36 くろの心の内
アイデアの神が降りてきたので、前話の内容を少し変更しました。
ご了承ください。
くろ君のお話です!!
今の黒くんとはギャップが激しいかもしれません……。
俺の名前は櫻岐黒葉。
しろ―――白夜の双子の兄だ。
幼い頃、俺の認識はかなり歪んでいた。
自分と、自分の家族以外の人を愚民だと認識していたことがあったのだ。
―――だって、あいつらは俺より下だから。
頭が悪いから。
俺にとっては簡単なことも、できないから。
あいつらは下だ、と。
そうやって、傲慢に生きていた俺に、転機が訪れる。
弟ができたのだ。
俺に、弟が。
白夜は、弟というよりは相棒のような感じで、だから、留依は俺にとっては初めての弟のような感覚だったのだ。
留依。
俺の、弟。
初めは、実感がわかなかった。
でも、だんだんと慣れていって。
俺は、にこにこと無邪気に笑う留依の姿が憎らしくなった。
弱くて、誰かの庇護を受けないと生きていけない、こんな赤ん坊が、俺の弟だなんて。
でも、可愛くて。
こんなに天使のような見た目をした、可愛い赤ん坊が、俺の弟だって。
みんなに自慢したかった。
留依は、すくすく育っていった。
歳を重ねていくうちに、全てにおいて俺たちを抜かしていった。
勉学も、容姿も、全て。
少し、羨ましかったのは、秘密だ。
でも、それ以上に留依は優しかった。
そんな留依を、好きにならないわけがなかった。
留依のことが好きなのに、可愛いと感じていたのに、その感情のことを憎しみとしか幼い俺は表現できなかった。
でも、これは紛れもなく愛情だった。
愛情と、醜い嫉妬心が絡み合って、ぐちゃぐちゃになって。
むしゃくしゃしていた俺は、留依に無理難題をふっかけるようになった。
まだ生まれてから四年しかたっていないのに、やれ素因数分解だとか、仮定法だとか。
でも幼い頃から留依は天才で。
難なくこなしてしまうから、俺は、留依が無理していることに気が付かなかった。
留依が、苦しい、と。嫌だ、と。
優しさから言わなかったことに、俺は気付けなかった。
影で血反吐を吐きながら必死に努力をしている留依を、見ていなかった。
努力もせずに、難題を解いている留依に、逆に嫉妬した。
しろからは、何度も注意をされた。やりすぎだと、何度も何度も。
でも、何度も言われたことが幼い俺の心を逆なでした。
ついに留依が倒れた。風邪だそうだ。
聞いたときは、耳を疑った。
なぜ、留依が倒れるのか、と。
留依は、いつも元気そうで、軽々と俺たちの上に行って…。
ただの体調不良なんだろう、と思うことにした。…心のどこかでは、そうじゃないんじゃないか、と思っていたのに、それを無視した。考えないようにした。
留依が倒れて、少しした後。
しろが、俺に掴みかかってきた。
わけが分からなかった。
しろは、気がついていた。
留依が無理をしていることも、俺がそれを強要してしまっていたことも。
気づいていた。気づいていたからこそ、俺に何度も注意をしていた。
―――しろと俺が、ここまで激しく喧嘩したのは、後にも先にもこのときだけだ。
それぐらい、このときの喧嘩は激しかった。
しろが、留依のことを教えてくれた。
そんなはずはない、と口では言いつつも、わかっていた。
留依が、努力をしていたと。
もちろん、天賦の才もあったのだろう。でも、留依は努力を怠ったりしなかった。
だから、あんなにすらすらと難題を解き続けられたのだ。
留依の風邪はすぐに良くなった。
ごめん、ごめん、と何度も留依に言った。
そんなんじゃ足りないし、許してもらえるはずがないとわかっていたのに―――
留依は許してくれたのだろう。
でも、俺はずっと、ずっと―――…。
………しばらくして。
雨が生まれた。
俺たちとは違って、女の子。
初めての妹だった。
そのころ留依は6歳で、来年小学校に入学する頃だった。
だが、留依は5歳年上の俺より大人びていて、それでいて子供っぽい無邪気なところも残した、優しい子に育っていた。
雨は、俺に甘えてきてくれた。
俺はそれに答えようと、必死で努力した。
天才? そんなわけがない。
俺に比べたら、留依や雨、しろのほうが天才だ。
俺はこの兄弟で唯一の凡人だった。
でも。
留依が、俺を人間にし、努力を教えた。
雨が、俺を兄にした。
だから俺は天童と呼ばれるまでになった。
所詮、凡人。
されど、凡人。
―――俺は留依や雨や白が好きだ。大好きだ。
この力は、ずっと、守るために。
ふとんがふっとんだー。
くろくんがかっこいいこと言って締めたところを下手なギャグでぶち壊していく作者です!!
何も意図はないです、申し訳ございません。
ついに波乱が巻き起こります(多分)。
ただ、筆者は波乱とかそういうのを書くのが苦手なのでご容赦くださいませ……。
誤字脱字などがありましたら、遠慮なく誤字報告をお願いいたします。
また、感想なども遠慮なくお願いいたします。




