第六十九話 スタンピード後のダンジョン探索
現在の時刻は昼。
ゴブリンの駆除が完全に終わり「門」の前に全員が集まっていた。
そして龍斗は前に立ち話し始める。
「皆今日は早朝からよく頑張ってくれた。
しかし今回のスタンピードはまだ安心ができない。
このように何度もスタンピードが続けて起きるのは前例のないことだ。
そのため今から余裕のある者でダンジョン内を探索しモンスター共を駆逐する。
余裕のあるものは近くのサポートスタッフに言ってくれ。
このダンジョンの情報と適正階層を教えてくれる。
いいか、焦る必要も急ぐ必要はない。
疲労を感じている者は十分休んでからダンジョンに入るように。
それでは解散。」
それを聞いてサトルはパーティー会議を始める。
「皆、体調はどうですか?」
「私は問題ありません。スノーは?」
「私も大丈夫です。」
「私も後衛だったから大丈夫よ。」
「私も魔法の出番はそれほどなかったので魔力は大丈夫です。」
「俺も追跡には参加しなかったから大丈夫だ。」
それを聞いてサトルは判断を下した。
「それなら情報を貰って突入しましょうか。」
そして、スタッフのもとへ行くとちょうどサトルの両親、イクス、リーンがおり、その横にはエリザとローリーがいた。
近づくとこちらに気づき話しかけて来た。
「おおサトルか。お前たちも行くのか。」
「ああ、今情報を聞きに来たところだよ。」
「そう、それならあなた達に私から宿題を出します。」
そう言ったのはスパルタな母である。
「このダンジョンは20階層が最下層よ。そこのダンジョンボスを倒しここを踏破しなさい。」
それを聞いてサトルは表情を曇らせる。
「母さん、俺たちの最大到達階層は10階層だよ。いきなりきつくない。」
「あなた達はここ最近の戦闘でかなりレベルが上がっているはずです。
気づいているでしょ。
あの組織での闘いでもレベルは上がっているはずです。」
「やっぱりあれは気のせいじゃなかったのか。」
「ええ、国はダンジョンでモンスターを倒せばレベルが上がるといっているけどそれは少し違うのよ。ステータスを持つ者を殺した時に経験値が入りレベルが上がるの。」
そして国のトップをしていたエリザも話に加わった。
「そうよサトル。私の国では昔、それを狙って一時期だけど殺人の件数が増えたわ。
政府はそれを重く見て「門」の管理を強化し、故意で行った犯人は秘密裏に死刑にしたわ。」
エリザは昔を思い出すように遠くを見つめる。
「俺たちが若いころもそんなのがいてな、それで俺たちは返り討ちにしてきたから知っているんだ。まあ、今はほとんどの者が知らないだろう。日本は特に殺人の件数が少ないからな。」
「それは分かったよ。で、なんでエリザたちがここにいるんだ?」
「俺たちでパーティーを組んだからに決まってるじゃないか。
俺たち二人は前衛だしイクスは前衛・中衛。
リーンは前衛だ。
丁度遊撃ができる者が欲しかったしローリーは回復職だ。
これでバランスが良くなった。」
「それにエリザさん綺麗でいい人よね。母さん気に入っちゃった。」
そう言いながらエリザを横眼で見る。
(!)
(!)
(!)
(外堀から埋めてきたか。)
それを見て4人の思考に戦慄が走った。
「そ、それでエリザは何か話したの?」
「それは秘密。でも、私も父さんももう決めたの。」
「何を?」
サトルは嫌な予感を感じながら聞き返した。
「あなたのお嫁さんは何人いても気にしないのよ。」
それを聞いて4人が勢いよくエリザを見やる。
それを見てエリザはニコリと微笑んだ。
((((やられた。))))
「サトル。私たちにはイクスやリーンがいるから今回の適正階層は15階層ぐらいよ。
龍斗さん達も下層でモンスターの数を減らすことに重点を置くようだからダンジョンボスは譲ってくれたわ。頑張りなさい。」
そう言って「門」に向かっていった。
「まあ、今は考えてもしょうがない。攻略に集中しよう。」
そしてサトルたちも「門」へ向かう。
サトル達が「門」の前まで行くとそこで龍斗が待っていた。
「待っていたぞ。と言っても今回、用があるのは彩さんだけだがな。」
「何でしょうか?」
「少し遅れたがこれが届いた。今回の探索は何が起きるかわからないから持っていくといい。」
そう言って龍斗は彩に鞘に入った二本の短剣を差し出した。
「やっと完成してね。スタンピードには間に合わなかったが。今からの探索で使ってくれ。」
「ありがとうございます。」
そう言って彩は新しい短剣を受け取り今まで使っていた物と交換した。
「一応説明をしておくと、あの強化素材を使った短剣だ。
鋼に比べかなり硬度が上がっている。
それと、鍛冶師が張り切ってくれてな。
魔力を込めると斬撃強化をしてくれる。
いい出来だから大事に使ってやってくれ。」
「はい。」
そして彩はサトル達と共に「門」を潜っていった。
今回のダンジョンは神殿タイプのようだ。
壁の作りはキッチリしており綺麗な通路が続いている。
だがあの無人島の神殿に比べれば遥かに大きかった。
そして手元の資料によればこの状態が最下層まで続き、階段を降りることで下層へ行けるようだ。
