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再会・上

 合流した後、カフェで軽く食事をしてその足で冒険者ギルドに向かった。

 さすがに今はこいつも路面汽車トラムを使うようになっている。


 昼下がりのギルドはさほど人は多くないが、それでも依頼を終えた冒険達が報酬の確認をしたり、情報交換をしていたりとそれなりににぎやかだ。

 朝は依頼をうけた直後の連中が多くて緊張感があったりするが、昼以降は緩めだな


 壁の掲示板にはいつも通り依頼が貼ってあってその前には何人かの冒険者がいる。明日の依頼の物色かもしれない。まあ俺達もそうだが。

 依頼は大まかに報酬の高く討伐評価に高い順、すなわち難易度が高い順に上から張られている。

 それをテレーザが上から眺めていった


「これはなんだ?ライエル」


 彼女が指さしたのは二枚の張り紙だった。同じ依頼が書いてある。


「見ての通りだ。同じ依頼だな。基本的には一つの依頼を受けるのは一つのパーティだが、難度が高い依頼はこんな風になるときもある」

「だが……なんというか、争いになるのではないのか?」


 テレーザがあいまいな口調で言う。

 確かに手柄の取り合いになったりすることもあるが。


「冒険者同士では争わないんだよ。ギルドの規約違反になる。絶対の掟だ」


 冒険者同士の直接戦闘は厳禁だ。絶対に。

 冒険者を倒して手柄の横取りなんてことをしたら賞金首になる。


「手柄の取り合いにはならないのか?」

「なるときもあるが、大体はどっちの手柄かはわかるからな。負けた側が引くんだよ」


「合理的でないな、冒険者は」

「そうかもな」


 これも不文律だ。

 そこでゴネて手柄を譲らないような奴は評判を落として、結局は損をする。長い目で見ればそれなりに合理的なんだがな。

 

「で、どう思う、この依頼は?」

「なるほど、どうかな」


 紙に書いてある依頼は人獣鬼トロールの捜索と討伐。

 

人獣鬼トロールは知ってるか?」

「魔獣……というより魔族だな。一応知っている……すまないが本の中だけだが」


「甘く見れる相手じゃないぞ」


 魔族は魔獣の中でも特別だ。

 最大の彼らの特徴は知性あることだ。相手によっては魔法も使う。

 

「無論分かっているが、我々なら大丈夫だ……ところで、お前は何度戦ったのだ?」


「実を言うと俺も一度しか戦ってない」

「ふん、偉そうに言っていた割にはそれか」


 テレーザがあきれたように言う。

 なので、恐ろしく手ごわかった、とは言わないでおいた。


 魔獣はどれも甘く見られない相手だが、魔族と呼ばれる連中はその中でもさらに恐ろしい相手だ。

 戦ってみると分かるが、ただでさえ強靭な肉体に加えて知性があるのと無いのはかなりの違いだ。

 だが、止めないだろう。なら言っても恐れさせるだけか。


「ライエル!」


 紙を剥がしたところで、不意に後ろから呼ばれた。



「ライエル!久しぶりだ!」


 聞き覚えのある声。振り向くと居たのはヴァレンとイブリース、エレミア。

 前の俺のパーティのメンバーだった。ロイドの姿は見えない。

 なんとなく何を言えばいいのか分からなくなって見つめ合ってしまう。

 

「……すまなかったな」


 暫くの間があってヴァレンが気まずそうに言った。


「いや、今は気にしてないさ。こうして冒険者として戦えている。そっちこそ大丈夫か」

「……お前がいてくれればって思ったことが何度もあるよ」


 ヴァレンのいかつい顔には一筋傷が増えていた。


「そっちはずいぶん変わった編成だって聞いているよ」

「まあね」

 

 今の流行の編成は前衛2~3名と支援寄りの魔法使いを入れた3~4名の編成が多い。

 彼らの編成もヴァレン、ロイド、イブリースの三人が前衛を張って、エレミアが魔法で支援する、スタンダードな組み合わせだ。

 俺たちは編成も人数も異質ではある。


「まだ続けてるんだな、ライエル」


 不意に遠くから声がかかった。


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普通のリーマン、異世界渋谷でジョブチェンジ/僕は御茶ノ水勤務のサラリーマン。新宿で転職の話をしたら、渋谷で探索者をすることになった。
元サラリーマンが異世界の探索者とともに、モンスターが現れるようになった無人の東京の探索に挑む、異世界転移ものです。
こちらは本作のベースになった現代ダンジョンものです。
高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
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