第百十三話 動物ふれあいパーク ③
それを見た途端、龍斗は怒りのあまり威圧が漏れる。
園長とスタッフはその威圧に恐怖し、その場に尻餅をつき冷や汗を流した。
サトル達は急いで生きている動物たちを連れ出し、取り出した毛布の上に寝かせていく。
シドは薬師として動物たちの状態を確認して指示を出した。
そして、サトル達はそのあまりの多さに顔を歪める。
最終的にラット達は全滅。
猫は生きている者が200匹ほど。
犬は500匹ほど。
死亡している者は白骨化している者から腐りかけまで合わせると数えるのは不可能なくらいにいる。
それでもここにいる霊の数には全く足りない。
恐らく焼いて、園内のどこかに埋めてあるのだろう。
そのあまりの多さにサトル達は手持ちのポーションが足りない事を悔やみ顔を歪める。
「龍斗さん。ポーションが足りません。まだ半数以上が死にかけています。」
サトルは龍斗に訴えるが彼にもない物は作りだせない。
その時シドが声をかけた。
「皆さん、何か薬の材料はありませんか?僕が薬を作ります。」
それを聞いて先日、弥生に貰った世界樹の葉をサトルは取り出した。
サトルはそれをシドに渡しこれが材料にならないか聞いた。
その材料を見た時、シドは目を見開いて驚愕する。
「本当にこれを使ってもいいのですか?」
その言葉に首を横に振る者はこの場にはいなかった。
シドはそれを見て即座にアイテムボックスから錬成釜を取り出し魔法でかまどを作る。
その上に釜を乗せるとかまどに火を焚き、葉と魔法で作った水を入れて混ぜ始めた。
そして、魔力を込めながら混ぜていくと、次第に葉が砕けてペースト状になって行く。
そこまで混ぜると今度は再びアイテムボックスから何やら肉片を取りし釜に加える。
すると釜からの魔力が増大してった。
シドはさらに水を加え、最後に{錬成}と唱えると釜の中身は見事な液状の何かに代わった。
「世界樹の雫が出来ました。すみません。これを作るのに世界樹の葉を100枚も使ってしまいました。しかし、これで助かるはずです。」
そしてシドは全員に再び指示を出す。
「これを彼らに数滴、垂らしてください。それで完全に治るはずです。
ただここの動物たちは先天的病気を持っているようです。
この薬だと完全には治らないですがほぼ治るはずです。
完全な治療は命を助けてから後日行います。」
その指示によりサトル達はシドが出したスポイドを使い全ての動物に世界樹の雫を垂らしていく。
するとその体に劇的な変化が現れた。
生まれついて目のない者は初めて世界を目にした。
足がおかしな方向に生えていた者はその位置が正常に戻り自分の足で大地に立った。
皮膚がボロボロの者はその痛みから解放され毛並みが生え揃った。
生まれついて臓器が不調な者は初めてその苦しみから解放された。
ここに放置されていた者に奇形の者も多い。
おそらくは度重なる無理な繁殖により奇形で生まれたり病気を持って生まれた者がこの中に放置されているのだろう。
そして彼らは、ここに捨てられ死を待つだけの存在となっていたようだ。
生きていたのが奇跡と言っても過言ではない。
そして、正常に生まれた者だけが人々から愛情を受ける。
だが、彼らも病気や体の不調で元気がなくなるとここに捨てられていたのだろう。
この中には奇形でない者も多く含まれている。
サトル達は命の危機が無くなった事でいったんの落ち着きを見せる。
だがここで園長が立ち上がり笑いだした。
「はははは。ご苦労だったな。証拠も消してもらっただけでなく治療までしてくれて。これでしばらくこの仕事を続けられる。」
その言葉を聞いて一人の人物が前へ出た。
「そんな事は私が許さん、ここの事はしっかり見させてもらった。ここの営業許可は取り消し。動物たちは適切な施設で保護させてもらう。」
