25　お兄ちゃんとお姉ちゃん

私の名前は雨(あめ)。

櫻岐(さくらぎ)雨。

いきなりだけど、うちには３人の兄がいる。

子供っぽいけど、いつも悩んでいたら助けてくれる、黒葉(こくば)お兄ちゃん。

いつも冷静だけど、１番家族のことを思っている兄、白夜(びゃくや)お兄ちゃん。

優しくて、ちょっとおっちょこちょいだけど、スパダリな留依(るい)お兄ちゃん。

そして、全員ハイハイハイスペック（めちゃくちゃスペックが高いから、ハイは３回言ったよ）。

というか、うちの人全員ハイスペック。

私？　私は普通に近い気がする。

劣等感とかそういうのはなくて、逆にハイスペックの人たちの苦労を見てきたからハイスペックにはなるべくなりたくなーい、って感じかな。

ゆるーく生きていきたいんだよね。

そんな私がこの世界に来たのが、1ヶ月前？　くらい。

もうほんとにその時は大変だった。

この世界の常識もなにも知らないときに出歩くなんて自殺行為みたいなもんだからね、学校は休んだよ。

その後、めちゃくちゃ情報を集めたから大変だったよ〜。

前の世界と同様、情報源となる人をいっぱい集めてたみたいだったから、一からやるよりかなり楽ではあったけどね。

………と、話がそれたね。

うちの三人の兄たちはそれぞれがなにかの天才。

それ以外のことももちろんそつなくこなすけど、一つだけ別格とも言えるほど突出している。

くろお兄ちゃんだったら、フィジカル。

しろお兄ちゃんだったら、頭脳。

るいお兄ちゃんは……うん、チート！

るいお兄ちゃんだけはなにが突出しているのかがわかりにくい。

ただ、ヤバイ。

頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能…。

くろお兄ちゃんやしろお兄ちゃんも勿論当てはまるが、るいお兄ちゃんは別格というか。

ステータスとかがあったらまんべんなく振り分けられている感じかな。

なにが１番ヤバイって、「るいお兄ちゃんを妬む人が居ないこと」だ。

だいたい、こういう主人公系の人ってどうにも肌に合わない、妬んでしまう人はいる。

そのはずなのに、しろお兄ちゃんたちだって居るのに、るいお兄ちゃんだけいない。

この異常さが分かるだろうか？

どんな人にも受け入れられる人間性こそが、るいお兄ちゃんのすごいところということである。

しろ兄ちゃん、くろ兄ちゃんいわく、るいお兄ちゃんも最初からこうだったわけじゃないそう。

むしろ、いじめられっ子だった………らしい。

いや、今の姿からは全く想像できないけどね。

そんな状態から、るいお兄ちゃんはみんなに好かれるようになっていった。

…ただ、人間性だけじゃないのがお兄ちゃんのヤバイところ。

くろ兄ちゃんやしろ兄ちゃんがいくら完璧人間に見えるからって、得手不得手があるのはしょうがない。

現にくろ兄ちゃんは家事全般が苦手だ。

うん、最初に言ったけど、るいお兄ちゃんスパダリよ？

苦手なことってむしろあるん？　ってくらいの完璧人間よ？

う〜ん、これだけじゃなに言ってるか分からんかもだけど、ウチの兄たちはすごい！

だから、どうにかしてこの世界の獣(ケダモノ)から守らないといけない。

まずまず、Vtuberとしてめっちゃ人気集めちゃってるんだから注目度が半端ないのよ。

特にるいお兄ちゃん。

女Vtuberで、男性Ｖとコラボすると誹謗中傷の嵐になるこの時代、ばんばんコラボしやがって……。

…と、学校では品行方正と言われる私の口調が荒っぽくなるくらい大変なのだ。

今はどうにかしてそういう証拠とかを全部消してるけどさぁ…。

疲れたぁ……。

しかも、学校では数少ない男子生徒を狙って女子生徒が群がるしさぁ…。

こっちは生徒会長だからその対応に追われてんのよ！！

ふざけんな。

いやぁ…。

もう、男子生徒専用の教室でも作ろうかな？

あ、それ良いかも。先生もいい加減イライラしてるでしょ（先生は百合が好きな人とか、BのLが好きな人とかしかいないよ。だって騒ぎ起こすし）。

作っちゃお。

と、いうことで、私はめっちゃ疲れてます。

安息の地(自分の家)もただの仕事場と化してるし、外なんて、もう……。ね？

もう逆に爆弾投下しちゃいたい気分なのよ。

だから、だからね！

爆弾、投下！！

―――雨が自費で作ったパソコンの画面には、掲示板の様子が映されていた。