第12話 俺は立つ!(4)
「おい! お前ー! そこの男! いい加減にしろよー!」と。
「──麗蘭逃げろ! 逃げるんだ!」
俺は自分の妻へと指示をだしながら、一気に立ち上がり──!
「うぉ、おおおおおおっ! 死ね~! この糞野郎がぁあああっ!」
俺は韓黄へと怒声を吐き、叫びながら猪突猛進──! 奴の腹部へと体当たり──!
俺の麗蘭に触れさせないように試みると、韓黄に馬乗り──! 奴の実態……。顔の相は無い暗黒面の煙のような顔へと殴り──!
「うりゃ、あああっ! うりぁ、あああっ! うりゃ、あああっ!」、「わりゃ、あああっ! わりゃ、あああっ! わりゃ、あああっ!」と吠えつつ俺は殴り続けた。
それでも暗黒神の韓黄の口からは、「シュ、ハァ、シュ」と声が漏れるだけで、韓黄の奴が苦しんでいるのか、苦しんでいないのか、俺には理解ができないけれど。
俺は楼蘭と麗蘭の二人を守護するためならば、このまま韓黄の奴を殴り殺しても構わないと本気で思っているから、韓黄の奴を俺の二つの拳で殴り続けていると。
「うぎゃ、ああああああああああああっ!」、「ぎゃぁ、ああああああああああああっ!」
今まで『シュ、ハァ』、『シュ、シュ』とエアー漏れのような声しか漏らさなかったはずの韓黄の奴の口から絶叫──! 断末魔のような声が吐かれたから、俺は直ぐに『やった!』、『勝った!』、『韓黄の奴に勝利をした!』と思うのだけれど。
韓黄の奴は奇声を上げ、終われば! 自分のことを馬乗りして殴り続ける俺のことを強引に払いのけ、立ち上がると。
「うわぁ、ああああああああああああっ!」
韓黄の奴は絶叫を上げながら城壁の隅へと走り──。そのまま地上へと死のダイブを決行……。自ら自害をしてくれたから、俺や楼蘭、麗蘭は韓黄の奴から勝利を得たと安易に思ってしまうのだった。
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