先手を打たれたか。」


そう、黒田が事前にリンダに依頼したのは、サトルの家の周り一帯の人々の避難。

黒田はこうなる事を予想して先手を打ったのだ。

しかし、黒田の依頼からそれほど経ってはいない事からすでにリンダが動いていたのだろう。

そして、しばらくして人質を取りに行った人員が一人の女性を連れて帰ってきた。

その人物は、褐色の肌と白い髪をしていた。

彼女は道を歩いているのを発見して捕まえた者だ。

剣と槍で脅しサトルの家の前まで連れてきた。


それを見て先ほどから指示を出していた男は屋敷へ向けて声をあげる。


「貴様ら。これが見えるか?今から5分待つ。

それまでに武器を捨てて出てこい。

指示に従わなければこの女の腕を切り落とす。

それでも指示に従わなければ足だ。

こちらには十分なポーションがある。

その意味が分かるな。」


屋敷の中から微かなざわめきが聞こえてくる。

それを聞いて、男は人質に効果があると判断した。


しかしそれ以降、屋敷は静まり人が出てくる気配は全くない。

男は侮られていると感じて屋敷から見える所へ女性を突き飛ばした。

そして叫ぶ。


「お前らの考えは分かった。それではこちらもそれに応えよう。」


そう言って男は腰の剣を引き抜き、女へと向ける。

そして、周りの仲間が二人、女性の左右の腕を摘み、それぞれの方向へ引っ張り腕を伸ばさせた。

そして、男は剣を上段に構え一気に振り下ろした。


{ザシュ}


「あれ、なんで、俺が・・・」


そして切られたのは男の仲間であった。

女性は腕の力だけで腕を掴む男を引き寄せ自分の盾にしたのだ。


「き、貴様。何者だ?」


剣を突きつけながら男は叫ぶ。


「知らないのかい。私は紅蓮ていう獣人だよ。」


そう言うと、紅蓮は髪に隠していた耳をだし、さらに尻尾を出す。


「クソ、嵌められた。全員戦闘準備だこいつを殺して門に張り付けてやれ。」


そう言って周りの仲間たちも武器を紅蓮へ向ける。


「ザコ共が、まだ懲りないようだね。」


そう言って紅蓮も腰のアイテムボックスから愛用の大剣を2本取り出した。

紅蓮はその柄を強く握り目の前の男たちを睨みつける。


「馬鹿は死んでも治らないと言うからね。死んで後悔しな。」


そう言うと紅蓮は残り9人の男たちに切り掛かった。

最初は先頭にいる剣を持つ男。

紅蓮は右手の剣で右薙ぎに剣を走らせる。

それを相手は受け止めるために剣を構えるが剣はその攻撃に耐えきれずに砕け散る。

それを見た紅蓮は即座に左手の剣を上段から振り下ろして一人目を始末した。


次に標的にしたのは槍をもって並んで立つ3人の男。

紅蓮は真直ぐにその男たちに突撃を仕掛ける。

3人は紅蓮に対して槍を構え同時に穂先を突き出してきた。

それを紅蓮は一つは右手の剣で、もう一本は左手の剣で横へと逸らす。

しかし、もう一本は紅蓮の肩を切り裂いた。

だが致命傷でない傷では紅蓮は止まらない。

彼女は真ん中の男の首へと噛みつきその強靭な顎と牙で男の首をかみ切り絶命させる。

そして、懐に入られた二人の槍使いは、片方は槍を失いながらも紅蓮の剣を交わし

もう一人は紅蓮の剣に腹を貫かれて現在、紅蓮の剣にぶら下がり息絶えている。


しかし、その槍を失った男は直後、影から伸びる剣に心臓を貫かれて絶命した。

それは影法師の天職を持つ淳が隙を見て影から攻撃を仕掛けたのだ。

そして影からはさらに海、哲、霧島が現れる。

それを見て紅蓮は話しかけた。


「どうしたんだい。家で見物しててもよかったんだよ。」

「いや、さすがに女性一人に戦わせていたら妻に叱られる。」

「俺達はまだ恋人だけど同じ思いだ。」

「そうかい。残りの相手は大したことはない。お前たちは一人一殺で十分だよ。」

「あの隊長格は私が貰う。」


そう言うと紅蓮はその男にとびかかった。

男は剣を構え紅蓮の剣を受け止める。


「ぐ、何て力だ。」

