55 総合評価1,000pt記念・【真の実と書いて】五万人記念配信❀歌枠【真実】②
「はいっ! テステスっ! 聞こえてますか〜っ!!」
待機画面から配信画面に切り替わって数秒後。
ゆらゆらと2Dの身体が揺れ始める。
〈聞こえてる〉
〈OK〉
〈おけまる〉
〈聞こえてるよ〜〉
「ん゛ゔん゛……。
……皆様、おはこんばんにちは!! 男女比異世界転生系VTuber、【咲久和 華】です!」
少々咳払いをして声を整えてからしっかり挨拶をしていく。
何々系VTuber、というのは時々華の気分によって入る称号のようなもの。
華はその時の気分によって色々と挨拶を変えているため、華っ子たちにとっては通常運転でしか無い。
〈おはこんばんにちは〉
〈おはこんばんにちは!!〉
〈五万人おめでとう!〉
〈おはこんばんにちは❀〉
〈おはこんばんにちは〜 [彼岸花]〉
「今日は…本日は? 私、【咲久和 華】のOur Tubeチャンネル登録者数五万人記念歌枠にお越しいただき、誠にありがとうございませす!! …かんだ!」
〈このちょいぽんがかわよい〉
〈ちょいぽんな〉
〈ちょいぽんw〉
「全く、ちょいぽんちょいぽんと………事実ですけども。」
〈認めるのね〉
〈ちょいぽん華ちゃん〉
〈草〉
〈潔い〉
「………ということで本日は歌枠ということでね!!」
流石にいたたまれなくなったのか、強引に話題転換をする。
〈話題変換〉
〈あからさま〉
〈急な話題変換乙〉
「歌枠ということでね!! ええ! 歌いまくりますけれども!
……準備はいいですかー!!」
〈良いよ〉
〈ダイジョウブ〉
〈うったうった♪〉
〈歌枠〜〜貴重な〜〜歌枠〜〜〉
〈なんで?〉
〈人前で歌うの恥ずかしいって言ってたなそういや〉
華の兄―――【黒霧 塔矢】や【白泉 葵】などとは違い、彼女は歌枠をほぼしない。
その理由をリスナーに聞かれた時、華はこう答えた。
『人前で歌うのがちょっと恥ずかしいんだよ! うん!』
それを、きっちり華っ子は覚えていたのだ。
そうなんだ、と納得したリスナー達によってそのコメントは流れていった。
自身の発言を一から十まで把握されていることにちょっと驚きと、しっかり配信を見てくれているという嬉しさが入り混じり、少し曖昧な笑みを浮かべた華も、数秒するといつもの笑顔に戻り、話し出す。
「OKなようなので、早速セトリ出しますね〜〜?」
ちょっとまっててくださいね、と言ってゴソゴソとしだす華。
数秒の後、桜の形をしたセトリが表示される。
〈ゆーめーなやつばっか〉
〈ボカロ(人´∀`).☆.。.:*・゜ある〉
〈七曲だー〉
〈少なめ?〉
「そうですね〜…雑談の時間含めてですから、ちょっと少なめ七曲です!
…あんまり時間もないですし! 歌ってしまいましょう!」
早速、一曲目の題名を言って、音源をかちり。
―――リズムを取る音。
それとともに、華も数秒、瞳を閉じる。
再び、その瞳が開けられたときには、隠しきれない情熱と真剣さが輝いていた。
歌うとこまでいけませんでした…。




