第十二話 万能薬
俺たちはその後も一匹だけのオークを探しては狩っていきレベルも上がった事で戦闘は楽になった。
しかしメイジを狩るには至っていない。
能力的に完全な後衛職だからか必ず2匹以上で行動しているからだ。しかし時間はすでに深夜に差しかかり帰還時間も考えれば時間の猶予はなかった。
「水木さんスノーの強化は試したことありますか?」
「いえ、まだです。」
「次の戦闘で少し試してみませんか?そろそろオークメイジを狩っていかなければ時間がありません。」
「分かりました。それでは試してみます。」
俺たちはまず一匹のオークを探し戦闘を開始した。
そして戦闘は驚くほどあっけなく終わってしまった。
まず水木さんはスノーを強化した。そしてなんと強化率はMAXの50%だった。
その上昇したステータスで瞬く間に接近しオークの首をへし折った。
結果だけ見ればとてつもない事だがどうやら体力消費が激しいらしい。長時間は使えないだろう。
スノーに体力回復薬を与え少し休憩する。
その間に水木さんと作戦会議だ。
「スノーは体力の消費が激しいようですが大丈夫ですか?」
「はい、おそらく強化に体がなじんでないからだと言っています。」
「しかし今回は慣らしの時間は取れませんのでここぞという時に使用しましょう。」
「そうですね。それではオークとオークメイジの二体の組を探してオークをスノーに倒してもらい私たちでメイジを倒すというのは?」
「今はそれしかないですね。それでいきましょう。スノーには無理をさせる事になりそうですね。」
「後でA5のお肉で労ってあげましょう。」
「そうですね。」
「それとそろそろ苗字はやめませんか?サトルさん」
いきなり名前で呼ばれてちょっと動揺してしまう。
「いいんですか?」
「いいんです。」
「それでは改めて彩さん頑張りましょう」
「はい」
そしてお目当てのオークの組を発見した。
タイミングを計りスノーを強化する。
スノーは全力でオークに飛び掛かり光の粒子に変えた。
そして退避、スノーには丸薬を飲ませ後方を警戒してもらう。
そして俺たちはオークメイジとの初戦闘を開始した。
まずは俺から行動を起こす。右手には剣ではなく石が握られておりそれを投げつけた。
5階層でコボルトメイジはシールドを張っていた。こいつもその可能性があるからだ。
案の定投げた石は空中で壁に弾かれてしまう。
オークメイジは笑う。
(メイジはシールドで攻撃を防ぐと笑う習性でもあるのか?)
まあいい、これで行動は決まった。
俺は剣を抜き盾を前に構え突進した。
オークは何やら呪文を唱え空中に炎の球を作り出している。そしてそれをこちらに放つ。
しかし俺は止まらないしよけない俺の後ろには彩さんがいる。
俺は盾で魔法に突撃した。かなりの熱と衝撃が俺を襲う。
しかし耐えられる。俺はさらに突撃しその勢いのまま剣で切りつけた。
ビキ
オークメイジののシールドにひびが入る。やはりコボルトメイジの物よりかたい。
しかしもう一歩だ。
次の魔法攻撃が来る前に俺は盾を使いひびの入ってる部分に体当たりを食らわせた。
そしてその瞬間、魔法のシールドは砕け散った。
だが俺はオークメイジに大きな隙をさらしてしまう。
オークメイジは愉悦にゆがんだ顔で俺に炎の魔法を放とうとしていた。
しかし俺は焦らない。
なぜなら奴の後ろにはすでに彩さんが回り込んでいた。
そう、おれが盾で魔法を防いだのは目くらましだ。その爆炎と煙にまぎれ彼女は奴の後ろに回り込み隙を狙っていた。そしてシールドが破壊された瞬間に彼女は動いた。
そして愉悦にゆがむ奴の目に一突き、そして喉を切り裂き止めを刺した。
オークメイジは光の粒子にに変わりそこには杖と青いポーションが残された。
「はーーー危なかった。さすが彩さんですね。」
「いえいえ、こちらは止めを刺すだけの簡単なお仕事ですから。それに私の攻撃ではあのシールドは突破できません。」
そして少し休んでいるとスノーが近づいてくる。
スノーも褒めてほしいのだろう。彩さんに甘えるように顔を擦り付けている。
「はいはい、スノーも頑張ったねー。」(モフモフ)
(ああ、俺も早く家の愛犬をモフりたい)
「でもやっぱりというか一回で出ませんね」
情報によれば万能薬は血のような赤色。
今ドロップしたのは何級かは不明だがポーションに間違いないだろう。
俺はそれをカバンに仕舞ながら杖のもとへ。
これは戦闘の邪魔になるために持ってはいけない。しかし置いてもいけないため剣で切りつけ破壊した。
そして次の相手を探して進むこと数分。すぐに相手を見つけることができた。
二匹のオークとオークメイジ
しかしここにきて見つけたオークに警戒をする。
見つけたオークは通常とは異なる特徴をしていた。
体は一回り大きく通常ピンク色の体だがこのオークは赤黒い、どう見ても異常だ。
俺たちは道を引き返し相談する。
「あれどう見ても異常種ですよね。」
そう異常種だ。
異常種とは通常、同族殺しをしないダンジョンのモンスターが同族を殺してレベルを上げて変化してしまったモンスター。
危険度がかなり高い。というより俺たちでは危険かもしれない。
しかし探索においては邪魔な存在だ。
「彩さんどうします?」
「私は・・・倒せると思います。」
「・・・・」
