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特技媚びる!の 底辺無能おっさんは1000年後の未来で自分の元奴隷に会うが……えっ?どういう事??  作者: バナナ男さん


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6 サン

「お、おい、生きてるか?」


するとその青年はピクリと目を僅かに見開いた様な気がするが、反応はない。

大丈夫なのか?と思ったが、手の甲に小さな魔法陣が描かれているのに気づき、あっ!と先程の商会の男の言葉を思い出した。


『だから一応、隷属魔法を掛けて一緒に運んでいました。』


奴隷魔法!だから喋れないのか!



< 奴隷魔法 >


隷属の魔法を使い、その対象者を奴隷にする特殊魔法

その陣が刻まれてしまった対象は、自分の意思で動く事ができないため主人に許しを貰わないと喋る事もできない

更に主人となった者の命令には絶対に従う様になる



これが奴隷……。


ゴクッ……と唾を飲み込み、緊張でガチガチになってしまった俺とは対照的に、ヒュードは何でもないかの様に軽く商会の男に話しかける。


「コレもあんたの商品だろ?どこで売りに出すんだ?」


「あぁ、確かにそうだったけど、ここで破棄するよ。

商人だからあまり非現実的な事を言うつもりはないが、【腐色病】の者は周囲に災いを振りまくとも言われているからね。

現にこいつを受け入れた瞬間、ゴブリンに襲われてしまったし、なんだか気味が悪くて……。

どうせ買い取り先を探すのも大変だし、労力と収入が見合わないよ。

しかし────なぜそんな事を聞くのかね?」


「いやぁ〜ちょっといいことを思いつきまして〜。」


ヒュードは何を考えているのか、ニヤ〜と笑い、【腐色病】の青年を見た。

そして指を差しながら会長さんに提案を持ちかける。


「でしたら、そいつ我々にくれませんかね?ちょっとだけ使い道を思いついたので……。

どうせ破棄するつもりだったのなら良いでしょう?

生きていたら、もしかして逆恨みでもして何かしでかすかもしれませんし〜。」


「ふ〜む。確かにそうだな。貰ってくれた方が私としては有り難いが……そんなモノ一体何に使うつもりかね?深く詮索はしないが……。」


不思議そうな顔をする商会の男に、ヒュードは笑顔で答えた。


どうせ碌なことじゃない。

それが分かり、俺はヒュードから青年の方へ視線を戻し、うっすらと開いている目を再度見つめた。


運が悪かったな。お前も……俺も。


同情の気持ちを持ったが、俺の様な何の力もない人間にどうする事もできずにただ見つめていると、ヒュードが今度は俺を見てニヤッと笑った。


「ドブネズミ、ちょうどいいからお前が主人になれ。

そんで使う時が来るまで、死なない程度に世話しとけよ。」


「────は……はぁぁぁぁぁぁ???」


予想だにしていなかった事を言われ、俺はポカンとしていたが、ヒュードがイラッとした雰囲気を出してきたので、俺は口を慌てて塞ぐ。

要はこの【腐色病】の青年を奴隷にしろと、そう言っている様だ。


「そ、そんなめちゃくちゃな〜……。」


汗をダラダラ流しながら、物申したいが睨まれているため何も言えず……。

商会の男も驚いていたが、まぁいいか!と思ったらしく、なんとヒュードに『どんな嫌な匂いも抑えます!消臭リング!』などという、腕輪型のアイテムまで売り始めたのだから、空いた口が塞がらないとはこの事!


商魂逞しすぎる!


ブツブツ呟いている間に話はまとまった様で、ヒュードは商会の男から買い取った『消臭リング』というアイテムを俺に投げ渡し、偉そうに言い放った。


「それをそいつに嵌めてさっさと契約結べ!俺達が戦利品を分けている間に終わらせろよ〜?

面倒だったら足を切って部屋に転がしておいてもいいが、とにかく死なせるな。分かったな?」


「は……はいぃぃぃ〜……!!」


引きつった笑顔で敬礼した俺は、直ぐ奴隷の契約をしてしまおうと、魔法陣が書かれた手の甲をギュッと握りしめた。


奴隷の契約は、相手に一方的に魔力を流して名前をつけるだけなので、特に触れる必要はなかったが……何となくその存在に触れもせず勝手に名前をつけるのに違和感があったというか……相手の人生を決めるのにあっさりしすぎるのは嫌だと思ったからだ。


……まぁ、奴隷なんてモノにするのに、違和感もくそもないが。


「名前はそうだな……うん、『サン』にしようか。」


俺の<グラン>というのは、大地という意味なのだが、実はいい意味でその名をつけたのではない事を知っていた。


地中から一生這い出れないミソッカス。

小さく生まれた俺に何の期待もせずにそう名付けたのだと、最後に直接言われたから。

だから、何となく正反対の意味でつけようかなと思ったのだ。


いつかきっと空に輝く太陽に手が届くぞという意味を込めて『サン』。


……うん、悪くない。


名前をつけた時、その青年……サンの目が先程よりもっと開き、続けて俺に握られている手を睨みつけた。

自分が奴隷にされた事を理解し、多分戸惑っているのだと思う。

しかし、もうサンは俺の奴隷になった後で、手の甲の魔法陣はシューシューという音を立てて、契約完了してしまった。


「……あ……お、俺……。」


ブルブル震えるサンを見下ろし、俺はチクリと胸を痛めたが、直ぐに気を撮り直し世の無情さをしっかり突きつけてやる。



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