表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/237

後編 其の八

周囲の妖魔を焼き尽くした竜尾鬼―

突如現れた彼の口から発せられた言葉―

そして協会からの緊急を要する連絡―

それは…



―8月8日(日)夜11時過ぎ―


―千代田区 北の丸公園内千鳥ヶ淵付近―

挿絵(By みてみん)



焼き尽くされた周囲を気にせず、竜尾鬼は大剣の柄に嵌められた龍玉を外すと大剣も元の刀へと戻り、周囲の炎も瞬時に消えた。


竜尾鬼「―ふぅ…」


トシ「ふう…じゃない 竜尾鬼! 俺達まで巻き込む気か?!」


竜尾鬼「いえ…あなた達なら避けると思って…」


その悪意の無い態度に呆れてしまう。


トシ「お前…! もういい…!」


妖魔退治に捧げた坂本家の人間は常識がズレている…こういった事には一般の認識…気遣いもズレているのだと、思い出した。


それでも以前より人間らしくはなったが…それでも竜尾鬼は気遣いが足りないと改めて思わされた。


そんなトシの生真面目な思考を全く無視してスズが問う。


スズ「なんで竜尾鬼君がここに?」


当然の疑問だった。


協会からの指示で最近起きる北の丸公園での…否、都内中の怪異に駆け回っているのだ。


そもそも人も足りていない。


協会は何をやっているのか?


黒い男()を追っているのだろうか?


何故そんな執着を?


異常だ。


詳細も教えて貰えず…


その上で怪異への対応は我々ばかり…


そこに竜尾鬼?


坂本家に助力を願い出たのか?


あのプライドの塊の局長が?


考えられない。


しかし、竜尾鬼から帰ってきた返答は、二人からしたら全くの予想外な事だった。


竜尾鬼「都内の怪異への対処―もありますが、今日、プルス・アウルトラ本部への強制執行が行われます その事を二人にも伝えるために」


トシ「何?!」


スズ「どういうこと!?」


竜尾鬼「これは日本政府による正当なる停止命令です 国内に於ける協会の行為は逸脱しており、違法行為も散見しています 本国であるバチカンからの正式な認可も下りており、実行者は―黒い男 彼です」


トシ「―なッ…」


スズ「それっ…本当なの?!」


突然告げられるその事実と情報量の多さに驚きを隠せず、動揺する。


竜尾鬼「ええ―時間は…そろそろのハズです」


トシ「今!?」


竜尾鬼「そうです」


その竜尾鬼の返答と同時に、二人の携帯が鳴った。


電話に出ると、焦った女のオペレーターだった。


トシ「何かあったんですか!?」


竜尾鬼に聞いた情報から、焦りを隠せず聞き返す。


オペレーター『現在! 協会本部が黒い男による襲撃を受けています! 何を於いても本部へ向かい、黒い男を阻止せよ!との事です!』


トシ「! そんな!? それじゃ、今起きてる怪異への対応は?!どうするんです!!」


オペレーター『現状、本部が最優先との事! これは局長から命であるとのことです! 教会が残れば再構築は可能! 神の名の下に救いは差し伸べられる!どうとでもなるとの事ですので、早く戻ってきて!!あっ…!』


通話はオペレーターの何かへの気付きの声と共に途切れた。


トシ「! もしもし?! っクソッ…! 途切れた…!」


スズ「…」


緊急招集の全体メールも届いており、中身を確認すると、何を於いたとしても本部を護れ―との内容だった。


何を於いても?


任務の途中でも?


投げ出せと?


困った人を見捨てて?


協会の行動は、身勝手さが極まっている…


スズは、協会に不信感を募らせていた。


トシ「そんな…! 協会へ…?! まさかアイツが…ッ!?」


友人(黒い男)による襲撃と暴力…そんな非人道な行動を行う仲間の暴虐― しかしそれよりも何よりも、友人の―全てに於いて真実を知ろうとせず流されていただけの自分に歯痒さを覚える。


震えるトシの側で、竜尾鬼が呟く。


竜尾鬼「ですから…僕が止めないと」


最後の言葉には、熱が籠もっていた。


スズ「…竜尾鬼君が?」


意外なまでのその熱意に驚く。


竜尾鬼「…そうです…仲間の為にも」


その言葉に、一瞬場が静まりかえる。


トシ「…俺も行く…!」


竜尾鬼「…良いんですか? 完全に協会からは反逆者扱いですよ?」


それは竜尾鬼なりの気遣いだった。


何故ならトシの思う正当な行為からは懸け離れた思考だ。


信じず、信じていたモノを裏切り、正当ではない事を暴くなど、トシにとっては苦痛を伴う行為だ。


トシ「…それでも、だ…! 俺は…! 俺は知らなきゃ為らない! 仲間の真意をッ…!」


その竜尾鬼を見つめる眼には、いつもと異なる強い意志が視え隠れしていた。


竜尾鬼「…わかりました」


スズ「…私も行く 一緒に」


迷わず名乗り出たスズからは、力強くも危うい…そんな意志を感じ取った。


竜尾鬼「では、行きましょう 国会―憲政記念公園へ」

少し遡る―

深夜の憲政記念公園―

そこには一つの人影があった…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