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異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

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後編 其の九

人の居ない憲政記念公園―

深夜の公園に佇む影―



―8月8日(月) 夜11時5分前―


―千代田区永田町 憲政記念公園内 日本水準原点標庫―

挿絵(By みてみん)



暑く蒸す様な夜だった。


夜は閉鎖されているこの園内に、長大な袋を背負った人影が蠢く。


首都高の灯りが流れ、喧騒が過ぎる中―雲間を除く下弦の月の薄明かりに照らされる、その歴史的建築物に近付く。


菊家紋が記されたその建物は、大日本帝国時代に建てられた、貴重な現存する貴重な建物の一つである。


日本水準を決定するこの標庫の裏側―年に一度しか空かないその扉に近付くと、(おもむろ)に携帯を胸ポケットから取り出すと、電話を掛け始めた。


黒い男「…もしもし? 着きました」


エージェントA『解った 今から電源を落とす 速やかに侵入し、非常電源設備を破壊するんだ それ以降通信は不可能となる』


黒い男「…了解」


淡々と要件だけ交わすと、通話を切って携帯を腰のサイドバッグにしまう。


視線を外務省の方角に遣ると、暫くして、周囲の街灯が点滅をし始めた後、外務省の少ない灯りが消えた。


それを確認し、裏口の扉に手を掛けた。

挿絵(By みてみん)


ドアは施錠が外れており、すんなりと開いた。


真っ暗な中には、石碑があるが、それをゆっくりと前に押す。


すると、ゴトゴトという音と共に石碑が上へ迫り出し、下に隠してあった螺旋階段が現れた。


黒い男「はッ…アナログな装置だ」


どうやら相当昔から在る装置らしい。


電源が落とされているこの状態でも作動するとなると、戦時中の防空壕や緊急脱出口なのだろう。


真っ暗闇の中、その階段を降っていった。



―8月8日(月) 夜11時過ぎ―


―千代田区 プルス・アウルトラ本部 作戦室―

挿絵(By みてみん)



ドミニク「何が起きてるんですッ!?」


副長「各自状況を報告しろ!」


足下灯が足下を、起動しているコンソールが顔を、そして緊急を知らせる赤い非常警告灯が明滅し、部屋全体を照らす。


明らかな非常事態に動揺をする。


当然だ。


この施設は全てに於いて、防壁も物理、術式でも保護している。


そもそも干渉、介入、侵入しようなんて輩は現れようはずも無い。


誰の仕業か。


考え得る事を頭の中にリストアップする。


何をしても我が組織"プルス・アウルトラ(更なる高み)"に手出しを出来る筈は無い。


外交は完璧だ。


だから外務省を含め、国外からもサポートを得てこの組織を設立させたのだ。


何者にも縛られない超法規的組織…


全てに信託を得た退魔協会の設立―


本国の無能共には出来なかった事…


他国に蔓延る悪魔共を、神の意志と意向を持って浄化する為に。


そして、神に赦され、神の御国に赴く為に―


しかし、その組織に干渉しようだなどと…!


オペレーター女「待って下さいっ…! 全システム…電源がカットされています!」


ドミニク「何ですってェ…?!」


焦りながらもそう答える女の様を視て、苛立つ。


貴様それでもプロフェッショナルか? 役立たずめ! これだから信仰心の無い日本人などッ…!


()め付けながらも心の中で罵る。


オペレーター男「一部の端末以外は復旧中ですが…生きている電源は本部に集中します!」


ドミニク「当然です! 直ぐ様状況を報告しなさい!」


オペレーター達が手元のコンソールをカタカタ弄りつつ少し待つと、目前の大型モニターが点灯する。


オペレーター女「回復しました! 状況チェック!…!コレって…!」


驚きの声と共に手元の操作も止まる。


ドミニク「なんです?! 報告しなさい!」


オペレーター女「これ…監視カメラの映像なんですが…共同溝78番通路の…」


ドミニク「回しなさいッ!」


言葉を遮り、怒鳴る。


オペレーター男「了解! …! えっ…コレって…」


ドミニク「なんです!?」


これ以上自分を苛つかせるな。


そう発した途端、目前の監視カメラに写された映像に驚愕する。


ドミニク「!… くっ…黒い男…っ!」


薄暗い廊下を歩く、黒い長袖の上着を羽織った男が、カメラが動いているのに気付き、視線をカメラに向ける。


すると、口元が動いた。


Do―mi―ni―ku―


解り易い様に口元を大きくユックリ動かしたあと、右手を人差し指で銃の形にし、口元を大きく歪ませて頭を撃ち抜くポーズをとった。


そして、左手で銃を腰裏から瞬速で抜くとカメラを撃ち抜いた。


途端、そのモニターは砂嵐になり、―No signal―の文字が現れる。


この神の家に闖入者が現れた。


ドミニクの怒りは頂点に達していた。


ドミニク「クッ…! ふざけてッ…!パペッターを呼びなさい!いるでしょう!」


副長「! しかし、彼女のッ…」


副長がそう言うと同時に、部屋が再び真っ暗になった。


ドミニク「なッ…! 今度は何です?!」


オペレーター女「非常用予備電源も…! 破壊されました!」


ドミニク「何!?」


副長「あの通路の先は三つ在る非常電源の内一番大きいものです…これでこの施設の防壁はほぼ役に立ちません その事を知っているのは…」


ドミニク「クッ…ククッ…!!」


怒りで言葉に成らず、歯軋りとなって口から漏れ出る。


日本政府が裏切り?!


若しくはバチカンの無能共?!


許せない許せない許せない


この崇高な神の使命を(こな)す組織を!


邪魔をするなど!


妬ましいだけだろう!私の手腕が!


そんな者共!全て神への信仰の冒涜だ!排除だ!粛正を!


ドミニク「パペッターを向かわせなさいッ!」


二度目のその言葉は、作戦室に響いた。

本部へと侵入した黒い男―

そこには…

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