資料には詳細な地図もついており現在地さえ見失わなければ階段までの到達には困らないだろう。
そして進んでいくと時より先行して入っている獣人たちとすれ違った。
「中はどうですか?」
サトルは手をあげて気楽に状況を聞いた。
「今のところあまりモンスターがいませんね。上層階のモンスターはほとんどスタンピードで出てきたのかもしれません。」
「そうですか。ありがとうございます。」
サトルはそう言って先へと進んで行く。
「皆、資料によればここは9階層がオーガ、10階層にオーガソルジャーかメイジがいるみたいだ。そこまで一気に行ってみよう。」
そしてサトルたちはダンジョンを進んでいく。
しかしモンスターはほとんど遭遇することがなく。
10階層へ向かう階段まで来ていた。
「ここからは気を付けていきましょう。」
そして扉をくぐるとそこにはオーガメイジが待ち構えていた。
サトル達は素早く接近していく。
しかしそこでオーガメイジは障壁を張り、魔法を行使し始める。
周りに炎の矢が現れサトルたちに襲い掛かった。
しかしそれを見ていたホロは水の槍を作り出して相殺する。
互いの視界が水蒸気で塞がり位置を見失う。
しかしクロとスノーは優れた耳と鼻でオーガメイジの位置を感じ取り接近に成功した。
スノーは正面から障壁に盾をぶつけ、クロは側面から拳で殴る。
すると障壁にひびが入り始めた。
しかしそれを黙ってみているほぞオーガメイジは甘くない。
今度は風を操り二人を吹き飛ばした。
さらに、その余波で水蒸気が拡散し視界が開け互いに認識できるようになる。
しかし視界が晴れると同時にオーガメイジの障壁は背後から切り裂かれた。
水蒸気に紛れ背後に回っていた彩が短剣に魔力を込めて切り裂いたのだ。
そしてもう片方の短剣でオーガメイジの背中を切り裂く。
しかしメイジとはいえオーガ。
いまだ命を刈り取るまでは至っていない。
そこへ舞の矢が心臓を貫きオーガメイジは杖と魔石を残して光の粒子となり消えていった。
彩は魔石を拾い腰のアイテムボックスへとしまう。
「この短剣、以前使っていたものに比べて格段に強力です。」
彩は予想以上の攻撃力に感心し笑みがこぼれる。
「そうですね。彩さんの攻撃でメイジの障壁を切り裂いたのは初めてですね。」
サトルは初メイジ戦からずっと彩と共に戦っているためその気持ちが分かり一緒に喜ぶ。
「はい、これで少しは攻撃力不足が補えそうです。」
そう言って彩は二本の短剣を腰の鞘に納めた。
「それにしてもやはりと言うべきか、この間のレッサードラゴンに比べるとかなり楽でしたね。」
サトルは腕を組んで舞に話しかけた。
「当然です。階層ボスとダンジョンボスとでは格が違います。それに私たちも、あれから実戦を積んでかなり強くなってますから当然です。」
「そうですね。それでは11階層に下りましょうか。」
そしてサトル達一行は次の階層へ進んでいった。
そしてホロは確認のためにサトルに話しかけた。
「サトルさんこの階層からは何が出ますか?」
「困ったことにケルベロスが出るらしい。」
それを言ってサトルは少し困った顔になる。
「たしかにそれはサトルさんに彩さん、舞さんにはキツイですかね?」
「私は大丈夫ですよ。」
彩は大丈夫らしい。
「私も討伐経験はあるので多分大丈夫です。」
「舞さんは分かりましたが彩さんはどうしてですか。」
「躾はしっかりしないと。」
そう言った時の彩の顔には何処となく凄みを感じる。
それを聞いたスノーは一瞬震えた。
ホロは家で自由奔放に生きているため躾けられたことがほとんどないので平気なようだ。
クロも躾には苦労を掛けなかったのでスノーの反応を見て少し困った顔をしている。
そして歩いていると前方から3つの頭を持った犬。
もとい、ケルベロスが歩いてきた。
陣形はサトルを先頭に左右をスノーとクロで固める。
そして、互いに距離を意識しながら接近していった。
そして、戦闘が始まろうかとする瞬間ケルベロスは彩の目を見た。
いや、見てしまった。
そしてケルベロスの雰囲気が変わる。
尻尾は垂れ下がり足は震え耳もしおれてしまった。
まるでいつかのリーンのようだ。
そして、それを見たサトルが行動に困っていると後ろから彩が話しかけてきた。
「サトルさん、ちょっとこの子とお話をしてみます。もしかしたら意思疎通が効くかもしれません。」
「分かりました。お任せします。」
そして彩はケルベロスに話しかけた。
「あなたは私たちの敵?」
「ガウ、ガウウ」(敵対したのは確かです。でも、助けてください。)
「今は敵意はないのね。」
「ガウ」(当然です。)
「私に従う気はある。」
「ガウガウ」(ボスと呼ばせてもらいます。)
「それはやめて。」
(ガウ)(なら何と呼べば)
「そうね。スノーこの子に私の事を何と呼ばせればいいと思う?」
「主は主と呼ばせればいいと思います。」
「そう、分かったわ。なら主と呼んで。」
「ガウガウ」(分かりました。主)
そして、この階層のみの仲間が加わった。
読んでいただきありがとうございます。




