第七十九話 トラブルだらけの休日
ゲリライベントの次の日。
サトル達は休日を楽しむためにホテルから出発した。
今日の目的地はサファリパーク。
このメンバーで歩くと昨日の事もあり街中は目立つからだ。
ここで龍斗が気を利かせてジャングルバスを一台貸し切りにしてくれた。
また、リンダが付き添いで同行してくれているので困った時は相談できる。
そしてサファリパークについたサトルたちは車から降りてリンダの案内でジャングルバスに向かった。
バスは側面が頑丈な金網になっており動物たちを身近で見れるように工夫が施されている。
これなら安心して園内を見て回れるだろう。
全員乗ったことを確認しガイドの女性がサトル達に注意事項などを教えてくれる。
そして当然誰も注意事項は聞いていなかった。
係員もいつもの事なのか気にせず運転手にバスを発進させた。
まずは熊エリア。
そこに入りバスは止まる。
「みなさんここでは熊に餌があげられます。こちらのお肉を上げてみてください。」
それを見た獣人組は肉を受け取る。
そして匂いをかいだり舐めたりして肉の状態を確認した。
「サトルさんこのお肉少し傷んでますね。これを上げるのはかわいそうです。」
そう言って肉を受け取っていた者は係員に肉を返す。
それを見て係員の顔は一瞬ひきつる。
外には肉を貰いに熊たちが集まって来ている。
しかしお預けを受けたためにおねだりで金網を揺らし始めた。
そこで彼らはアイテムボックスをあさり始め、ある物を取り出しす。
そこで彼らが出したのはなんとダンジョン産お肉。
熊は鼻がよく、その匂いを嗅いだとたんに狂喜乱舞し、集まったすべての熊が金網を揺らし始めた。
そして最初のトラブルが起きた。
{ガコン、ドスーン}
車に取り付けられていた金網が外れてしまったのだ。係員はそれを見て恐怖に顔を青くする。
しかしサトルたちは焦らず熊に近づいていった。
その中でクロが先頭に立ちバスを降りて行く。
そして、肉を片手に熊の前まで歩き、手にした肉を熊の鼻先へと近づけ話しかける。
「これが欲しいのだろう。」
「ゴッフゴッフ。」
熊は今まで嗅いだことのない食欲を刺激する匂いに興奮気味だ。
「あなた、危ないですよ戻ってください。」
係員は恐怖の中自分の仕事を全うしようとしている。
バスもクロが下りているので逃げるわけにいかず停車したままだ。
熊はクロに近づきその大きな口でクロの手もろとも肉を食べようとした。
しかしそれを見てクロは肉を持った手で熊の下顎を掴んだ。
「やるのは肉だけだ。俺の手は餌ではない。」
そう言って睨むと熊は両腕を上げ振り下ろしてきた。
その腕をクロは同じく両腕で受け止める。
そして力比べとなりクロは呆気なく押し勝った。
そして熊が諦めるとまた口元へ肉を差し出す。
熊は今度は肉だけを大人しく食べ下がっていった。
そして、そこで彩が意思疎通で熊たちに話しかける。
「あなた達この肉が欲しい?」
「ガウガフ」(欲しい。)
「なら並びなさい。こちらには十分なお肉があるわ。横に整列。」
彩がそう言うと熊たちはバスの横に二本足で立ち整列していく。
「みんな、いいわよ。餌をあげましょ。」
そう言ってサトルたちは存分に熊たちに肉を与えた。
それを見ていた係員は茫然としており無言である。
余談ながら、この熊たちはグルメになり質の悪い肉は食べなくなったため餌代の経費が上がった。
そして哀れな運転手と係員を乗せたバスは次のライオンのエリアへ進んで行く。
金網はサトル達が固定しなおした。
そしてライオンたちはこちらを確認するとバスの上に乗ったりして餌をねだる。
ライオンも鼻がいいため先ほど匂ってきた肉の匂いで少し興奮状態だ。
彼らはフェンスをひっかき、唸り声を上げながらこちらを見ている。
その目はすでに獲物を求めるように血走っていた。
しかし群れの後ろから一頭のオスが近づいてきて他のライオンたちを追い払いこちらを激しく攻撃してきた。
それを見て彩は立ち上がる
そしてそのライオンに話しかけた。
「あなたこれが欲しいの?」
彩はダンジョン肉を手に持ち尋ねる。
「ガウガウ」(よこせ、それは俺の物だ。誰にもやらない。)
「あなたの後ろには多くの仲間や子供がいるわ。分け合わないの。」
「ガウガーーウ」(そんなこと知るか。ここでは俺がルールだ。)
「お客さん。そのライオンはよく問題を起こす個体でとても危険です。ここは適当に餌をあげて早く行きましょう。」
そう言った係員は少し怯えている。
それを聞いて彩の行動は早かった。
「スノー、この子は悪い子みたい。少し遊んであげなさい。」