その言葉に再び園長は笑い始める。
「はははは。証拠も消え、たかが監査の人間い何ができるというのだ。」
すると、その男は初めて園長の前で帽子を取りその顔を彼に晒す。
「私はこの県の知事として全力で各機関に働きかける。それにこんな事もあろうかとすでに書類は揃えてある。」
知事は園長に告げると懐から新たに書類を取り出した。
そこには園内の動物が不当に扱われている場合は営業を禁止し、全ての動物をこちらの指定した施設で保護する内容の文章が記載されていた。
「そんな不当な事が許されるはずはない。」
園長はその内容に激怒し怒鳴りつける。
だが、龍斗は冷たい声と目で園長に告げた。
「これが何だかわかるか?」
龍斗は自分の胸ポケットから少しはみ出している手帳を指さした。
園長は龍斗のその言葉を聞いて手帳を見る。
するとそれは手帳に似せた箱でそこには小さな穴が開いていた。
それに気づくと園長は顔を青くして行く。
「も、もしや、隠しカメラか?」
園長は自分が考え付く最悪の答えを呟いた。
「その通りだ。しかもこの映像は常にテレビ局に送信中だ。予定では今日中には全国に放送される。これを見て知事の判断に不当のレッテルを張れる者がどれだけ世間にいるのか楽しみだ。」
そう言って龍斗は園長に暗い笑みを向ける。
それを聞いて園長は諦めてその場に座り込んだ。
しかし、この事件はここで終わりではない。ここには救わなくてはならない霊たちが何千といるのだ。
「ちなみにお前に言っておくがな。」
龍斗は園長に近づき見下ろしながら告げる。
「お前が殺して来た動物たちにお前は祟られているぞ。おそらくこのままではそう長くないだろうな。」
だが園長はその言葉を鼻で笑う。
「フン、何をバカな事を言っている。そんな物いるわけないだろう。俺はこんな奴に潰されたのか。」
龍斗は親切で教えたつもりだったが園長はその言葉をまったく信じていないようだ。
すると今度はシドが園長に近づいて何やら薬を渡した。
「それは一時的に目を強化してくれる薬だよ。それを飲めばきっと今の自分の姿が見えるよ。」
園長は最初はシドを怪しんだが最近の体の不調の事もあり試しに飲んでみることにした。
彼には既に破滅する人生が待っているため怖い物は少ない。
園長は薬を飲んで自分の体を確認する。
「ははは。なんだ、やはり嘘か。俺は騙されん・・・。」
園長は言葉を途中で止めた。
そしていま一度自分の体を確認しその顔を恐怖に染める。
「な、なんだこれは。くそ、触れん。そうか。これは幻覚だなさっきの薬は幻覚剤か。」
そう言った時、園長は初めて周りにも目を向ける。
そしてその光景に絶句し目を見開いた。
その目に映る光景には動物たちの霊が溢れていた。
そしてその中には見覚えのあれ者も混ざっている。
園長はその姿に顔を恐怖で歪め倒れたまま後ずさりを始めた。
「どうした。見覚えのある者でもいたか?」
その言葉と共に龍斗は園長の視線の先を見る。
そこにはなぜかこのパークの服を着た人の霊が立っていた。
「どうしてお前までここにいるんだ。」
その言葉を聞いて男の霊は園長に近づいて怨嗟の声を上げる。
{お前が殺して裏山に埋めたからだろ。あれ以来俺はずっとここにいる。そして、お前の行いを見続けてきた。}
男の霊は涙を流しその顔は憎しみに歪んでいる。
龍斗はその霊に近づき語り掛けた。
「それで、お前はどうしたいのだ?」
その声に反応し霊は龍斗へ視線を移す
{俺はこいつらを助けたい。俺はこのパークに来てすぐにこの惨状に気付いた。俺はその証拠をもって警察に向かおうとした所をそこの園長に殺されたんだ。しかし、俺は死んだことは恨んでいない。死んだからこそ出来る事もあったからな。}