その男はなんとか紅蓮の剣を受け止めたがあまりの力に顔を歪める。

「どうしたんだい。獣人が欲しいんだろ。」

そう言って剣にさらに力うをく会えながら獰猛な笑みを浮かべる。

「化け物め。」

「何言ってるんだい。それに最初に手を出したのはそっちだろ。」

「獣風情が吠えるな。」

「ならあんたらは何だい。他人を利用して使い潰すだけの奴等には言われたかないね。」


そして紅蓮はさらに剣に力を籠める。

しかし、その男は自分からとっさに後ろに飛んで力を流し、その反動で距離を取った。


「屑にしてはなかなかやるじゃないか。」

「黙れ。仕方ない。ここは奥の手を使うしかないか。」


そう言って男は腰のアイテムボックスから薬瓶を取り出した。


「どうしたんだい。怪我でもしたのかい。」


紅蓮はそう言って笑い相手を挑発した。


「これは龍の血から作った秘薬だ。まだ実験段階だが一時的に竜人になることが出来る。たが再び人間に戻れるか分からない代物だ。」


そう言って男は秘薬を飲み干した。


そして、男は変化していく。

体には鱗が生え黒く染まる。

そして理性を無くした目で紅蓮を睨んだ。


「グアアアアーー」


叫びと同時に男は紅蓮に切り掛かった。

しかしその動きは単調になり、紅蓮はその攻撃を難なくかわしていく。


(どうやら副作用が強いみたいだね。理性まで獣になってるよ。)


そして紅蓮は相手の隙をついて腹部に横薙ぎの一撃を当てる。

その一撃は並みの人間ならば、体が二つに分かれていただろう。

しかし、今この男は龍の鱗に覆われている。

そのため鱗を切り裂きはしたが体に大きなダメージは通らなかっら。


それを見て紅蓮は周りを確認する。

周りはすでに決着がついており4人はこちらの闘いを窺っていた。


「今のお前らにこいつは危険だよ。絶対手を出すんじゃないよ。」


そう言って紅蓮は男を見た。

先ほどの傷は再生していない。

どうやら通常の龍のような、強靭な生命力はないようだ。


「仕方ないね。こっちも一つ切り札を使うかね。」


そう言うと紅蓮は剣に魔力を込める。

すると剣は怪しく光り、紅蓮の手に管を突き刺した。

管からは紅蓮の血が吸われ、それと同時に剣も赤く激しく光り始める。


「これは疲れるからあまり使いたくないんだよ。」


そう言うと紅蓮は大上段に二本の剣を構えた。

龍人となった男はそれを見て臆することなく紅蓮へと突撃して行く。

紅蓮は男が間合いに入るまで動かない。

そして男が間合いに入った時。

紅蓮は剣を振り下ろした。


その剣線は赤く輝き、まずは男が切り上げて来た剣へとぶつかる。

しかし、男の剣は紅蓮の剣に当たると同時に切断された。

更に紅蓮の剣は男の体を切りつける。

先ほどはかすり傷しかつけられなかった剣撃は男の肩から胸へ、そして横腹へとクロスする形で切り裂いた。

そして斬撃は止まらずその先にあるサトルの家の壁に当たり一部を破壊した。

その威力は精霊の加護が働く土壁を難なく破壊できる威力を持っていた。


この時点で獣人となった男は絶命しその姿を人間の物へと戻る。


それを見た霧島は紅蓮に問いかけた。


「紅蓮さん、今の男はいったい?」

「さあね。ただ危ない薬を作ってる奴がいるってぐらいかね。」


そう言うと紅蓮は剣を手放す。

それと同時に手に刺さる管は抜け剣は元の状態に戻った。


「これは呪われた武器ですか?」

「そうだよ。気を付けな。こいつに血を吸いつくされた奴は多い。

私の切り札の一つさ。」


そう言って紅蓮はアイテムボックスからポーションを取り出して飲み干した。


「まあ、今はサトルの家で休もうじゃないか。みんな心配してる。」


そして、5人はサトルの家へと入っていった

読んでいただきありがとうございます。

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