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1クラウンは大体100円くらいだと思ってください。

「さあ、依頼を受けるぞ」


 テレーザが行ってそのまま壁の方に歩み寄った。

 壁の掲示板にはいつもどおりいろんな依頼が貼られている。


 薬草採集に隊商の護衛、モンスター討伐。今日も色々あるな。

 いきなりB2になるということはそれなりに優秀なんだろう。ただ、どういう能力かはわからない。

 それに経験が無いことだけは確実だ。あまり危険が高い仕事はしない方がいいだろう。


「……これなんてどうだ?」


 無難に、と言いかけたが飲み込んだ。

 薬草採集。治癒薬ポーションの素材となる薬草はいつでも需要がある。場所は俺も知っている。

 勿論冒険者ギルドに依頼が来るということはあるていどの危険性はある。

 だが、さほど強力なものは出てこない。最悪この子がいなくても俺一人でもなんとかなる程度だ。

 テレーザが紙を一瞥して掲示板に目をやった。


「いや、これだ」


 彼女が取った紙は討伐任務だった。


「ちょっとまて」

 

「何か不満か」

「当たり前だ」


 報酬は7500クラウンと悪くないが討伐対象がまずい。 

 推測という注記がついているものの、敵はブラックウッド。

 スライムの様な粘液状の体を持ち、木に寄生し苗床として増殖し暴れる魔獣だ。強力なモンスターだが、特筆すべきはその耐久力。核を倒すのは困難を極める。


「俺が倒せる相手じゃない」


 こいつがどんな能力なのか分からない以上、最悪俺一人でもなんとかなる程度にしておきたい。

 ブラックウッドは手に負えない。


「安心しろ。お前は私を守ればいい。私が敵を倒す」

「はっきりいうが俺はそれが信用できない」


 こいつとしては、自分が魔法で火力を出すっていいたいんだろう。

 だが、いわゆる火力を出す魔法使いなんてものはほとんど見かけなくなってしまった。ブラックウッドに対抗できる攻撃魔術なんて見たこともない。

 冷静な顔に露骨に不満げな表情を浮かべて彼女が俺を見る。


「私はアレクトール魔法学園の学生でありB2ランクだ。それでも不満か?」

「冒険者は自分で見たものしか信じない。命がかかってるんだ」


 経験が少ないやつはそれだけで不安要因だ。

 優れた能力も結局は使うものの経験に左右される。


 駆け出しがモンスターと対峙してすくみあがったなんて話はいくらでもある

 ……まあこれは俺もそうだったんで偉そうには言えないが。


 複数パーティならともかく今は二人だ。カバーはいない。

 しばらくにらみ合って、テレーズが渋々って感じで掲示板の方を向きなおった。


「なら……どれならいいのだ?討伐任務で、だぞ」

「護衛や採集じゃ不満か?」


「護衛は時間がかかる。採集は戦闘になるかわからない。討伐任務でなくてはダメだ」

「戦闘にこだわるな……何か理由があるのか?」


 テレーザがふいっと視線をそらした。答える気はないってことか。

 今までの調子では聞いても答えないだろう。


「どういうのがいいんだ?」

「討伐任務。できれば早く片付く方がいい」


「報酬は?」

「どうでもいい。任せる」


 いや、それが重要だろう、と思うが。こいつは金銭的報酬より、戦闘というか魔獣を倒した時に与えられる討伐評価点に拘りがあるんだろう。

 依頼の紙には評価点の目安も書いてある。


 評価点はランクに関わるものであり、強さの目安の一つにはなる。

 勿論それだけで決まるわけじゃないが。


 あの金貨を惜しげもなく払ってくれたところを見ると金には困っていないんだろうということは分かる。

 身なりもいいし貴族家の娘とかなんだろうか……


「早く決めろ。何をボーっとしているのだ」


 そう言われて我に返った。改めて壁の依頼の紙を見る。

 採集と護衛のエリアは無視して討伐依頼の紙に目を走らせた。



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普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ/僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。
元サラリーマンが異世界の探索者とともに、モンスターが現れるようになった無人の東京の探索に挑む、異世界転移ものです。
こちらは本作のベースになった現代ダンジョンものです。
高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
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