大天使の羽根
「ああ、いいわ。その力が入ってないのが良い感じ。あんたも分かると思うけど、肩凝るのよねー」
エルエルは僕に肩を揉まれながらゆっくり首を左右に振る。婆ちゃんかよ。あ、そうかコイツ見た目は若いけど神話の時代から存在する超ババアなんだよな。大天使だもんな。
「あんた気付いてないと思うけど、多分1つの欠片とは遭遇してるわよ」
「えっ、マジか?」
今まで遭遇した魔族、もしかしてデブ魔神か?
「マジよマジ。聖都に1つあったから。後は全部ガンデューム川より北にしかないわ」
ガンデューム川より北って事は、僕らの国に存在するのは1個だけって事か。ん、聖都にある? と言う事はデブ魔神じゃないのか。
「お前、今でも欠片がどこにあるか分かるのか?」
「んーん、もうわたしの中に欠片は無いから分かんないわ。巧妙に気配を隠してるから、欠片を感じられるのは、欠片を持ってる者だけだと思うわ。けど、多分、聖都に居るのは剣の魔王。剣持ってる強い奴に近づかないようにしてたら問題無いんじゃないかしら」
剣持った強い奴? 沢山いて誰か分かんないな。まあ、聖都に帰るまでは問題無いか。
「で、ここら辺には居たのか?」
「多分居ないと思うわ。ここ異世界で精霊女王が管理してる訳で、何でも出入りは察知されると思うし、事象がねじ曲げられてるからここには入って来られないと思うわ」
「なんで、そんなに色々教えてくれるんだ?」
「そりゃ、あんたに感謝してるからよ。浣腸されたけど。それに、あんたに死なれたら気分悪いじゃない。まあ、だからそのロザリオを滅多に外さない事ね。魔王の欠片たちには多分強力な聖魔法で欠片が1つ消滅したことは伝わってるはずだから」
僕は首からかけてる封魔のロザリオを握り締める。これで僕から漏れる聖なる魔力を押さえつけてる限り魔王の欠片からは感知されにくいって事だろう。前に死王だったエルエルは、かなり遠くから僕の魔法の波動を感知したらしいからな。
それよりも、もしかしてこれってエルエルが僕の仲間になってくれるっていうフラグが立ってるんじゃ? ここまで話したって事はもしかして魔王の欠片に遭遇した時に守ってくれたりするのでは? 奴は元死王。めっちゃ強いはず。意を決して口を開く。
「そうだ。エルエル。僕らの仲間にならないか?」
「え、なんで?」
「え、僕を欠片から守ってくれるんじゃないのか?」
「は? 嫌よ。なんでそんな事しないといけないの?」
「今の話の流れからそうじゃないのかと……」
「あのねー。わたしはやっと自由を手に入れたのよ。戦闘狂じゃあるまいし平和にのんびり暮らしたいのよ。この情報で十分解放してくれた借りは返したはずよ。わたしの加護が欲しいならそれにふさわしいものを用意するのね」
浄化してやった事と、その情報が等価かどうかサリーに後で聞いてみよう。まあ、別にエルエルをどうしても仲間にしたい訳じゃないから、ま、いっか。
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