彩は笑顔でスノーへと指示を出した。
「分かりました主。」
そして、スノーは車から降りて犬の姿になり、そのライオンと対峙した。
それを見た係員は、「またか」と言う顔で固まってしまいスノーとライオンを見つめる。
「ガアアアーーー」(そこを退けーー)
「ワウワウ」「哀れな男。」
スノーは襲い掛かるライオンの前足を交わす。
しかし、直後にライオンの噛みつき攻撃が首を襲った。
それをスノーは動かず受ける。
「ガフガフ」(なんだこれは、牙がたたない。)
ライオンの攻撃はスノーの防御力を突破できなかった。
「ワウワウワウ」(あなたの力はその程度ですよ。)
そしてスノーは首を一振りしてライオンを払いのける。
「ワウワウ」(これで終わりです。)
そう言ってスノーはライオンに犬パンチをくらわせ終わらせた。
スノーは獣人の姿になりバスへ戻る。
すると今まで逃げていた他のライオンたちが近づきてきたのでサトル達は餌を上げた。
そのあいだ先ほど負けたライオンは力なく遠くで見ている。
それを見て彩はバスから降りて近づいて行った。
「ガウ」(何の用だ。)
「あなたは食べないの?」
「ガウ」(哀れみはいらん。)
「そう。」
そう言って彩はバスに戻っていく。
しかし直後、他のライオン達が全頭肉をもってやって来た。
そして勝負に負けたライオンは少し悩んだ末その肉を全て食べた。
それを見てバスは次のエリアへと進んで行く。
余談だがこのライオンは今後立派なリーダーとなる。
彼がリーダーを務めるあいだは些細な事故すら起きず平和な状態がつづく。
次はチーターのエリア。
そこで係員は身構える。
今度はどんなことが起きるのか。
金網を確認。問題なし。
動物の状態。落ち着いている。
そして呆気なくチーターエリアを抜けていった。
係員と運転手は安堵して気を緩める。
次は象のエリア。
しかしここで彼らに最大のトラブルが発生した。
前方には故障したのかバスが一台立ち往生していた。
そちらからは
{キュルキュルキュル}
というエンジンをかけようとする音が聞こえてきた。
しかし、それを威嚇と勘違いした雄象がバスに体当たりを行い、バスは大きくゆれて中から乗客たちの悲鳴が聞こえる。
それを見た係員はサトル達を見る。
すると彼らは既に動き出していた。
装備を整え、バスから降りていく。
そしてステータス的に一番高いサトルが象を横から押した。
「はーーーーー。」
「パオーーー」
象は足の裏を滑らしながらバスから離れていく。
そして象はサトルを明確な敵と決めたのか一度離れ再度突進してきた。
その突進をサトルとスノーは協力して盾で受け止める。
するとそれを見ていた他の象たちも興奮して襲い掛かってきた。
数が増えてきたためホロは魔法をつかう。
土の魔法で障害物を作り出し突進を妨害する。
クロは車を押して避難させ彩は麻痺毒を使い象たちを動けなくさせて制圧していく。
そしてバスが避難を終え、象たちも制圧してサトル達も象エリアを出ていった。
去り際にローリーが象たちを回復させ、ホロは障害物を消して元の状態に戻す。
エリザはダンジョン産の果物を大量に置き、動けるようになった象たちに彩が果物を食べていいことを伝えた。
象は果物に群がり先ほどまでの興奮はすべて食べ物に向いた。
象たちは腹が膨れると満足したのか大人しくなり散って行く。。
余談ながらこの象たちも熊のようにグルメになり食費を圧迫する。
その後一行はふれあい広場で動物たちと戯れて帰っていった。
ちなみにその間、風子はサファリパークのレストランでメニュー制覇を行っていた。
いくら食べても太らずたくさん食べられる能力をシルフが与えているため、彼女はその体格に似合わない量を食べそのレストランに伝説を残す。
そして、運営側も今回の事から高レベルの者を雇い入れるこことなり、パークの安全対策は強化された。
さらに、この時の係員の女性はサトル達を後にテレビやネットで知る。
そして自らを鍛え上げ高レベル職員として長くパークの安全を守った。
そしてサトルたちは今日の思い出を胸にホテルに帰っていく。
一般人からすれば命がけのトラブル満載の1日だった。
しかし彼らはすでに
熊より強く。
ライオンよりも統制され。
チーターより早く。
象よりも頑丈になっている。
彼らにとっては今日と言う日はたくさん動物と触れ合えたとしか感じていないのだ。
そして明日に備え食事を取り (ちなみに風子も完食している。)眠りについた。
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