第二十八話 ボランティアと試験
次の日の朝、彩さんと家で待ち合わせをして出かけようとしたところで両親から呼び止められた。
「サトル、ボランティアに行くらしいな。」
「私たちもそこに参加するわ。」
「いいけど大丈夫?」
「鍛えておるからな、大丈夫だ。」
「分かった、準備は出来てるみたいだから一緒に行こう。」
「それでそれは?」
「ホロとイクスが毎日お留守番だと可哀そうよ。ダメかしら?」
「蚊、ノミなどの虫よけ対策は?」
「もちろんバッチリよ」
「よし、連れて行こう。反対の余地なし。」
そして家族総出で参加することになった。
(龍斗さんの知り合いなら犬は好きだろうし。それにみんなの反応も見られて一石三鳥。)
そして彩とスノーを含めた5人と2匹で現地に向かう。といっても実は実家からかなり近い普通の人でも歩いて1時間かからない。そして鍛えているという両親の言葉は真実だったようだ。現地までランニングで止まることなく到着できた。
(でも一番の驚きはホロとイクスが付いてこれたことだな。あんなに体力あったかな?)
そして到着すると龍斗はすでに到着しており、奥さんと一緒にお茶を飲んでいた。
「おはようございます龍斗さん、それと~」
「私は龍斗の妻で美雪です。先日はありがとうございまし。」
「いえいえ構いませんよ。」
「それでそちらのかわいいワンちゃんとお二人は?」
「こちらはうちの愛犬のホロとイクスです。そしてこの二人は両親です。ボランティアに行くと言ったら付いてきてしまって。」
「それは構わんよ。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。奥様は見学ですか?」
「ええ、恥ずかしながら昔のような体力がなくて。」
「それならすみませんがホロとイクスを見ていてもらっていいですか?躾けてますので手はかからないので。」
「いいですよ」
そう言って父はリードを外す。
「ホロ、イクスあの人の近くにいなさい。」
「ワウ」
たたたた ピタ スリスリ
(さっそく懐いてるな。)
「あら可愛いだけでなくてお利口なのね。ここまでで喉が渇いたでしょ。ここのお水はおいしいのよ。」
そういうとホロとイクスに水を上げる。
(てなれてるな~)
そうしているうちに他のメンバーが集まってきた。
「お、ここみたいだな。」
「おはようございます。」
「こんなところがあったのか、初めて知った。」
3人ともそれぞれの反応を示しながらやってきた。
「おはよう、今回のボランティアをお願いした草薙です。どうぞよろしく。」
「「「よろしくお願いします」」」
「もう何人か来る予定なので少し待っていてくれ。来たら声をかけるから。」
「分かりました。」
そして三人は当然ホロとイクスの所へ向かう。この3人はかなりの犬好きなのだ。
「俺の所は子供が自立したからそろそろ犬飼うかな。妻も犬好きだし。」
「俺の所は子供が生まれたばかりだからな。でも躾がしてあれば大丈夫か?」
「でも躾が最初から出来てる犬って滅多にいないぞ。俺は留守番が大丈夫な犬ならいいな。仕事で家を空けること多いし。まあ、今は無職だけど。」
(ある程度の躾なら彩さんに任せれば一発だな)
「お、また一人来たようじゃな。」
「あれ、あの人見た事あるような・・・」
「あの者は儂が呼んだ。」
「お、サトル、それに山に北に松までお前たちも来たのか。」
そう、彼は俺たちが働いていた工場の社長だ。
「社長はあの人とお知り合いだったのですか?」
「ああ、昨日知り合ってなこの寺の事を聞いたのだ。私もこの寺にはよく世話になったからな。」
「そうだったのですか。」
「おお、ホロにイクスではないか久しぶりだな。」
そして社長も犬好きだ。時々散歩で会うのでこうして俺は社長と仲良くなっている。
飼ってるのはコーギーと名前は一緒だがうちの子はペンブローク。
社長はカーディガンを飼っている。この二種類は姿は似ているが別の犬種とされている。
そしてうちの子は社長が大好きだ。いつも美味しいおやつを貰っているからだろう。尻尾の振り方がハンパない。
そして、最後の二人がやってきた。
「「おはようございます。」」
「おはよう。私は草薙というものです。この度はよろしくお願いします。
「はい、こちらこそ」
「皆さん集まってください。それでは説明します。」
「道具はこちらで準備しましたが見てのとうりの場所ですべて手作業となります。大変でしょうが頑張ってください。」
そしてここの住職と娘さんがちょうど奥からやってきた。
「皆さん、今日は集まっていただいてありがとうございます。こちらは私の娘のサクラです。ともに作業を頑張りますのでよろしくお願いします。」
そして作業が開始された。
たとえ重機がなくても俺と彩さんのステータスなら土を掘り起こすのは簡単だ。
龍斗さんは水が溜まらないようにポンプを作動させ補佐してくれている。
女性陣は土嚢袋に土を入れ、それを男性陣が運んでいる。
実際、土嚢を運ぶのが一番早いのが俺の父だったりする。
これには驚いた。
そして昼になり休憩を取ることとなった。
そこで住職はこの寺について語った。
ここは初代住職が修行をした地に寺を建てたのだそうだ。
住職は周りの人を守ることを生涯の目標とし第二次世界大戦で軍にも志願したそうだ。
しかし身体的な制限で弾かれてしまい出兵できなかったという。
それならばと住職はこの町が見渡せるこの場所にいつまでも町を見守れる巨大な石の仏像を彫ろうとしたそうだ。
しかし、彫り終わる前に寿命が来てしまい現在未完成なままだという。そしてこの境内には初代住職が彫った神像が何体も置かれているとのことだった。
「自分たちで完成させようとは思わないのですか?」
「私には無理ですね。結構年ですから。でも娘は完成させたいそうです。」
「私の夢はその仏像を完成させることです。そのためのレベルアップにも励んでいます。」
「お一人で頑張っているんですか?」
それを聞いて松さんが質問をする。
「ええ、あいにく組む人がいなくて。」
「すみませんがレベルを聞いてもいいですか?」
「ええ、この間やっと7に上がりました。」
「良ければですが俺とパーティーを組んでもらえませんか?俺は今8です。」
「いいんですか?」
「お願いします。」
「わかりました。後で連絡先を交換しましょう。」
(ん~何かの予感?)
そして午後からの作業が開始された。作業の流れは一緒だが皆慣れてきたのか午前中よりも作業が順調に進み、その日のうちに土砂の除去は終了した。
これでしばらくは大丈夫そうだ。
未完とはいえ大仏とともにこの町を災害から守ってくれるだろう。
男性陣で片付けをして戻ると彩さんの呼んだ二人がホロとイクスのお腹をさすっていた。ちょっと見ないうちに打ち解けたようだ。
それになかなか時間が取れず撫でたくてウズウズしていたらしい。さすが彩さんの連れてきた人だ。
そしてよく見るとサクラさんもちゃんと混ざっていた。
どうやらここには犬好き猫好きしかいないようだ。そのため話題には事欠かない。
それを見て俺は龍斗さんに小声で話しかける。
「どうでしたか?」
「どの者も性格などに問題なさそうじゃ採用するかは後で個人ごとに聞いてみよう。連絡先は控えておるから、あとは本人次第じゃな。」
「よろしくお願いします」
「いやいや、こちらとしてもフリーのいい人材を見つけられて助かる。可能ならサクラにも話を持っていきたいのう。これは住職と相談じゃな。」
そしてこの日は解散となる。
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