再会・下
ギルドの入り口の方からロイドが歩いてくるのが見えた。
赤い派手なマントには炎の様な文様が染められていて何とも派手だ。
ただ、自信満々って感じの雰囲気には何となく似合っているような気もする。
あの時のことはもう吹っ切ってはいる。
こいつ相手だとさすがにちょっと冷静では居難い……こいつが俺を追いだしたようなもんだしな。
「おかげさまでね」
「こっちも稼がせてもらってるよ。なあ」
「そうらしいな」
噂くらいは少し聞こえてくる。
確かに若きエース格のロイドの活躍は見事らしい。
火炎の加護付きの斧槍で敵を薙ぎ払う、典型的な前衛スタイルだ。
俺がまだパーティにいた時からそれは変わってなかったが、ますます強くなっているってことだろう。
ランク的には俺たちの方が上だが、ランクの高さは経験も加味されるから必ずしも強さとは一致しない。
俺がパーティを抜けた時はC2だったが、今はもうBに入っていてもおかしくないし、単純な強さならもっと上かもしれない。
「彼らは?」
「俺の元パーティメンバーだ」
黙ってみていたテレーザが突然声をかけて来た。
「ああ、噂は聞いてるぜ。魔法使いらしいな」
そう言ってロイドがテレーザを見下した。身長差がかなりあるから大人と子供に見えるくらいだ。
「魔法使いと、時代遅れの錬成術師だろ?お前ら、よく戦えてるな」
「……古さと強さには関係性は無い。古かろうが優れているものは優れている」
テレーザがロイドを見上げて言い返す。
普段通りの淡々とした口調だが、どことなく棘がある。ロイドも気づいたらしく目つきが鋭くなった。
「ああん、何が言いたいんだ?」
「ああ、誤解しないでほしい。私は君たちに感謝している」
「なぜ」
「彼の防御は堅牢だ。戦闘時の判断も早く経験も豊富。
優秀な使い手でパーティの役に立つのは明白に思える。それを放出とは無思慮なことだ」
「てめえ、なんだと?」
「だが、おかげで私は彼と労せずに組めた。だから感謝している」
静かに言い切ってロイドが黙った。
「それに私の見解では、彼のようなものは古いとは言わない。百戦錬磨というのだ。言葉は正しく使うべきだぞ」
「……言うじゃねぇか、お嬢様」
ロイドがテレーザを睨むが、テレーザが動じずに睨み返す。
「お前らもこれを受けるのか?」
「無論だ」
口を挟むより早くテレーザが言って紙をはがした。
ロイドがそれを睨んで同じく紙をはがす。
「どっちが優秀か思い知らせてやるぜ。いいよな、皆!」
ヴァレンが困ったような顔をして頷く。
ギルドの係員は我関せずって感じでカウンターの向こうで知らん顔していた。
●
あいつらが立ち去って行った。今から移動はできない。行くとしたら明日か。
たしか路面汽車も通っていたはずだが、同じ時間とかじゃないといいんだがな
「あれは皮肉か?」
「私は皮肉なぞいわない。時間の無駄だ。本当に思ったことを言ったまでだ。問題があるのか?」
テレーザが表情を変えずに言う。
一般的には言い過ぎだと思うし、無意味に冒険者同士で緊張感を高めても仕方ない。
俺たちの戦う相手は人獣鬼で有ってあいつらではないのだから。
だが。
「ありがとうよ、魔術導師さん」
正直言って多少気分が晴れたのは事実だ。
気にしない様にしてはいるが、それでもわだかまりが無くはない。
「ようやく私を適切な名で呼んだな。次以降も忘れない様に」
満足げな顔をしたテレーザが咎めるような口調で続ける。
「しかし、なぜ自分で言わない。言われっぱなしでどうする」
「今はお前と組めて上手く行ってる。あいつらに恨み言を言う必要もないだろ」
そう言うとテレーザが顔を背けた
「ふん。やっとわかったか。感謝を忘れるなよ」
そっぽを向いてテレーザが言う。何となく照れたような口調だな。
「何とかしてあいつらに勝ちたい。頼むぞ」
「ふ、珍しく言うではないか。勿論だ。私としてもこの討伐任務はかならずやものにしたい」
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