中編 其の五
一夜明け、クリフは用務員室に呼び出された―
五
―4月14日(水)午後3時―
―都立あきる野第二高等学校三宅分校 用務員室―
黒い男からのメールで呼び出されたクリフは、用務員室へと赴いた。
幸い今日は水曜であり、職員会議のお陰か午後の授業は無い。
部活も無い為、校内には人が残っていなかった。
黒い男「昨日の結果が出た」
そう言って渡された数枚の用紙。
黒い男はジャージ姿で、無理矢理引っ張ったのかADSL回線で接続したノートPCを開いている。
そこに、そこはかとない違和感が在るのは自分だけでは無いだろうとクリフは思った。
渡された用紙に目を通すと、内容は驚くべきモノだった。
クリフ「身体器官がほぼ…消失?」
黒い男「そう ほぼ無かったそうだ 眼球や一部の内臓器官だけで、骨、脳でさえ 生命として生存に必要な器官のほぼ全てが」
クリフ「え…?! じゃあ…でも…彼女は動けて… 喋って…? 悪魔憑き?」
困惑からか、疑問を口にする。
黒い男「よくは解らん それに悪魔憑きなら現世に顕現するのに触媒が必要だし、何故助けを懇願したか意味不明だ」
クリフ「確かに…襲えば済むし…」
そう言って頭を抱える。
黒い男「…それに、このレポートによると…被害者の女生徒は内部から食われた形跡があるらしい」
PCを弄くりながら述べる。
クリフ「ISSによるスコアは即死… 彼女はとっくに死んでいたのに…動いて助けを…求めた? けど、悪魔憑きでもあんな症例は聞いた事無い…」
黒い男「…よくそんな言葉知ってるな」
感心した様に言う。
クリフ「一応 悪魔払いの身体に与える影響やケアも含めた部分で医学の知識も学びましたので…」
聞かれた事よりも女生徒に対する疑問が気になり、資料から眼も離さずに答える。
黒い男「…それでも高1の高校生はそんな話しねーぞ… まァ、いいか それ以外にも解った事は在る その食われ方なんだが、消化液で溶かして啜られたっぽい」
クリフ「消化液?」
その答えに顔を向ける。
黒い男「ああ 虫のな」
クリフ「! だから… 蠅ですか?」
黒い男「そうなるな…蠅は死体や腐敗物に卵を産み、孵化させて栄養源として蛋白質を食らう」
クリフ「蝿蛆症―… 南米や亜熱帯のアジア地域ではありますが…こんな生かさず殺さずなんて事例は… それに…これも悪魔憑きでは聞いた事がありません」
黒い男「つまり、今回は"大当たり"だ」
ノートPCのモニターを閉じて述べる。
クリフ「"大罪"…ですね」
その言葉には、緊張が籠もっていた。
その次の日―
職員室に新たな教員が二名配属された―




