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異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

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中編 其の二十七

変貌を遂げる松田リカ―

その姿は―

まるで―

二十七



―4月27日(火)夜0時53分―


―あきる野市 秋川渓谷 嘉手名別邸地下一階 食肉加工室―

挿絵(By みてみん)



松田リカの眼が赤い複眼の様に左右に拡がり、手足が蠅の様な触脚へと変貌し、背中に同じく蠅の様な羽が生え出し、臀部に()()()()()()()が現れる。


全身は黒く肥大化し、蠅の頭部に松田リカの顔、巨大な赤い複眼と、大きく裂け、左右に開いた口。


だが、口は蠅らしくなく、もっと肉食のそれに近い。


そして、触脚が脇から生えている。


よく見ると羽は余り大きくなく、触脚も肥大した身体に比べ短く、身体も幼虫である蛆の様に蛇腹状の部分が多い。


蠅の様な外見の割には、成長しきっていないアンバランスな形状…飛べないのか、だらしなくも接地している。


黒い男「…いやぁ…お前らしいよ…その幼稚な形状がな…!」


その変貌する様を見て、嘲笑う様に呟いた。


その変貌した松田リカの体躯は3mを越え、天井辺りまで巨大化していた。


口部をぎちりという音と共に唾液を垂らしながら開く。


松田リカ『アンタなんか…死んじゃいなさい…!』


口部が変化しているからか発声方法が独特なのか、響く様な甲高い声が室内に響いた。


その声と共に背部から爪が生えた触手らしきモノが五、六本生えだし、黒い男に高速で襲いかかる。


それと同時に美穂の遺体も勢いを付けて飛び掛かった。


黒い男「ハッ…! 死ぬのはお前だ…!」


鼻で笑うと右手に力を込めて、飛び掛かる美穂に思い切り右腕を突き出すと、強力な視えない衝撃で美穂の遺体を吹き飛ばす。


そして、左手に持ち替えていた刀を右手に持ち直し、正面から襲いかかる触手を半身で避けると同時に両手持ちにした刀を振り下ろし、一本目を斬り落とす。


その次の二本目を正面から刀で弾いた後、三本目を横に側宙しながら避けつつも、その遠心力を込めた回転斬りで斬り落とす。


四本目と五本目は寸前で最小限の動きで左右に避け、片手で左から右へと、左下方から上方に半円を描く様に右へ刀を振るい、二本同時に触手を斬り落とす。


六本目も下から上へ先程弾いた二本目と同じところに刀で弾くと跳躍し、その二本の触手を同時に斬り落とした。


松田リカ『なッ…??! がぁぁぁぁ?!』


瞬く程の一瞬の出来事…そして全て弾かれたことに動揺した疑問と襲い来る苦痛に、悲鳴を上げる。


吹き飛ばされた美穂の遺体と斬り落とされた触手が、その変生(へんじょう)松田リカの叫びから遅れて、同時に床に落ちた。


クリフ「! …あ」


吹き飛ばされた美穂に眼を遣る。


黒い男「こんなモンか…? 嘉手名貴代子…? 形だけデカくなってもこの程度なら大した事ァねーなァ…!」


右手に刀を持ち、真紅に輝く瞳。


松田リカ『! ッこの…! 悪魔ァ…!』


そう視えた変生松田リカは、そう叫びながらも触手を再び襲いかからせた。


が、黒い男は瞬速で左手に銃を持ち構え、向かってくるその触手に撃ち込む。


轟音と共に放たれた弾丸に被弾した触手が、灰の様にバラバラと崩れ落ちて消滅する。


松田リカ『ギャァァァァ…!』


余りの苦痛に雄叫びを上げる。


黒い男「…悪魔はお前だろうが…!」


その無様な姿を意に介さず、左手の銃をユックリと腰裏にしまいながら述べる。


心做しかその顔は、松田リカからして笑っている様だった。

その圧倒的な力量差に追い詰められる変生松田リカ―

打開策として彼女は―!

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