男の霊はそう言って周りの動物霊を撫でる。
すると撫でられた霊はそこに一時の安らぎを得たように穏やかになった。
{だがこれも一時しのぎだ。すでに彼らの怒りも限界に来ている。このままでは被害が出るのも時間の問題だ。}
そう言って男の霊は背中を向け離れていく。
おそらく他の場所を鎮めに行ったのだろう。
「それで、お前の罪が一つ増えたのは後で考えるとしよう。それで彼の遺体は何処に埋めたのだ?」
その質問に園長は顔を青ざめて叫んだ。
「俺は何も知らん。言いがかりはやめろ。あいつが勝手に言ってるだけじゃないか。」
「そうか。ならこちらで探そう。彩さん。出来そうか?」
そして龍斗は彩へと視線を向け問いかけた。
彩は無言で周りを見回す。
すると数匹の犬や猫の霊が近づいて来て彩を見つめた。
「この子達が全て見ていたようです。遺体を埋める場所もその凶器が隠される場所も。」
その言葉に園長は顔色が更に悪くなり再び叫んだ。
「嘘を言うな。そいつらは何も話していないではないか。そうか、これは俺をおとしいれるための罠だな。」
「それなら証拠を探しに行こうか。彩さん凶器は何処にある。」
その言葉に彩は視線を目の前の建物に向ける。
「この建物の基礎に埋め込まれたようです。」
「それだと取り出すのは無理か?」
龍斗はワザと落胆した顔で建物を見る。
すると、その答えに園長は若干口元を吊り上げた。
「何を言っているんだ。最初から無い物を探しても意味がない事だ。」
だが実際の所、龍斗達は誰もその事が不可能だと思っている者はいなかった。
彩は美雪に近づき一緒に建物へと入って行く。
そして、数分が二人は鉄パイプを手に持って出てきた。
その鉄パイプを見て園長は表情を凍り付かせ動きを止める。
「あったわよ。」
美雪は軽い声で鉄パイプを布で掴んで持ってくる。
そして、それを知事へと渡した。
それを見て知事は110番に連絡し警察を手配し園長へと突きつける。
「それで、遺体は何処だ。」
知事の声には既に温もりはない。
その目にはこれらの事件に対しての深い悲しみと怒りが渦巻いていた。
それを見て園長は観念したのか自供し始めた。
「遺体の場所は裏山に埋めた事以外は忘れた。あの時は無我夢中だったのだ。」
その答えに知事は顔を歪めるが彩がすかさず答える。
「遺体の位置はこの子達が知っているので問題はありません。」
それだけ答えると彩は黙り知事へと頷いた。
知事も頷きで返し、龍斗へと視線を移す。
「龍斗さん。後はこの霊達だがどうする。」
その質問に龍斗は悩み、考え始める。
だがここまでの規模では鎮めるのも一苦労だろう。
南一人では確実に手がたちない。
龍斗は仕方なくサトルへ視線を向ける。
「サトル、精霊たちに何かアドバイスがないか聞いてみてくれないか?この規模ではいい考えが浮かばん。消滅させるだけなら簡単だがそれは俺達には選択できない事だからな。」
その言葉にサトルは頷いて肯定を示した。
そして携帯を取り出し精霊達へと連絡を入れる。
すると電話を最初に取ったのはアクアだったがすぐに飛鳥に代わってくれた。
「そう、それならちょうどいい人材がそこにいるわね。」
飛鳥はサトルの説明を聞いた後、即座に答えを返した。
「サクラにノームの加護で岩を作らせ、慰霊碑をその場所に作らせなさい。そして、南が持つサラマンダーの加護で火を焚いて送り火にしなさい。炎は大きいほどいいから他の子が手伝ってもいいわよ。」
「分かった。助かったよ。」
サトルは飛鳥にそう告げると携帯を切る。
そして、それを聞いた龍斗はリンダに連絡を入れ各種準備を開始した。
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