39 外部コラボ! ③
ここ最近、スランプになってしまっています……。すいません…。
「……はい! ということで、彼岸花さんが体調不良で10分ぐらい休んでくるので、私が引き継ぎますね!」
〈よろしく〉
〈おねしゃーす〉
〈―このコメントは削除されました―〉
「ん〜。何しましょうか?」
〈歌〉
〈なにするん〉
〈歌〉
〈歌以外ありえん〉
〈得意なことは?〉
〈雑談〉
〈歌〉
「あー、これは私のリスナーさんたちですね…。
歌をやれ、と。はい。わかりましたよ、もうヤケクソですよ。」
〈wwww〉
〈なんでこんなに歌を推すの?〉
〈Disappear歌って〉
〈ヤwwケwwクwwソww〉
〈草〉
「じゃあ、リクエストで……と言いたいところですが、最初と最後、私の好きな曲を歌わせてください!」
〈どぞ〉
〈なになに〉
〈どーぞ〉
〈((o(´∀`)o))ワクワク〉
「じゃあ、聞いてください。『猫が泣いてる』。」
柔らかな前奏が流れ出す。
〈猫泣!?〉
〈まじか〉
〈華ちゃん………〉
〈名曲!〉
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『悪者でも良いですか? 同じじゃなくてもいいですか? それでも、良いことをしたって いいんでしょうか』
モニターだけが薄ぼんやりと光を放つ部屋で、布団にくるまり、華の歌を聞いている人物がいた。
「……。」
『「いいんだよ」って 君は言うけれど 怖いんだよ あぁ ねえ』
『同じじゃなくて良いんですか 本当に? 世界を敵に回してしまっても良いんですか』
『怖いものがないなんて人は いないでしょう?』
『ねぇ、また歩こうよ』
のろのろと、くるまっていた布団からでてくるその少女は、画面上の姿とは似ても似つかぬ表情をしていた。
「……華ちゃん…。」
ぽつりと、その少女―――VTuber・彼岸花の現実、天菜は呟く。
自分の中身を歌ったような、癒やすようなその歌に、彼女は透明な雫をこぼす。
「……ご、めん。ごめん、ごめん…なさぃ。……ごめん、ごめんなさ、ぃ……ごめん、ごめん、ね……」
もう居ない、彼女の親友をおもい、涙をこぼす。
「あり、ありが、とう。ありがとう…ありがとう…ぅ、ありが、あり………。」
そして、昔の記憶と、向き合う機会をくれた彼女に、華に、リスナーに、そう、何度も言った。




