第七十六話 シルフの祝福と加護
「ありがとうございます。あなた達にはお礼に加護と祝福を授けましょう。」
シルフは試練を受けてないのにそう言ってきた。
「え、試練は?」
サトルはつい口から疑問を漏らす。
「あなた達の今回の試練は私の暴走を止めたことにしましょう。」
「いいのですか?」
「もしあのまま私が暴走すれば日本は地図からなくなっていたでしょう。そうすればウィンディーネも暴走したかもしれません。」
シルフは少し悩んだすえに申し訳なさそうに真実を伝えた。
「分かりました。ありがたくいただきます。」
そしてシルフはホロ、イクス、リーン、ローリーを見た。
「それとあなた達4人には美味しい料理やおやつをいただいたので加護を与えましょう。
それと、弓と双剣を持ったあなた達にも加護を与えます。」
「「「「「ありがとうございます。」」」」」
(まあ、バーベキューを食い尽くしたのはこの4人だけど言わない方がいいな。)
「それと、あなたがアリアかしら?」
シルフはアクアに顔を向け確認する。
「はい、その通りです。」
アクアは答えるとシルクに近づいて行く。
「ウィンディーネより話は聞いています。今この人たちの家で働いているのですよね。」
「はい、ウィンディーネ様の目となり耳となり働いております。」
(物は言いようだな。)
そして、アクアへの確認が終わると、シルフはサトル達へ向き直おる。
「それであなた達に相談なんだけど、私もっとおいしい物を味わいたいの。」
(なんだか嫌な予感がするな。)
「それでアリアみたいに感覚を共有出来る人が欲しいの。」
「アリアさんはウィンディーネが自分で用意しましたが、あなたにはそう言う存在はいないのですか?」
「今みんな忙しくて人手に余裕がないの。誰かいいのはいないかしら。」
そして互いに困った顔になり会話が止まる,
しかし、それを聞いてアリアが提案する。
「私のお世話する家に新米ですがシルキーがおります。その子を私のように力を与え受肉させればお望みが叶うと思いますが。」
「それは良い案ね。でも本人の意思確認は大事ね。ちょっとこちらに来てもらおうかしら。」
そう言うとシルフは空間をゆがめ風子をここに呼びよせた。
「ここはどこですか?あ、サトルさん、アリアさん。と言う事はここはダンジョンですか?」
少し混乱する風子にシルフが話しかけ説明をした。
「シルフ様はおいしい物が食べたいから私と感覚を繋ぎたいと言うことですね。」
「ええ、そうね。それに肉体も手に入るし力も強くなるわ。どう、やってくれるかしら。」
それを聞いて風子は少し悩む仕草をする。
風子は今のままでも十分満足しているため肉体への興味は薄い。
しかし、幽霊だったときの空腹感から食べることには大きな未練が残っていた。
「私生活に支障はないのですね。」
風子は揺れる心でシルクに確認をとる。
「ええ、でもなるべく1日3食、食べてくれると嬉しいわ。」
「サトルさんとアクアさんがいいなら私はこの話を受けたいと思いますか?」
風子は悩んだ末にこの話を受ける事にした。
そして、最終判断のために風子はサトルとアリアに確認をとる。
「俺はいいと思うよ。」
「これは私の提案なので問題ありません。」
サトルは笑顔で、アクアも若干口元に笑みを浮かべて了承する。
「ありがとうございます。それではシルフ様。お願いします。」
「ええ、これからよろしくね。」
そう言ってシルフは風子へと笑みを浮かべる。
そして風子は受肉し、肉体を手に入れた。
「なんだか懐かしい気がします。」
風子は手足を動かしながら体の確認を行う。
「まあ、もとは人間だからね。」
そしてシルフはサトル達に風子の能力を説明し始める。
「風子には転移の能力を与えました。一度行ったところなら自由に行き来が可能です。
