29 悔しさ
み じ か い です。
話の都合上、800文字という少なさになってしまいました。
申し訳ございません_:(´ཀ`」 ∠):
巫山戯るな。
なんで、この子が、こんな目に合わないといけない??
おかしい。
この世界は、おかしい。
この子に、そんな事をした女の子達も、こんな事をしたかったわけじゃない。
ただ、ただ。
『自分を愛して欲しい』
『求めて欲しい』
そんな事を、願ってただけのはずだ。
こんな世界、無ければ。
男の数が、減少なんてしていなければ。
彼女たちが、汚らしいと、醜いと、世間からそんな風に思われる事すら、なかったはずだ。
こんな世界、なければ良いのに、なんて考えてしまう。
わかってる。
この怒りの行き場なんてないんだって。
しょうがないんだって。
けど、事実。
真人くんも、加害者の女性たちも。
普通の、俺たちにとっての普通の、男女比なんてほぼ一緒の、あの世界に、生まれていれば。
こんなに傷つくことは、なかった。
その事実に、沸々と腹の奥から怒りが込み上げる。
俺が、俺たちだけが知っている世界との、差。
その差を、俺はまだあまり実感していなかった。
なぜなら、身近にそんな差がなかったから。周りの人間ほぼ全てが、違う世界を知っていたから。
そんなギャップ、感じなかった。
でも。
こうして苦しんでいる人を目の当たりにすると、どうしても思ってしまう。
———『救いたい』。
そんな思い、現実的じゃない。
小説、アニメ、映画———そんなフィクションの中でしかありえない、できないこと。
だから、俺にできることは少ない。
ただ、Vとして。
『咲久和 華』として、自分の思いを、考えを、発信する事だけ。
それすら、届くかどうかわからない。
それがあまりにも、悔しくて。
ただ、今は。
ぎゅっ、と、震える真人くんを正面から抱きしめる。
そして、上から自分と違う温もりが二つ。
しろ兄ちゃんと、くろ兄ちゃん。
そして、俺と雨。
———四人の兄妹は、それぞれの気持ちの中、ただ、泣いている真人を抱きしめた。




