第四十八話 社員旅行の目的
朝食を食べ終えた頃、龍斗はゲストも含めた全員をホールに呼び集めた。
「全員よく集まってくれた。それではこの社員旅行において最大のイベントを行う。」
そして周りのメイドたちが何やら用紙を配る。
「まず説明をしよう。この島にはひとつ「門」が存在する。そしてここのダンジョンは神殿タイプで階層は一階層のみ。エリア範囲は100メートルといったところじゃ。そして、このダンジョンにはモンスターは出現せん。子供でも案して入れる。」
そう言って次にメイドが龍斗の横にホワイトボードを持ってきた。
「そしてこの神殿の中心に泉がある。そこにうちのメイドのリンダがおるのでそこの泉の水を飲んでくるのじゃ。」
「その水を飲んでも大丈夫ですか?」
「当然じゃ、人によっては今よりも体が健康になるじゃろう。」
「儂も昔少し飲んだことがあるが身も心も若返ったわい。」
「そうですか。それは楽しみです。」
「そうだな、最近腰の調子が悪いから試してみるか。」
皆口々に期待を言葉にする。
「それでは、まずはその場所に案内するから付いてきてくれ。」
そういって龍斗とメイドは皆を案内して「門」へと向かった
そして浜の近くの洞窟に到着し、その中へ入っていく。
壁には電灯が付いており足場も舗装されていた。
みんな安心して洞窟に入っていく。
そして50メートルほど進んだ所に「門」があり、龍斗はいったんその前に止まる。
同行していた数人のメイドが中の確認に向かっているようだ。
「ここがその「門」じゃ今念のために安全を確認しに行かせた。少し待ってくれ。」
そして数分してメイドの一人が出てきて龍斗に安全確認が終わったことを伝える。
「それではみ皆、また付いて来てくれ。」
そういうと龍斗は「門」をくぐる。
そして入った中は大理石でできた美しい建物の中で会った。
一本道が前方に続きその先に大部屋があるだけの簡単なつくり。
みんなが入ってきたことを確認すると龍斗は全員を促して先へと進んだ。
「みな、もう少しで到着するから頑張ってくれ。」
そして到着すると美しい噴水に水が湧いておりその横にリンダが立っていた。
「お待ちしておりました皆様。こちらにコップがあるので順番に並んでお飲みください。」
そして誰から行くのか皆が悩んでいると先頭に立っていた龍斗がコップを受け取りコップに注いだ水を飲みほした。
それに続いて美雪が水を飲む。
「大丈夫じゃろ。」
そして次に前に出たのは銀二と奥さんの華音だった。
2人も躊躇することなく水を飲んだ。
それに続くようにみんなが水を飲んでいった。
龍斗やメイドたちは全員が飲んだか目を光らせ確認している。
そして最後の一人が飲み終えたところで銀二は話し始めた。
「みな、体の調子はどうじゃ?」
「お、腰の痛みが消えたぞ。」
「あら、目がよく見えるようになったわ。」
「俺は肩が上がるようになったぞ。」
皆口々に体の好調を訴えた。
そして一番劇的だったのが。
「私も体の苦しさが無くなったわ。」
華音さんが車椅子から立ち上がり健康を訴えた。
みんなはそれを驚きながらも銀二や華音にお祝いの言葉お送った。
銀二の目には涙が溜まっている。
そしてひとしきり皆が健康状態を確認した後、龍斗は爆弾を投下した。
「そうか皆喜んでくれて嬉しいぞ。しかしな、この水の本当の効力はそれだけではないのじゃ。」
「それはどういうことですか?」
黒田が龍斗に質問する。
「皆が混乱せんように伝えておくがの、この水を飲むとな、若返るんじゃ。」
「龍斗さん、今何と?」
皆が困惑の顔を龍斗に向ける。
「言葉の通りじゃ。一定年齢に達していない者にはただの健康になるだけの水じゃ。じゃから冬花ちゃんなどにはあまり効果はない。もし隠れた病気があればこれで治っとるはずじゃ。じゃが儂やある一定の年齢、すなわち肉体の最盛期である二十歳付近を超えている者が飲むとな。そこまで年齢が若返る。」
「そ、そんな水をなぜ我々に。」
「まず一つは皆が年齢による衰えで会社を去っていくことを避けるためじゃ。これだけ良心的なメンバーはそう簡単には集められん。あと、何人かは気づかんか?これで肉体年齢は皆同い年じゃ。」
