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男女比率1対100の世界で男の俺がVはじめました。(ただしVのときの性別は女である。)  作者: おまめあずき×梅崎さくら
第三章 波乱…………
49/83

49 答えを見つけずにはいられないが故に

長文多めで少々シリアス風味が入ってますがご了承下さい。


「は? ………………………………………………何でそれ、知ってんの。おかしくね?」

べりっと、仮面の剥がれた音がした。ような気がした。

凪くんの表情は硬い。

そりゃそうだ、凪くんにとっては赤の他人にも等しいはずの雨が、彼のことを知っているのだから。

雨の情報網(スペック)を知らなきゃ、ただの変質者、あるいはバケモノ。

凪くんからは、敵意がひしひしと感じ取れる。


「あはは、そんなにおかしい?

自分の学校の生徒だよ?

全員、顔も名前も趣味嗜好も、一致してるに決まってるよね?」

それは全部、見ればわかることだと。

ずっと見ていれば、わかることだと。


雨は言う。

自分(凡人)にできるのだから他の人たちにだってできる、と。


そんな訳はない。

雨が他人の思考を読んだり、癖を見抜くことに長けている、長けすぎているだけである。


どこに誰が居るのか、どんなことをしているのか、それを把握し、視界に入った全てを記憶し、前の事例とつなぎ合わせ、パターン化してある人間の思考の中から最も近いものを選ぶ。

そこからさらに調査が必要な部分を導き出し、それを対象の些細な動作から、日常会話から引きずり出す。

そうして出来上がっていく、人へのプロファイリング。


彼女の原動力は、好奇心と、警戒心。

この人の可能性とは何なのだろうか、自分はどこに当てはまるのだろうか、自分の本質とは何なのだろうか、他の人の原動力とは何なのだろうか、私の本心とは何なのだろうか、他の人の目からみて、自分は異質ではないだろうか、嫌われてしまわないだろうか、心を許して良いのか、許してはいけないのか、他の人は自分と同じなのだろうか、もっと、もっと要領よくできる方法はないのだろうか、自分は、一体何なのだろうか―――

いくつもの純粋な疑問の答えを見つけるために、雨は幼い頃から人を見てきた。学んできた。

そんな雨だからこそ、この芸当をなし得ている。


「は…? それ、って何人分―――」

「一学年が百七十名、それの掛ける六。つまり、千二十名。それに加えて、小中高と転校していったりしてきたりした人たちを合わせて、千七十三名。他にも、姉妹校の人たちとか、私が交流した人たちを含めちゃうと―――そして、学校関係者だと―――まぁざっと、二千五百は超えてるかな?」


これはもう癖のようなものなのだと、雨は言っていた。

疑問の答えを、見つけずにはいられないのだと。

「知りたい」のだと。

が、故に―――


「…………なんなんですか。()()()()ですか、貴方は……。」


「……? 知りたいことを知って、何が悪いんだい?」

雨は、首を傾げる。

君たちだって、わからないことがあったら、知りたいと思ったら、知ろうとするだろう? と。

凪くんは、そんな雨を異質なもののように見ていて。

二人のやり取りを見ていて、本当に、と俺は思う。


―――本当に、雨は不器用だ、と。


「はぁ〜…………雨。

悪ふざけはやめなさい。」

そう。コレは悪ふざけ。

雨だって自分が他の人より能力が優れている(と違う)のは承知のこと。

雨がこんな風に、狂人のように振る舞うのは、彼女がふざけているからなのだ。


雨は、怖いのだ。

相手にされなくなるのが。

誰かに見てもらえなくなるのが。

だからこそ、すぐふざける。変人を、狂人を演じる。

見てもらえるように。飽きられないように。


「…………留依兄…。」

雨がどんな姿を見せようと、俺は、雨を見続ける。構い続ける。


ただの寂しがり屋。

それこそが雨の本質なのだから。

雨ちゃんの「本質」、いかがでしたでしょうか。

無計画で始まった幼馴染編ですが、雨ちゃんのことが書けたので満足です(*´∀`*)


誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。

また、感想なども遠慮なくお願いいたします。

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