其の九
苦しみ悶える地獄の番犬を更に蹂躙する―
その先には…
九
―11月25日(木)深夜0時9分―
―台東区上野 上野公園内国立西洋美術館 地獄門前―
いつの間にか構えていた両手の銃―陰と陽―から、硝煙が燻んでいる。
ボチャボチャと嫌な音と共に眼球から体液と血が地面に落ち、一間遅れて"眼球だらけの首"が苦しみ叫ぶ。
しかし、容赦なく両手の銃の常人を超えた連射で、眼球を一つ一つ潰していく。
黒い男「…そんなに在っても邪魔だろー? 減らしてやるよ!」
口元を歪ませながら尋常じゃない速さでトリガーを引き続ける。
ケルベロスは苦しみの絶叫と共に後退りを始め、それを射撃しつつ追う。
相当数の眼を失い、上空を向いて雄叫びを上げつつ苦しみ悶える頭部。
その真下に高速で潜り込むと、いつの間にか銃を収め、背中から抜いた"閻魔"で、顎の下から貫いた。
一瞬、ケルベロスは何をされたのかも解らず固まっている。
黒い男「せぇ~…っのっ!」
柄を両手で掴み、顎から上部へと貫いた刀を、力を込めて口側へ思い切り斬り裂いた。
ズルリと真っ二つとなり、血を吹き出しながら左右に分かれた頭部が自分の左右に倒れ込む。
そして踵を返し、そのままケルベロスの本体へと走り出すと、思い切り刀を首と首が繋がっている胴体の間へと突き刺した。
そのまま円を描く様に切り目を入れると、ずるりと円形状に肉が抉れた。
吹き出た血と共にドシャッと肉塊が落ちる。
深く抉られたその先に、大きく蠢く器官が視えた。
刀を背中に収め、両腰の銃を引き抜くと、左手の"陰"の弾を撃ち込んだ。
そして後方に跳躍すると一回転して、両手の"陰と陽"を空中で構え、残りの弾を蠢く器官―心臓へと撃ち込んだ。
激しい衝撃音が響き、マズルファイアが周囲を照らす。
動かなくなったケルベロスに背を向けながら着地をすると両手の銃のリリースボタンを押して空になったマガジンを落とし、腰裏にしまってあるマガジンを交換、上がったスライドをスライドストップを押して戻す。
リロードを完了させた"陰と陽"を腰裏のホルスターにしまい、落とした空のマガジンを拾って、サイドバッグにしまう。
ケルベロスの死体からは、全身に付着させた肉塊がドロドロと崩れ落ち、門の前に巨大な血溜まりを再び生んだ。
黒い男「さて…?」
呟きつつ門を仰ぐ。
未だ開いたままの門からは、瘴気が溢れている。
黒い男「ブッ壊させてもらうか…」
呟きながら門へと向かう。
ケルベロスの死体を避けて門への段差を登ると、突如として足下へ西洋剣が突き刺さる。
黒い男「?!」
驚く間も無く、刺さった剣の部分から地面に光の円が現れ、その光が全身を覆う。
その光に覆われると、全身に電流を流されているのではと感じるほどの衝撃と痺れが身体を覆い始めた。
黒い男「?!何!?」
突如として起きた予想外の事態に、思わず戸惑いの言葉が漏れ出る。
??「動かないで下さい」
そう言って視界に現れたのは、見知った金髪の魔術師だった。
地獄の番犬を斃したのも束の間―
目前に対峙するのは、金髪の成長した魔術師―…




