43 D.Y.D
朝ごはんも終わり、俺は自室に戻ってきていた。
「……D.Y.Dかぁ…。」
頭を悩ませているのはあの、【文世蜜慈】さんのDMのこと。
正直、D.Y.Dについてはよく知らない。
表に出ている情報がそもそも少なく、『男性を嫌っている』という部分しかよくわからないからだ。
よくわからないのに判断するのは駄目だと思うんだよなぁ…。
―――コンコン
「はーい。」
返事をすると、躊躇なくドアノブを回すガチャリという音が鳴る。
「よーっす、お兄ちゃん! 可愛い可愛い雨ちゃんが来ましたよーって!」
「いやテンションどした」
「ノリ。」
と、そんなやり取りをしながらサラッとベッドに腰掛ける雨。
「んで、要件ですが。
お兄ちゃんのことだから、D.Y.Dについてよく知らないから【文世蜜慈】をブロックするかどうか迷ってたんでしょ?」
「……おっしゃるとおりです。」
「なので、資料持ってきたよ〜。
私だって情報0でブロックしたわけじゃないし。」
正直めっちゃありがたい。
「ありがとう」
「どういたしまして〜。はい、資料。」
説明するね、と自身も俺がもっているものと同じ資料を持ちながら雨は説明を始める。
資料はよく作り込まれていて、さすがとしか言いようがなかった。
「まずは基本知識。
D.Y.Dの発足は20XX年、4月。正確な日付はわからないが、【文世蜜慈】や【リリアンナ・バーンデッド】などのD.Y.D立ち上げメンバーであるVTuber他四名が表立って自身がD.Y.Dに加盟していることを表明したのは4月19日〜5月6日。日付に関連性は特になし。
立ち上げメンバーは四名。
さっきも言ったけど、
VTuberである【文世蜜慈】、【リリアンナ・バーンデッド】。
音楽クリエイターの【五月雨-May rain-】、そして暴露系OurTuber、【MOMONGABYAKKO】。」
「思ったより、知らない人が多いな。」
聞き馴染みのない名前に、思わず口を挟んでしまう。
「そりゃそうでしょ。だって、向こうの世界(男女比がほぼ同じ世界)では弱小とまで言われていた人たちだもん。
………流石に【MOMONGABYAKKO】は知ってるよね?」
雨がこちらを試すように見やる。
「そりゃあ、【MOMONGABYAKKO】はな。」
暴露系OurTuber、【MOMONGABYAKKO】。
その名前は向こうの世界でも有名で、『正義の執行者』やらなんやら言っていた。
俺がその名前を知っているのは、兄ちゃんたちの有る事無い事をスクープとして取り上げて、炎上―――所謂炎上商法というやつをやられたからだ。
正直、苦手である。
VTuberではないが、その特性上(暴露系)、顔を隠している。
「【MOMONGABYAKKO】って、女性だったんだな。」
「いや? 男性。」
「えっ。」
正直、【MOMONGABYAKKO】が男性だということよりも、雨が何故その情報を知っているのかに驚いた。
「いやぁ、【MOMONGA・BYAKKO】の中の人………………………
うちの中学の子でさ。」
「は?」
これはまた、思わぬところで縁が繋がったものである。
な……なぜ………何故男子が出てくるんだ………。女子を……女子を出したいのに……っ!!
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