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戦い終わって

 雷球が靄を切り裂くような白い光を放ってローランを吹き飛ばした。

 意識がすっ飛びそうになるが辛うじてこらえる……ここで倒れたらだめだ。


 剣を構えたまま様子を伺う。

 ローランは砂浜に倒れたまま動かなかった。

 俺の持つ単体攻撃への最大火力の雷撃だったが、さすがに防具の結界は割れたらしい。

 危なかった。


 ローランのことは置いておいて、砂浜に横たわったままのテレーザに近寄る。

 全く動く気配が無くて心配したが。


「……酷い顔だ」


 間近に寄ったらこっちが声を掛けるより早くテレーザが口を開いた。

 砂浜の横たわったままでテレーザが俺を見上げる


 ただ、それについてはテレーザも人のことは言えないって感じだが。

 白い肌は血の気が引いて蒼白で、血と砂で汚れている。

 

 手で口元をぬぐうと案の定、べっとりと血が掌についた。全身に切られるような痛みがあって、頭も割れるように痛む。  

 魔力を限界近くまで放出したから、体にも負担が相当かかったんだろう。

 体の痛みはさっきの魔族にやられた分かもしれないが

  

「悪いが治癒薬(ポーション)を貰うぞ」

「ああ、持って行け」


 口調はいつもと変わらないが、仰向けに倒れたままでどうにか体を動かせるだけって感じだ。

 最後の魔力であれを使ったんだろう。

 あれが無ければ防御が割れたかわからない。なんでまだ使えたのかわからないが。


 テレーザのウェストポーチから治癒のポーションを拝借して飲む。

 視界に掛かった赤い膜が消えてようやく痛みが引いた。



 頭上の靄が晴れていって、夕闇の様な薄暗い感じがようやく消える。

 曇り空と太陽が頭上に見えた。赤い夕陽が眩しい。


 ローランの方に歩み寄る。

 砂浜に倒れ込んでいて、鎧や髪に焼け焦げた跡があるが命に別状はなさそうだ。 

 ただ、ダメージは明らかで、流石にもう戦う意思はなさそうだが。


 戦士の二人は両方とも致命傷って程ではないらしい。

 一人は風の塊を当てただけだし、もう一人はテレーザの魔法を受けているが、そこまで強力なものじゃなかったんだろう。

 ただ、ローランが倒された今、こっちも戦闘をする気はもうないって感じだ。


「なぜだ。あなたは魔力は使い切っていたはず」

「……錬成術師の最後の切り札だ、知らないか?」


 ローランが首を傾げる。

 これはあまり知られていないが、錬成術師は触媒に封じられた魔力を自分の魔力の代わりとして魔法を使うことができる。

 練成術師の終局の一撃ファイナルストライクだ。


「ベテランは最後まで切り札を残すもんさ」


 ただ。目を凝らすと刀身にはひびが入っていた。

 柄から伝わってくる魔力も普段とは違う感じだ。予想通りといえば予想通りだな。


 触媒に込めた魔力を使うのが本当に最後の手段なのは、封じられた魔力を無理やり引き出すから、触媒に多大な負担をかけるからだ。

 多くの場合は壊れて機能しなくなる。


 触媒がないと戦えない練成術師としては終局の一撃ファイナルストライクは文字通り一発勝負の最後の切り札。

 これで倒せなかったら命乞いをするしかなかった。


 遠くの方からたくさんの馬の走る音が聞こえて来た。

 薄くなった靄の向こうから人影が見える。


 ギルドマスターのエンリケと、その後ろには20人ほどの冒険者たちが付き従っていた。

 ようやくまともな援護がきたな。



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普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ/僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。
元サラリーマンが異世界の探索者とともに、モンスターが現れるようになった無人の東京の探索に挑む、異世界転移ものです。
こちらは本作のベースになった現代ダンジョンものです。
高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
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