第二十二話 脱出と二人の思い
移動中サトルは銀二に話しかけた。
「娘さんが二人の事を心配していましたよ。」
「娘夫婦は無事だったのだな。安心した。」
「それにしても人より動物が多いですね。」
「それも後で説明するがあの時は時間がなくてな。あたりかまわず儂のスキルを発動したためこうなった。」
「ということはあなたも天職を持っているんですね。」
「お前さんもか?」
「俺と彼女はまだとりたてだすが。」
「そうか、儂はかなり前になる。今回の礼に後で少しスキルについて教えてやろう。あそこの嬢ちゃんと一緒に来なさい。」
「ありがとうございます。」
そして出口まで半分ほど来たところで異変が起きる。
「周囲警戒」
獣人の青年が大声で警戒を促す。
どうやらモンスターの匂いをかぎ取ったようだ。
「あいつは長年の儂の相棒じゃ。このダンジョンにも詳しい。」
そして銀二は周りに指示を出す。
「村の皆は中央に集まれ。戦える者で周りを囲み戦闘を行う。クロ、どの方向からじゃ。」
「おそらく囲まれている」
今歩いているのは背丈ほどの草に左右を囲まれた道のようなところ。
見通しが効きにくく待ち伏せされやすい。
「しかし姿が全く見えないのはどういうことですか?」
サトルは銀二に疑問を投げかける。
「おそらく虎だろう。奴らはひそむのがうまい。ここは儂がやろう」
そう言い銀二は動物たちの中にいる鳥を数羽、手元に呼び寄せ見つめる。
おそらく意思疎通で指示を出しているのだろう。
そして鳥を放ち上空から偵察される。
(さすがベテランの人だスキルを使いこなしてる。)
そして銀二は偵察の結果を言う。
「やはり虎に囲まれている。数は5匹。強さ自体は熊と同じくらい。しかし連携をして襲ってくるから注意してくれ。」
「分かりました。」
「そろそろ襲ってきそうじゃな。」
そして、その直後草をかき分けて虎が一斉に襲い掛かって来た。
スノー、霧島、クロ、サトル、彩がターゲットのようだ。
全員が問題なく攻撃をさばき虎に止めを刺していく。
「さすがじゃな。お、肉がドロップしたぞ。しかし虎肉は味はいいが硬い、儂らはあまり食えんな。」
「犬用にはよさそうですね。」
「そうじゃなクロの好物の一つじゃ。」
「やっぱりそうですか。ははは」
「どうじゃ犬の娘さん、持って帰るかね。」
「いただきます♪♪♪」
「元気な娘さんじゃ」
その後は戦闘もなく全員脱出に成功した。
どうやら先の道草が思わぬところでいい結果につながったようだ。
村は悲しみに沈んでいたが生存者が発見されたことが伝わると多くの人は喜びの顔に変わった。
そして昨日の夫婦は息子を胸に喜びに泣いていた。
そんな中俺たちはテントで銀二さんと話をしていた。
「それで、どうして避難が間に合ったのですか?」
「うむ、それほど難しい事ではない。あの大雨の中クロが嫌な感じがするといってな。」
「たしかに動物には人間にはない危機察知能力がある。」
「直後、儂は何年か前の土砂崩れを思い出し危機感を感じたわけじゃ。そして山にある砂防堤をみて確信に変わった。しかし家から避難していたのでは間に合わんかもしれん。それに周りにはまだ避難していない者もおるじゃろうと考えた。儂の意思疎通は範囲内の任意の者に対して送ることが出来る。それを利用し範囲いっぱいにダンジョンに逃げ込めと告げたのじゃ。これにより人間から動物までがあれだけ逃げ込み助かったという事じゃ」
「そう言う事でしたか。あれだけの土砂崩れでしたからその判断は正しかったのかもしれませんね。」
「まあ、偶然じゃがな。まさか外に出れなくなるとは思わなんだ。」
「しかしそのおかげで多くの命が助かりました。これはしっかり上に報告します。場所にもよりますがダンジョンが非常時の避難場所としても認識されるようになるかもしれません」
「そうか、まあ好きにしてくれ。儂は命があっただけで今回は満足じゃ。」
「それじゃ、クロ行くぞ。」
「はい。」
(スノー話しかけなくてもいいの?)
(いえ、まだ心の準備が・・・)
(そんなに長く滞在はしないのよ、それは分かってね。)
(はい。)
霧島は今度はサトルたちに話しかける
「この度の捜索活動の支援、誠に感謝する。こちらでのあなた達の仕事は終わったがどうするね?」
「そうですね・・・。彩さんと舞さんはどうしますか?」
「私は1週間はお休みですが帰ってもいいですよ。」
「私は問題ありませんが・・・。スノーはいいの?」
「・・・帰ります。」
スノーは悩んだ末帰ると告げた。
しかし彩が割って入る。
「サトルさん明日一日だけでも滞在しませんか?。」
「何かありましたか?」
「・・・スノーのためです。後で話します。」
「分かりました。霧島さんもう少しあの部屋を借りてもいいですか?」
「かまわない。今回の最大の功労者だからだれも文句など言わん。」
「ありがとうございます。」
その後、霧島と別れ彼らは借りている部屋で話を始めた。
「実はスノーが獣人のクロさんに一目ぼれしたみたいで。」
「そうなのか?」
スノーは恥ずかしいのか犬の姿になり頭に布団をかぶり隠れているが尻尾を見ればそれが真実であると告げていた。
(頭隠して尻隠さずってところかな。)
「それなら仕方ないな明日1日ぐらいなら問題ないからいいよ。」
「それに銀二さんが少しスキルについて教えてくれるらしいからちょうどいいよ。」
そう言って一行は滞在することを決めた。
そして銀二にスキルについては明日聞きに行くと伝えると。
「おお、そうか明日は食料調達でダンジョンに入る。許可は取ってあるのでついでじゃから手伝ってくれ。」
「分かりました。お願いします。」
「まあそう固くならんでもいい。それにクロも張り切るじゃろう。」
「クロはどうかしたんですか?」
「いやの、どうやらクロの奴そちらの白い・・・スノーじゃったかな。一目ぼれしたらしくての。」
「え、そうなんですか?」
「そうなんじゃ初恋らしくてのかなり戸惑っておる。獣人はそうおらんからの」
「そうですか。」
「すみません、少し時間をいただけますか?」
サトルは銀二を連れて彩のところに向かい。彩と舞を呼び出し今後についてもう一度話し合う。
「そうか、そちらも一目ぼれか。」
「はい、スノーは獣人になって日が浅いので戸惑っていますが。」
「そうじゃの・・・。それなら明日の食料調達はいいきっかけになるかもしれん。互いに元々は犬であるのじゃから共に狩りをしていれば群れとしての意識が芽生えて進展するかもしれん。これはちょっと強いモンスターでも仕留めに行くか。」
「少し心配ですがこのメンバーならある程度は大丈夫でしょう。」
そして明日の予定が決まり解散となった。
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