でも多くの力を使うので乱用は出来ません。ただその力は魔石で補うことが出来るのでどうしてもという時は魔石を使ってください。」
「こんなすごい能力人間に与えていいのですか?」
「大丈夫よ。もしこの子に何かしたらこちらにもわかるから。
私の大事な胃袋・・・眷属を傷つける相手は許さないわ。
それにこれで美味しい物の所へアッと言う間に移動出来るわ」
シルフは笑顔で言っているがその目には執念のような物を感じる。
(本人の前で本音出ちゃってますよ。)
「それでは、祝福と加護を与えます。」
これでサトルたちは試練を二つ通過した。
「あ、忘れるところだったわ。そこの子」
そう言ってシルフは彩へと声をかけた。
「ウィンディーネからはケルピーを貰ったんでしょ。
私からはこの子を授けます。」
そう言ってシルフは彩に魔石を手渡した。
「これは?」
「グリフォンの魔石です。ここでの試練に呼んだのですが少し予定が狂ってしまったから。」
「倒してないですが素直に力を貸してくれますか?」
彩は今までの経験からの懸念をシルフに確認する。
「・・・そうね、ちょっと聞いてみた方がいいわね。」
それを聞いてシルフも不安を感じる。
そのため、シルフはグリフォンを魔石から呼び出し語り掛けた。
「シルフ様お呼びでしょうか?」
そこには白頭鷲の様に勇ましい頭。
茶色い獅子の体に純白の翼が生えた屈強な獣の戦士が現れた
「ええ、あなたに聞きたい事があって呼びました。今からあなたをこの子に授けようと思うのですが問題はありませんか?」
「お言葉ですが。このような小娘に私を御せるとは思えません。お考え直しを。」
それを聞いてシルフは困った顔をするが無理強いしても互いにいい関係は作れないと判断した。
「ごめんなさい彩さん。この子、自分より強い相手にしか従わないの。」
「それでは仕方がないですね。ちょっと戦ってもらっていいですか?」
あやは気楽にグリフォンに話しかけた。
「小娘いいのか?死ぬことになるぞ。」
グリフォンは彩にすごんで見せるが気にした様子はない。
「それならこちらに来てくれる戦う場所へ案内するわ。」
そう言ってシルフは全員を引き連れ歩き出しす。
「はい。」
「かしこまりました。」
そして天井までが40メートルはある部屋に連れていかれ、そこで二人は対峙した。
この部屋はどう見ても彩には不利な環境だ。
グリフォンが飛び上がれば攻撃手段が無くなってしまう
しかし、互いが睨み合い、戦いは始まった。
「死ねーー小娘。」
グリフォンは真正面から突撃してきた。
それを彩は紙一重でかわす。
そして密かに麻痺毒をチクリ。
それを交わされて少し警戒したのかグリフォンは天井まで飛び上がった。
「なんだ今の攻撃は?蚊ほどのダメージもないぞ。」
そして翼で真空の刃を生み出し彩を攻撃した。
しかし、それを彩は躱していく。
モーションが大きいので弾道が読みやすい。
「くそー、ちょこまか動きおって。これでもくらえーー。」
いつまで経っても当たらない攻撃にムキになり今度は風のブレスを吐き出す。
それが地上へ当たると大量の土埃を巻き上げ視界を塞いだ。
ちなみに俺たちの周りはドーム状の風の壁に遮られ土埃は届いていない。
そして彩は投げナイフをグリフォンに投げつけた。
しかし、それは簡単に交わされてしまい天井に突き刺さる。
「はははは、なんだその攻撃は当たらなければ意味がないぞ。」
しかしその投げナイフには握りに強靭なピアノ線程のワイヤーが取り付けられていた。
そして彩は次々にナイフを投げグリフォンをワイヤーで囲っていく。
煙が晴れた時には何十本と言うワイヤーに囲まれグリフォンは身動きが出来なくなっていた。
さらにその時、先ほどの麻痺毒がグリフォンの動きを鈍らせる。
グリフォンはワイヤーに絡まり身動きできない状態で地上に落ちてきた。
「なんだ、体がうまく動かん。」
「最初の攻撃の時に麻痺毒を注入しました。」
