81 VTuber ツムグ Project! ―――第3週3日目担当ライバー【彼岸花】――― 上
色々誤字などありましたので修正しました(2024/09/15)
―――第3週3日目担当ライバー【彼岸花】―――
「しのぶのみんなゴメンナサイ!! こんひが〜!!」
〈いいよ〉
〈15分遅れは大丈夫大丈夫〉
〈全裸待機してました〜〉
「いや〜、課題を提出しようとしたらパソコンが固まっちゃって。まさか15分も提出できないとは思わなかった…」
〈課題かよ!!〉
〈それは辛いやーつ〉
〈草〉
〈治ったの?〉
〈固まっちゃったのかw〉
「終了2分前にギリギリ提出できたよー。
…でもね、明日は社会が…」
〈まだあるんかい!!〉
〈頑張れ〉
〈彼岸ちゃんがんば〉
「まあまあ、閑話休題として…私主催のプロジェクトハッジメルよー!
やっぱさ、人脈があるからさ、私!」
〈草〉
〈本当は?〉
〈ただただ虚しい‥〉
「はぁーーー!? どこがさ!
ごめんなさい加加阿とアイビーと華ちゃんに話しただけです。
ライバー21人以上も集まるとは思ってなかった」
〈それはそう〉
〈まさか一ヶ月続くとは…〉
〈白黒がはじめとしめしてくれたのも強いよな〉
〈前回も言ってたよねw〉
「あっはは…前の年も言ってた? そうだっけ…?」
〈自覚がない????〉
〈おばあちゃんかな??〉
〈加加阿に至っては後輩まで使ってHP作ったからね…〉
「そう! 加加阿! あの子、なにやってるの!?
あのホームページ、懐ちゃん…【懐かかし】ちゃんまで協力してくれてるし…!」
〈あー、デザイナーの。〉
〈ほろらばが誇る変態デザイナーじゃないか!!〉
〈懐ちゃんなぁ…性癖がなぁ…〉
〈今年はほろらば全面協力だっけ? やべーな…〉
〈前回の個人勢勢揃い的なのもいいけど、ほろらば多めの今回も良いよな〉
〈でっかくなったなぁ〉
「おっきくなりすぎだよ〜ホントさ…。
私がちょーっとこういう企画やれたら良いよね〜、今から下地つくりたくていろんなライバーの子と絡んでるんだ〜って雑談の流れで相談しただけでここまで作ってくれるんだよ…?
うちの妹と後輩愛おしくない?」
〈彼岸ちゃん話しすぎww〉
〈ゲストは?〉
〈マシンガンwww〉
「…え? …あ! ごめんなさい! 今日のゲストは私を変えてくれた人だよ〜!
それでは――どうぞ!!」
「ん゙ん゙ん゙??!!
…こほん……皆様、おはこんばんにちは。男女比異世界転生系VTuber【咲久和 華】です!」
「はい、ということでさくわはなちゃんです! はくしゅ〜〜!!」
〈華ちゃんどした?〉
〈ぅあっぱりひがはな〉
〈↑ぅあっぱりとは?〉
〈華ちゃん??〉
〈彼岸ちゃんかわいい〉
〈二人共が並んでるこの空間尊い〉
〈ありがとう〉
〈この空間にありがとう〉
「ちなみに華ちゃんさっきどうしたの?」
「………変えてくれた人、と言われて思いの外動揺しまして…。
私、そこまでのことをしていないような…」
「そこまで言われることをしているよ?
…すくなくとも私にはね(ボソッ)」
〈してるから言われてるんだよなぁ…。〉
〈はい?〉
〈自己肯定感低すぎか?〉
〈華ちゃんんんん???〉
〈彼岸ちゃん、聞こえてるぞ〉
〈上コメなにが??〉
「? なんですか?」
「華ちゃんは知らないでいてほしいな…まだ。
あとコメント………気づいてるよ? しーーだからね?」
〈ハイ〉
〈だまりまーす〉
〈(・¬・;)クチチャック!!〉
〈何も言うまい〉
〈(‘・×・`)〉
〈しーってかわいすぎか〉
〈二人の掛け合いが耳に良いですわぁ…〉
「じゃあ、始めていきますか〜〜!」
「そうですね!」
「今日はね〜〜、私達の人生を振り返りながら、歌枠をしていくよ〜!」
〈最初の華彼岸コラボも歌枠だよなたしか〉
〈おー〉
〈二人の歌枠すき〉
〈いつもの〉
「最初は私から!
