49 答えを見つけずにはいられないが故に
長文多めで少々シリアス風味が入ってますがご了承下さい。
「は? ………………………………………………何でそれ、知ってんの。おかしくね?」
べりっと、仮面の剥がれた音がした。ような気がした。
凪くんの表情は硬い。
そりゃそうだ、凪くんにとっては赤の他人にも等しいはずの雨が、彼のことを知っているのだから。
雨の情報網を知らなきゃ、ただの変質者、あるいはバケモノ。
凪くんからは、敵意がひしひしと感じ取れる。
「あはは、そんなにおかしい?
自分の学校の生徒だよ?
全員、顔も名前も趣味嗜好も、一致してるに決まってるよね?」
それは全部、見ればわかることだと。
ずっと見ていれば、わかることだと。
雨は言う。
自分にできるのだから他の人たちにだってできる、と。
そんな訳はない。
雨が他人の思考を読んだり、癖を見抜くことに長けている、長けすぎているだけである。
どこに誰が居るのか、どんなことをしているのか、それを把握し、視界に入った全てを記憶し、前の事例とつなぎ合わせ、パターン化してある人間の思考の中から最も近いものを選ぶ。
そこからさらに調査が必要な部分を導き出し、それを対象の些細な動作から、日常会話から引きずり出す。
そうして出来上がっていく、人へのプロファイリング。
彼女の原動力は、好奇心と、警戒心。
この人の可能性とは何なのだろうか、自分はどこに当てはまるのだろうか、自分の本質とは何なのだろうか、他の人の原動力とは何なのだろうか、私の本心とは何なのだろうか、他の人の目からみて、自分は異質ではないだろうか、嫌われてしまわないだろうか、心を許して良いのか、許してはいけないのか、他の人は自分と同じなのだろうか、もっと、もっと要領よくできる方法はないのだろうか、自分は、一体何なのだろうか―――
いくつもの純粋な疑問の答えを見つけるために、雨は幼い頃から人を見てきた。学んできた。
そんな雨だからこそ、この芸当をなし得ている。
「は…? それ、って何人分―――」
「一学年が百七十名、それの掛ける六。つまり、千二十名。それに加えて、小中高と転校していったりしてきたりした人たちを合わせて、千七十三名。他にも、姉妹校の人たちとか、私が交流した人たちを含めちゃうと―――そして、学校関係者だと―――まぁざっと、二千五百は超えてるかな?」
これはもう癖のようなものなのだと、雨は言っていた。
疑問の答えを、見つけずにはいられないのだと。
「知りたい」のだと。
が、故に―――
「…………なんなんですか。バケモノですか、貴方は……。」
「……? 知りたいことを知って、何が悪いんだい?」
雨は、首を傾げる。
君たちだって、わからないことがあったら、知りたいと思ったら、知ろうとするだろう? と。
凪くんは、そんな雨を異質なもののように見ていて。
二人のやり取りを見ていて、本当に、と俺は思う。
―――本当に、雨は不器用だ、と。
「はぁ〜…………雨。
悪ふざけはやめなさい。」
そう。コレは悪ふざけ。
雨だって自分が他の人より能力が優れているのは承知のこと。
雨がこんな風に、狂人のように振る舞うのは、彼女がふざけているからなのだ。
雨は、怖いのだ。
相手にされなくなるのが。
誰かに見てもらえなくなるのが。
だからこそ、すぐふざける。変人を、狂人を演じる。
見てもらえるように。飽きられないように。
「…………留依兄…。」
雨がどんな姿を見せようと、俺は、雨を見続ける。構い続ける。
ただの寂しがり屋。
それこそが雨の本質なのだから。
雨ちゃんの「本質」、いかがでしたでしょうか。
無計画で始まった幼馴染編ですが、雨ちゃんのことが書けたので満足です(*´∀`*)
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