「毒だと、この卑怯者め。」
グリフォンの目に怒りが宿る。
「相手の間合いの外から一方的に攻撃するのは卑怯ではないと?」
彩は感情を一切出さずグリフォンヘ話しかける。
「俺は翼ある者だ。そんな物、卑怯でも何でもない。」
「そうなの、私は毒をもっていた、使って何が卑怯なの?」
「ぐぐ・・・」
グリフォンは墓穴を掘ったことに気付き視線をそらす。
「私に従う気はある?」
「断る、貴様にしたがう位なら死を選ぶ。」
グリフォンは再び彩を睨み付け、大声で叫んだ。
その答えを聞いて彩は溜め息を吐きシルフへ顔を向ける。
「そう、残念ね。シルフ様。」
「どうしました?もしよければ他の者を呼びますが。」
シルフは二人のやり取りを見て諦めるかと問いかける。
「いえ、ちょっとこの子とあっちでオ・ハ・ナ・シしてくるので待っていてください。」
(ズズズズズ)
そう言うと、彩はグリフォンに絡まったワイヤーを握り引きずって部屋を出て行った。
そして聞こえてくるグリフォンの声。
「貴様、俺に何をするつもりだ?」
「なんだそれはやめろやめてくれ。」
「ぎゃああああーーー頭が、頭が割れる。」
「俺の翼が誇りある翼が・・・」
「ああああ、言う事を聞くだからそれはやめてくれ・・・」
「なぜやめてくれないんだ言う事を聞くと、ぎゃあああーーー。」
「お、お願いします。我が主どうかご慈悲を・・・。」
「ぎゃああああああああーーーーーーーー。」
「・・・・・」
他のメンバーはそれを聞いてドン引きしている。
そしてサトルは彩の事を絶対に裏切らないと心に誓った。
そして断末魔の叫びは1時間近く続いた。
そして彩がグリフォンを従えて帰ってくる。
その姿は哀れとしか言えない。
勇ましかった顔は疲れ果て老人のようだ。
体は茶色い体毛に覆われていたはずだが真っ白になっている。
そして翼は血の様に赤く変色していた。
そのあまりの変わりようにシルフは問いかけた。
「グリフォンよ、大丈夫か。」
するとグリフォンは目を覚ましたように答えた。
「は、大丈夫であります。今までの私が愚かでありました。こちらの主様に一生逆らいません。」
言葉使いまで変わったしまっていた。
シルフはそこで彼に聞くのをやめ彩に問いかけた。
「こいつに何をしたのだ?」
「少し躾をしました。それと優しくオ・ハ・ナ・シをしただけですよ。」
「そうか、何はともあれそのグリフォンを授ける。大事にしてやってくれ。本気で頼む。」
「当然です。私を裏切らない限りは大事にします。ね。」
彩はそう言ってグリフォンの顔を見る。
すると彼は白目をむいて倒れ、魔石へと帰っていった。
すでに色々限界だったようだ。
(次出てきたとき役に立てばいいが。魔石に帰ると体の傷は回復するが心の傷は治らないからな・・・。しかし、また新たな犠牲者を出すわけにはいかない。頑張れグリフォン。)
「それと次の試練は土の大精霊ノームです。頑張ってください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
そう言ってサトルは頭を下げる。
「それでは私は帰ります。風子任せましたよ。」
「お任せください。シルフ様。リクエストがあれば声をかけてください。」
「期待しています。」
そう言って風の大精霊シルフは消えていった。
「オタクキャラの次は食いしん坊キャラか先が思いやられる。」
サトルは僅かな頭痛を感じるながらすぐ後ろの「門」から出ていった。
サトル達は受付を済ませ帰路につく。
そして風子の転移で自宅へ移動した。
今日は大変な日々だったがまた一つ試練が終わった。
明日は龍斗にその事を報告し次の試練に向かう。
次は土の大精霊ノーム。
いったいどんな相手なのか。
サトルは心配を胸に団らんの時間を過ごした。
読んでいただきありがとうございます。