「うまくいけばですが。それにスノーにも無理をしてもらいます。」
「分かりました。奴がいると探索が進まない。それで作戦は」
「私が一人で異常種を引き付けます。その間にメイジをお願いします。」
「それは危険では?」
「かなりの危険がありますが私は敏捷の数値が高いので何とか逃げ回って時間を稼ぎます。早く助けに来てくださいね。」
「・・・分かりました。」
(この人ホントに強いな~)
「スノー今回は休ませてあげられない。あなたも頑張ってね。」
「ワウ」
そして俺達は異常種に挑む準備を始めた。彩さんは最初から投げナイフに猛毒を塗っている。
スノーな体力を万全にするため丸薬を飲み体力を回復し、長い体毛に丸薬をくくりつけている。
俺も今回だけは鋼の剣ではなく二回りは大きいバスターソードだ。先ほどの手応えからしてこいつなら一撃でシールドを壊せる。
そして俺たちは奴の前に立った。
すると奴は巨大な咆哮をあげる。
ただの雄たけびのようだが巨大な声に一瞬身がすくむ。
その俺たちの隙をつきメイジは呪文を唱えた。しかし攻撃のためではない。
異常種の体が何やら光っている。
そして奴は動き出した。
「早い」
声には驚きが混じりそれを聞いた異常種は
(ニヤリ)
笑っていた。しかし作戦は変えられない俺たちは動き出した。
スノーに強化をかけ俺も全力で走る。
しかし変だ攻撃がない。
先ほどはすぐに呪文を唱え攻撃してきたのに。
見るとオークメイジは震えていた。
どうやらこいつも異常種が怖く無理やり従わされているのだろう。
(しかし手加減は出来ない)
俺はバスターソードを全力で振り下ろしシールドを破壊した。
そしてその瞬間にスノーがメイジの首を折り光の粒子に変える。
そして俺たちは彩さんのもとへ向かうべく振り返った。
そこで見たものはすでに満身創痍となっている彼女の姿だった。俺たちは急いだ。
そして彼女の傍に着いた時、彼女は意識を手放した。
そのとたんにスノーの強化が消えた。
ステータスが下がったスノーでは異常種の相手は出来ない。
俺は一人で戦うことを決めた。
「スノー、彩さんを連れて下がっていてくれ。」
スノーに指示を出し下がらせる。
悔しそうだが契約したことで知能が上がっているのか素直に指示に従ってくれた。
そして目の前には剣を構えたオークの巨体がある。
だが俺たちがメイジを倒したからなのか体から光が消えている。
そして彩さんはこのオークに一矢報いたようだ。
奴の足には猛毒のナイフが刺さっている。
この巨体にどこまで効くかは分からないが無いよりはましだ。
そしてスノーが離れ一対一になった時、奴は口に笑みを浮かべ切りかかってきた。
俺はそれをギリギリで躱す。
(早い、しかも今までのオークと違い隙が無い)
俺はまず時間を稼ぐために攻撃をかわすことに専念する。
しかしすべてをかわし切ることは出来ず剣で受け盾でいなす。
それだけで体力は奪われ体は悲鳴を上げる。
そしてとうとうこちらの剣に限界が来たようだ。
奴も同じような剣を装備しているのに刃こぼれすらしていない。
どうやら奴の剣は特別製のようだ。
そして奴の剣をいなし続けた結果。
中ほどから見事に折れてしまった。
俺は折れた剣を投げつけその隙にいつも使っている鋼の剣を引き抜きかまえる。
(まずいな。体力はともかく剣はこれしかない・・・。)
時を置かずに奴は再び切りつけてくる。
だが先ほどまでの勢いがない事に気づく。
どうやらやっと毒が回ってきているようだ。
攻撃を回避するのに夢中で気づかなかったが傷口が紫色になっていた。
(後はどちらが先に限界が来るのが早いかだな。)
俺は引くわけにはいかない後ろには彩さんがいる。
俺の死は俺一人の死では済まない。
俺は剣と盾を構え一歩踏み出す。
そして攻勢に出ることを決めた。
相手の動きは鈍くなってきている。
相手の剣を盾でいなし剣で少しでも傷をつける。
少しでも相手の体力を削る。
(恐らく我慢比べになれば俺の体力も剣も持たないだろう)
そしてとうとう俺の剣は異常種の体をとらえ大きな切り傷を刻む。
だが未だ倒れない異常種。
それどころか何やら構えをとっている。
(何をするつもりだ)
そう考えた直後、奴はこちらに捨て身ともとれる突進をしてきた。
避けることのできない俺は盾を前に構え防御の構えをとり衝撃に備える。
そして奴との衝突まであと5歩という所で俺の横を白い影が異常種に飛び掛かる。
スノーだ。
スノーはその体を武器にして異常種にぶつかりその勢いを鈍らせた。
運のいいことに異常種はその突進に対応できなかったようだ。
もし奴が通常の状態なら手に持つ剣により切り捨てられていてもおかしくはない。
俺はこの隙を逃すわけには行かない。
おそらくラストチャンスだろう。
そして俺は剣を刺突に構え奴の胸、心臓を突き刺した。
その衝撃で俺の鋼の剣は折れてしまい武器を失ってしまう。
俺は警戒を解かず柄だけになった剣と盾を持ち立ち上げる。
そしてなんと異常種も立ち上がった。
しかし奴はこちらを向き地面に剣を突きさすと光の粒子となり消えていった。
残ったものは3つ。
剣、魔石、そして万能薬と思しき血のように赤い液体の入った薬瓶であった。
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