48 特大の爆弾☆
「は?
……。え???? ………………え、あ、んーと、あ、とりあえず、座ります?」
そう言って、困惑しつつリビングに案内してくれた凪くん。
向こうの世界では何度も来たことがあるが、この世界では初めてだ。
あれ。
向こうの世界とは全く別の家具しか置かれていない。
向こうの世界では花柄の物で溢れていたはずのリビングが、パステルカラーで統一されたスッキリしたインテリアになっている。
そういえば、漂っている香りも前とは又違う、お日様の匂いになっていた。
向こうの記憶との不一致に、俺は軽く首を傾げる。
仕方がないか。
向こうとこっちは違うんだから。
少し寂しくなりつつも淡いグリーンの二人がけソファーに座る。
「お茶用意しますね。」
「あ、ごめんね。」
「いえいえ。」
そう言って凪くんがいなくなると、
「わ、このクッション可愛い…。」
早速雨が置かれていた肉まんのクッションに反応を示す。
さっきは凪くんが居るからって我慢してたからな。
まんまるの肉まんクッションをぎゅっと前に抱えてご満悦だ。
あ、よく見ると顔もついてる。「・ω・」←こんな感じの。可愛いな、これ。
「ほわぁ……もちもち…。」
肉まんをもちもちする雨。
その姿を見ているだけで癒やされる。
最近色々と準備で疲れてるからなぁ…。
「はい、どうぞ。粗茶ですが。」
ことん、とマグカップに入ったお茶を出してくれる凪くん。
ありがとう、とお礼を言って口をつける。
あ、これ林檎のお茶だ。飲んだことある。
美味しい。
「ご、ごめん凪くん。砂糖、もらっても良い?」
「あ…忘れてました。持ってきますね。」
後輩の家だからって、見栄を張ってちょこっと飲んだ雨が、苦かったのか、口元を抑えて凪くんにお願いする。
やばい、家の妹可愛い。
「はい、どうぞ。」
「ごめんね、ありがとう……。」
ハート形や星形、月形など色とりどりな砂糖が入ったガラスの瓶を持って帰ってきた凪くん。
それを受け取った雨は早速何を入れようかと考えているようだ。
雨が検討の末、花形と月形の砂糖をお茶に溶かして一口飲み、全員が一段落した頃、凪くんが口を開く。
「今日、何かあったんですか?」
「あぁ…えーっと…。」
まさか凪くんが【MOMONGABYAKKO】だって知ったから…なんて言えないので目線をそらしていると、雨がかわりに答える。
「あはは、特に特別な用事はないよ。
でも、【エリィナ・アーレンス】ちゃんに用事があって。まぁ、聞ければ良いなぁ〜、って感じかな。
今日はもう無理そうかな?」
「【エリィナ・アーレンス】……あぁ。薫ですか。」
? 誰だ?
「お兄ちゃん、薫さんのVTuberのときの名前!(小声」
あぁ、そっか。
薫がVTuberをやっているってことは聞いていたけど、名前は聞いていなかったから分からなかった。
え、まて?
【エリィナ・アーレンス】って、向こうの世界にもいたよな?
つまり、向こうの世界でも薫はVTuberだったってことか。
………全然気が付かなかったんだが。
地味にショックだ。
「【エリィナ・アーレンス】は登録者百万人超えの人気VTuber。
君は、登録者二十六万人だっけ。頑張ってね☆」
「ちょ、雨!?」
「は?」
雨が特大の爆弾を落とした。