…うーん、今から3年前かな? いきます!」
〈おーw〉
〈ちょっとまって〉
〈その時期ってまって〉
〈どうしたどうした〉
〈いつかの雑談配信でトラウマのあった時期と予想しますがその時の曲って…〉
〈闇の気配を察知〉
〈わぁ……。〉
―――カウントが入る。
とても暖かい、自分を包み込んでくれるような、そんな曲。
どうしようもない悶々とした気持ちを抱えていた私はこの曲に救われた。
「次」が、怖くて。「今度」に、期待して。
きっと、違うと。
変わっていると。
そう期待する、僕の話。
あの子と一緒にいれると思って
あの子とこの平和な日本に入れる幸せを噛み締めて
平和を信じて
ずーっと生きていたのは
いつの日だったっけ
曲の一人称である「僕」が視点であるこの曲は私に向かっての直接的なメッセージがなかった。
よくある「生きてくれ」「生きてりゃいいことがある」「うえをむいて」。
…わかってる。
生きなければいけないことも、きっと良いことがあるんだということも。
でも、「そういうことば」が苦しいときもある。
この曲は、その代わり、「僕」の決意が私の背中を押したんだ。
今の私がいる、理由のひとつ。
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「はい!と、言う事で3年前でした〜〜!」
〈8888888888888888〉
〈88888888〉
〈888888888〉
︙
〈圧巻〉
〈すごかっった〉
〈さすがは彼岸ちゃん……クオリティやべぇ〉
〈油断はできない、次は華ちゃんだ…〉
「すっご…すごいですね彼岸さん………」
「え? …華ちゃんに言ってもらえるの嬉しいな」
〈はなひがんは いいなぁ〉
〈ごふっっっっ〉
〈天使〉
〈ああ、ここが天国か…〉
「なんか昇天されてる方いらっしゃいますが、天国に私達いないので。」
「そうですね、いません。」
〈久しぶりの彼岸ちゃんの毒舌…キクぅ〉
〈薬物かな?〉
〈いないのかぁ…〉
〈誰かイってる〉
「っと、まぁ、気を取り直して華ちゃんだよね」
「はい。私はちょっと昔の、10年前の話を。」
「十年前? 年長くらい??」
「私これでも二十歳……」
「華ちゃん…? ご、ごめんなさい!」
「いや良いんだけど…どれだけ若く見られてたのかな…?」
〈そう言えばそうだった〉
〈10歳のときか〉
〈若く見られすぎてて草〉
「おほん、行きますよ?」
「はーい。」
音がかかり――あの日を、思い出す。
幼い頃の、友人の話。
この世界の自分に違う自分が入ろうと、忘れ去られることなどなかった記憶。
…忘れては、ならないと。
押し止められた、記憶。
この世界の俺は、どうしようもなく「この世界の住人」で。
この世界の住人でも、俺は俺だったようで。
どうにかしないといけないというのは理解しているのに、身近な人だけでもと思うのに。
現状をただただ享受していただけの人間だった。
怖かった。
知っていた。
この世界に歯向かったら、どうなるか。
自分の周りの人間が、守りたいのだと望む人たちが、どうなってしまうのか。
今でも覚えてる、大切な人の記憶。
思い出した、覚えていた。
この世界の薫のこと。
この世界に、社会に強制された、価値観。
見渡したら、転がっているような話。
それでも、怖かった。
自分の大切な人が、幼馴染が。
己の、己が関わったせいで傷つけられるなど、理解したくなかった。
友達だから、何なのだろう。
何もできなかった俺は、俺が仕掛けたものは、本当に友達だと言えるのだろうか。
怖くて、閉じこもった、この世界で生きる一人の人間の話。
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「お…おお…! めちゃすごかった! あのね、しのぶのみんな! 華ちゃんのすごいところは表現力の高さだよね! 何と言ってもネガティブなときの表現力がえげつない! でも、ポジティブ・ハッピーなときのワクワク感(?)みたいなのもしっかり表現するからね〜〜! でも私はこの曲みたいに――」
「ひが、ひがんちゃん!!!!
ストップ、ストップ!! …お願いだから、止まってぇ…!!」
〈アッ待ってかわいい〉
〈すごいのは伝わった〉
〈お母さんに一生懸命話す小学生みたい〉
〈華ちゃん、ガチデレしてるよねこれ…〉
〈需要しか無い配信はここですか…?〉
「でも…なんか…華ちゃんの傷をえぐった気がする
なんかごめんね。そしてありがとう」
「いえいえ! もう前を向いているというか強引に進んだと言うか…進まざるを得なくなったと言うか?
