37 外部コラボ!
あのゲームをしますよ〜。
「はい、こんちゃー♡みんなのアイドル、彼岸花ちゃんだよ〜♡」
〈よーっす〉
〈こんちくり〉
「いつものことだけど、反応うっすいよね〜。ま、当然といったら当然だし、私もやりたくてやってるわけじゃないんだけど。」
〈罰ゲームで決められた口上を律儀にやってて草〉
〈草〉
「うんうん、そんな君たちにビッグニュースをあげよう。
今回はコラボだって告知は見たよね? 見てなかったらオシオキだぞっ☆
……そんな茶番は置いといて。コラボの相手は〜? なんと〜?」
〈もったいぶらずはよいって〉
〈「だぞっ☆」てwwwww〉
「【咲久和 華】ちゃんでーす!!」
〈???〉
〈嘘でしょ?〉
〈んなわけないんなわけない。〉
〈華ちゃん今配信してなかったっけ?〉
〈はいデマ確定〜〉
「デマじゃないし〜。」
「はい、デマではありません! 皆様おはこんばんにちは! 咲久和 華です!」
〈!?!?!?〉
〈まってまって〉
〈脳が理解することを拒んでる〉
〈華ちゃん!?!?〉
「うわぁ……コメント欄が一気に加速した……っね☆」
「それ、無理にやらなくてもいいと思いますよ…。」
「いや…罰ゲームだしね。」
〈語尾をアホっぽくするって罰ゲームだもんなw〉
〈律儀に守ってるところが彼岸ちゃんっぽい〉
「ちょっと〜? 皆さん〜?」
「あはは、それが彼岸さんの良いところですしね。」
「華ちゃんいい子ッッ!! 今すぐ抱きしめたいッ!!」
〈情緒不安定すぎ〉
〈こんなんでも登録者100万人超えの子なんよなぁ…〉
〈本来の呼び名は軍曹ちゃん。でもワイらは彼岸ちゃんと呼んでいる〉
〈軍服っぽい服かわいい〉
「警官の服なんだけど、いつの間にか軍服と勘違いされてたんだよね。
もう訂正するのも面倒くさい…。」
「彼岸さんのところはたのしそうですね!」
〈楽しいぞ〉
〈ワイらのことを一番わかってくれていると言っても過言ではない〉
〈優しいけど時々毒舌になるの好き〉
〈毒吐いてる時好き〉
「…藍美の悪ノリに乗るんじゃなかった…。
まさかゲームに強制参加させられて、しかも罰ゲームさせられるとか思わないじゃん?」
「ああ、アイザックさんですか。
亜麻色の「亜」に衣類の「衣」、桜が咲くの「咲」に、俳句の「句」でアイザック。
藍色の「藍」と「美」しいでアイビー。
合わせて亜衣咲句藍美って読むんですよね?」
「そうそう。すごいよね。」
〈一番名前がややこしいやつ〉
〈通称アイ、藍ちゃん〉
〈初見じゃ絶対読めない〉
「私、最初は「あいさくあいみ」って読んじゃいました。」
「あ〜。私はもっとひどい。「あいざきくあいみ」って読んだ。」
〈ワイ、一発でアイザクアイビまでいった〉
〈華ちゃんと同じ間違いした〉
〈人の名前で間違いすぎだ [亜衣咲句藍美]〉
「ご本人しゃま!?」
「あ、アイビー。」
〈噂をすればってやつやなぁ〉
〈華ちゃんの反応可愛い〉
〈それな〉
〈百合ですか? [楽模 ふわり]〉
「うわ、ふわりまで来て……。もうコメント欄が混沌と化してるよ。もうさっさとゲーム始めちゃおっか。」
「ですね!」
「今回のゲームは、『dead or alive online』です!」
〈デドオアか〉
〈数々のVTuberたちを泣かせたゲームだな。〉
〈泣かせた(意味深)な〉
「正直、ちょっと怖いんですけども…。」
「ま、やるしかないね〜。スタート☆」
〈躊躇なく押したよ彼岸ちゃん〉
〈さすが軍曹さん〉
〈ホラー割と大丈夫だもんね。〉
『―――This is a game world where about 100 players have disappeared. "Are you still going?"』
ゲーム画面に、古い手紙が映る。
「わ、英語…。」
「なになに〜?