「「「!!!」」」
「気づいたようじゃな。これで心置きなくアプローチできるぞ。」
そう言って龍斗は笑う。
そうして話している間にも龍斗の見た目は変わっていく。すでに80の老人ではない。
初老の60歳ほどまで若返っている。
「それにゲストで家族を呼んだのはな、もし夫婦の片方のみ若返ってしまえば分かれがつらくなるじゃろう。年齢で先に逝くのは確実にここに来ていない者じゃ。しかもこの水で病気があっても完治しておるからな。」
そして周りを見ればほとんどの者が20台の若々しい姿になっていた。
龍斗もすでに40代くらいに若返っている。
そしてそこでサトルの父が質問をした。
「それまでに手に入れた技術やレベルはどうなるんだ。」
「それは問題ない。わしが過去に飲んだのは30代のころじゃ。その時持っておった天職、スキル、技能は失われておらん。」
「そして一部の者は職場で何かあるかもしれん。いきなり若返っても信じてもらえんこともあるじゃろう。もし今の職場にいられなくなったら言うがいい。今の待遇以上の条件で我が社が責任をもって受け入れよう。」
たしかに、今ここにいるメンバーでゲストの人たちには自分たちの職場がある。
人によっては20歳以上若返っていることからトラブルは避けられないだろう。
「そしてまだ働きたいものは同じく我が社へ来るといい。儂はその者たちを歓迎する。」
そう言い切ったとき龍斗は二十歳ぐらいの若々しい姿になった。
「それではいったん館に帰ろう。若返って調子が良くなったと言っても体を慣らすのに数日はかかるだろう。滞在日時はまだ今日を含めて6日ある。ゆっくり慣らすといい。」
そして俺たちは館に戻った。
時刻はまだ12時になったばかり。
俺はパーティーのみんなを集めて部屋で話し合いをした。
「みんな、俺たちは実際見た目はそれほど変わらないけど、体に違和感を感じる人はいる?」
「いえ、私は大丈夫そうです」
そう言って彩は双剣を取り出し素振りをする。
「私もこれと言って変化はないですね。」
舞さんも弓を出して弦を引いて確認している。
「スノーとクロはどうだ。」
「私は進化して日が浅いので変化は全くありません。」
「俺は若干だが体が軽くなった気がする程度だ。」
「実際俺もその程度だ。」
「まあ若返ったのはいいことですよ。」
「そうそう、人生やり直しなんてそうそうできませんよ。」
2人は凄く嬉しそうにこちらを見てくる。
横でホロもなんだか嬉しそうだ。
「たしかにね。それなら俺たちはこの旅行を楽しもうか。」
俺たちはこれからの数日の方針を決め今日はのんびり過ごすことに決めた。
明日はみんなで海で海水浴だ。
そして部屋でのんびりしているとサトルの部屋に両親とイクスがやってきた。
「どうしたの?」
「さとる、俺たちは今後について話し合った。それで一つ聞くが、お前から見て龍斗さんは信用に足る人物か?」
「まあ、今回の事で分かると思うけど時々ぶっ飛んだことする人だよ。でも、信用は出来る。」
「そうか、それなら俺たちもお前の会社に入ることにした。」
「年金はどうするの?」
「この姿で年金がもらえると思うか?」
「たしかに、それは無理だね。」
「そうだろ。また稼がなければな。まあ、お前の所の会社は俺たちに合っていそうだから楽しくなりそうだ。それじゃ、今から話に行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
「あ、どうしましょ。」
「どうしたの母さん?」
「まさか若返るとは思ってなかったから水着持ってきてないわ。」
「「「・・・・・」」」
「そのへんも相談してみたら。」
そして三人は龍斗さんのもとへ向かった。
(せっかく年金暮らしになったのにな。でも年金も受給額がどんどん減ってるからちょうどいいのかな。)
そして夜になり彩さん、舞さん、ホロが部屋にやってきた。
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