…とりあえず、大丈夫なので! こちらこそ、ありがとうございます。歌う機会をくれて。」
「いえいえ!」
〈おぅ…〉
〈たひぬ。。。〉
〈鋭い観察眼持っているよねこの二人〉
〈え。……………てぇてぇ?〉
〈人の気持ちを慮るのが上手〉
「次は、彼岸さんですね!!」
「華ちゃーん、さっきから思ってたけど、敬語…」
「あっ…」
〈あーーそう言えば〉
〈あっ〉
〈忘れて種〉
〈そう言えばそうだな〉
〈忘れちゃ駄目でしょ〉
〈なんか違和感あると思ったらそれか〉
「…彼岸ちゃんの番だね!!」
「よろしい。じゃあ、行きまーす」
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ある理想の未来を想像した日々だった
それの投影先がこの曲だった。
ほしかった未来はもうなくて
君がいないなら私はもうだめで
あなただけでも、いてくれたら。
それで良かったのになぁ
私の心の奥深いところに根ざして咲く「一等星」。
深い心を傷つけたこの思い出を忘れることなんてできるはずもなくって。
あなた以外にはもう考えられないよ
「愛情」はあなたがいたから分かったのに。
「憧れ」は君がくれたのに。
眩しい「一等星」はもう届かなくて、
手を伸ばしても捕まらなくて。
それでもずっとずっと手を、伸ばし続けて。
あなたの光は
あなたのから遠く離れた私の心を
淡くそっと照らしてくれた
―――今もずっと永遠に
あの思い出を。
私はあなたとの「愛情」と定義する。
もうあなたに私は届かない。
それでも、私は変わらずあなたを私の「一番の一等星」と言おう。
それが、今でも私とあなたを絆いでくれる。
私を「わたし」でいさせてくれる。
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「ほわぁ…。すごかった…これは語彙消滅します…」
「ふふふ、それほどでもないですよ?」
〈88888〉
〈流石〉
〈888888888888888〉
〈8888888〉
〈8888〉
︙
〈彼岸ちゃんはマシンガントークするタイプで華ちゃんは語彙力なくすタイプのオタクか〉
〈それはそうね〉
〈すごかった〜!!〉
「なんと言いますか…圧倒されましたね…!」
「嬉しいな!」
〈わかる〉
〈彼岸ちゃん強い〉
〈まじ歌上手い〉
〈歌い方すこ〉
〈戻った〉
〈犬系Vチューバー〉
「えっと、私って、なんか大物Vチューバーっておっしゃられること多いんですけど、OurTube始めたの約2年前なんですよね」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「私ってまだ学生なので、思い出に残った出来事が少ないんですよね…。今回めっちゃ選曲時間かかって」
「あ、ああ…そうだね。彼岸ちゃんはまだまだ子供だもんね!」
〈そうか、二年前か。〉
〈たしかにね〜まだ小娘って言われるような子だもんね〉
〈濃い人生は歩んでいるとは思う〉
〈は、なちゃん?〉
〈なんかめっちゃ強調してません?〉
〈子供の部分!〉
「ちょっと? 華ちゃん?」
「うそうそ、冗談ですよ? まさか、大人な彼岸ちゃんなら分かりますよね? …ふふふ」
「むーーー」
〈操られてるww〉
〈ひぇ、ふふふ…の破壊力ぅ…〉
〈子供っぽいねぇ…〉
〈華ちゃんwww〉
〈彼岸ちゃんwww〉
〈むーーってかわいいな〉
「次は私の番ですね?」
「あ! 逃げた! まあ、気合十分だね?
どうぞ〜!」
##
「…―――」
音が、歪んでいく。
昔の光景がフラッシュバックする。
閉じこもった。
考えないようにした。
思い出さないようにした。
話さないようにした。
誰にも見られないようにした。
見ないで、考えないで、離れていて。
俺の近くは、駄目だから。
残酷な世界は、
likeを表すだけで、友人を傷つけてしまうから。
解っていなかった俺に、なにかできるとしたら。
それはもう、
離れることだけだから。
寂しさもなく忘れてしまえる関係であったのだとしたら、どんなに良かったか。
自分で離れると決めたはずなのに、心が痛くて。寂しくて。
それもなかったことにして。
少しでも関われたことに喜ぶ心に、蓋をして。
俺の我が儘が、君を傷つけるのなら。
いっそこのまま、その我が儘に溺れて破滅してしまえればいいのに。
《今回参考にさせて頂いた曲》
一曲目【彼岸花】☆水野あつ様 生きる
二曲目【咲久和 華】☆みきとP様 少女レイ
三曲目【彼岸花】☆ロクデナシ様 スピカ
四曲目【咲久和 華】☆ぬゆり様 フラジール
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