………読めない…。」
〈嘘だろ彼岸ちゃん〉
〈バカ代表のポヨリンヌでさえ読めたんだぞ〉
〈おいおい〉
「部分的にはわかるんだよ?
このゲームは〜とか、100人のプレイヤーが〜とか。」
「『ここは、100人のプレイヤーが消えたゲームの世界。貴方はまだ行きますか?』…って書いてありますね。」
「華ちゃんすご…」
〈これは普通…?〉
〈スラッスラ読むね…〉
〈行くに決まってるだろォ!!〉
「まだ行くよね、そりゃ。」
『Then let's go. new player…….』
どんどんと赤く染まっていく画面。そして後ろで響き続ける狂った笑い声。
そして、全画面が
「っっっっっっっ!?」
「!?」
〈はいきたー〉
〈華ちゃんの無言の悲鳴可愛いな〉
〈彼岸ちゃん目ぇかっぴらいてるのマジで草〉
『―――Hello…。Do you understand this language?』
「幼い声だね。4〜6歳くらい?」
「でもちょっと大人びているような…不思議な声ですね〜。」
そう言いながらも、ウィンドウを操作するのは忘れない。
〈不思議な声〉
〈子供〉
〈ふっふっふ(意味深〉
『…大丈夫みたいだね。貴方のお名前は?』
「どうする?」
「いや、もちろん彼岸さんのお名前を!!」
私ただただ見てるだけの観客なんで、と続ける。
〈これ操作してたの軍曹だったんかい〉
〈あれ、華ちゃんは一緒にいないの?〉
〈毎度毎度軍曹さん忘れすぎwww〉
「ん〜? ああ。華ちゃんとは通話で繋がってるだけで、一緒にはいないんだよね〜。」
「家族が許してくれなくて……すいません。」
彼岸花先輩の家行ったほうが良いのかな、と居間で留依が話していたら、それを聞いていた雨、黒葉、白夜が怒り、今一度自分の立場―――100分の1の貴重な男児ということ―――を理解させられたのはこのコラボの1週間前のことだった。
「もしかして未成年?」
「あ、いえ。未成年ではないんですけど、まだお酒を飲める年ではないですね〜。」
〈つまり18か19〉
〈大学生か〉
〈おお〜。若い〉
そんな会話をしている間にも、物語は進む。
『へぇ…〈ひがんばな〉、かぁ。あ、そっちの貴方は?』
「えっっっ。」
「隣に誰かいたんだね。びっくりしたわ。」
〈冷静だなぁ彼岸ちゃん〉
〈そりゃそうだろ、ホラゲのプロやぞ〉
〈ホラゲばっかやらされてたからな、罰ゲームで。〉
〈耐性ついてるよそりゃ…〉
画面に、横にいた人物が映る。
「!?」
「男の子、ですね。
わ、髪の毛キレイ…。」
〈!?〉
〈きたああぁああ〉
〈ふぉおおおおおおおおおおおお〉
〈(^ω^)〉
〈華ちゃん冷静〉
映ったのは、10〜12歳くらいの男の子。
黒髪黒目で、やや釣り上がり気味の目が性格を表している。
「……え、男? マジ?」
「あ、名前出てきました。」
『…アルフ。』
〈あるふくんあるふくんあるふくn〉
〈結婚しよう〉
〈年上のお姉さんは好きですか?〉
〈なんか俺に似てね? [黒霧 塔矢]〉
「あ、兄ちゃん。…たしかにちょっと似てるかも?」
「? あ? え? ??????」
〈軍曹さん壊れた〉
〈誰かーだれかー救急車ー!〉
〈男の過剰摂取っすね〉
〈しょうがない〉




