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討伐一戦目の顛末・上

 巨体を消し炭に変えて、巨大な火柱がロウソクを吹き消すように消えた。

 炎が消えて大きめのライフコアがごろりと転がる。


 ラファエラの茨に絡まれていたオーグルやトロールも倒れた。

 動きを止めるだけじゃなくてダメージも与えているのか。なかなか便利だな。

 周りの動くものが無くなって、森に静けさが戻った。


「終わったか」

「ああ……多分な」

 

 さすがにこうなったら復活はしないだろう、いくらなんでも。

 ヴェパルはあの炎の魔法を受け付けなかったはずだ。こいつはヴェパルよりは格下なんだろうか。

 暫く見ていたが何事もない。ようやく緊張していた空気がゆるんだ。


 しかし、やはり人数がそろっているのはありがたい。特に攻勢に出るときは。

 防御にせよ攻撃にせよ余裕があると言うか、危ない橋を渡らなくてすむ。

 二人で戦うのとは段違いだな


「そういえば、大丈夫か?」


 ノルベルトはあの魔族のパンチを食らっている。

 見た目は鼻血と口元から血が少し出ているくらいで大したことはなさそうだが。


「ああ、お前の風があったからな」


 そう言ってノルベルトが血をぬぐった。


「いや、しかし。さすがだな……練成術師でA1まで来たのは伊達じゃねぇな。

判断も早いし攻防兼備。名匠(マエストロ)の二つ名持ちも納得だぜ」


 ノルベルトが感心したように言って、フルーレが頷いた。


「正直言うとよぉ……団長殿はお前を過大評価してると思ってたんだよな」

「お前な……もう少し言い方ってもんを考えてくれ」


 あっけらかんと言われるが、何気に酷い言われようだ


「いやあ、悪い悪い……だがよ冒険者ってのは自分の目で見た者しか信じない、そうだろ?」

「まあそりゃそうだが」


「お前の実力はよーくわかったぜ。全面的に信頼するよ。よろしく頼むぜ」

「私もです。錬成術など時代遅れの系統と思っていましたが使いようなのですね」


 フルーレが言う。

 なにやら練成術師の評価が伺い知れてしまうが、まあこれで少しは印象が変わったと思いたい。


「ありがとうよ。フルーレも流石だな」

「ああ、最初はどうなるかと思ったがなぁ。オドオドビクビクしてやがってよぉ」


 ノルベルトが言う。

 確かに、戦力になるのは不安だったが、いざ戦い始めると見事な剣捌きだった。

 騎士団から団長が引き抜いてきただけあるな。


「なんというか……やるしかないって思ったらこうなるんですよ」


 フルーレがちょっと照れたように言う

 剣を握ると性格が変わるタイプか。たまにそう言うやつはいる……危なっかしくも感じるんだが。


「それにお嬢さん、あんたも大したもんだぜ。二人で魔族を倒したなんて眉唾かと思ってたんだがよ」


「私の事は魔術導師(ウォーロック)と呼んでもらいたい」

「ああ、失礼。魔術導師(ウォーロック)殿」


 おどけた様にノルベルトが頭を下げた。


「とどめを刺したのはテレーザですが……私の戦果と貢献もきちんと報告して頂きたい」


 ラファエラが釘をさすように言う。

 

「ああ、分かってるさ」


 ラファエラは当世の流行である前衛を支援することに重きを置いた支援魔術師(ソーサラー)らしい。

 防御に魔法解除(ディスペル・マジック)、それに足止めと色々と多彩な魔法を使えるのは分かった。

 魔族相手だと火力不足だろうが……落ち着いた魔法の選択と詠唱の速さはさすがに団長が選んだだけあるな。

 

「しかし、魔族ってのはこんなに強いのかぁ?お前がやったやつはどうだったよ」

「どうだろうな」


 単独での強さというなら、ヴェパルの方が強かった気がする。

 ただ、このオーグルやトロールを呼ぶ能力まであったのなら、全体としてみればこっちの方が厄介だ。


 こいつとテレーザと二人で戦っていたなら、トロールの群れを止められなかっただろう。

 どっちにしても嫌な相手には変わりないが。


「しかしよぉ、本当に魔族なんて出るんだな」

「そうだな……それは俺も同感だ」


 これについては俺も半信半疑だったんだが。

 遠征一回目でこんなのとぶち当たるくらいだ。


 冒険者として10年戦ったしアルフェリズでもいろんな冒険者の話を聞いたが、トロール以上の魔族と戦ったなんて話は殆ど聞いたことがない。

 魔族が普通じゃない頻度で出ているのは間違いないのかもしれない。


「まあ強い奴と戦えるのはよ、スリルあるから悪くねぇんだがよ」


 ノルベルトが不敵に笑って言う。

  

「対魔族なんてよ、話半分くらいにしか聞いてなかったぜ。俺も殆どやったことねぇしな。楽に稼げると思ってたんだが甘くねぇな。喜んでいいんだかどうなんだか」

「なんだ、不満か?」


 そんな話をしていると。

 茂みの向こうから不意に声が聞こえて、アグアリオ団長が姿を現した



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普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ/僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。
元サラリーマンが異世界の探索者とともに、モンスターが現れるようになった無人の東京の探索に挑む、異世界転移ものです。
こちらは本作のベースになった現代ダンジョンものです。
高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
― 新着の感想 ―
[一言] 束縛術とかの支援もあると助かる。よく纏まったチームだ。
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