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 大天使現る


「おーい、ウシオーっ!」


 僕は滝壺を眺める。ちょっと、確かに面白そうだ。僕も飛び込んでみたいけど、キラじゃなくて鈍くさいマリーだと溺れる未来しか見えない。けど、マリーは脂肪沢山特に胸なので浮きそうではあるが。それより1人ぼっちにしないで欲しい。今、エルエルと遭遇したら間違いなくやられる。


 バシャーン!


 すぐにウシオは水から顔を出す。良かった。


「ご主人様、ここは思ったより深いですね。あと、水が冷たいです」


「分かった、ウシオ戻ってこい」


 トポン!


 水音がしたと思ったら、ウシオは再び滝壺に潜って行った。何やってんだ。けど、珍しいなウシオが僕の言った事を聞かないなんて。僕は岩に膝をついて水中に目をやる。


「おい、ウシオ、何ふざけてんだよ。上がって来いよ」


 されども返事は無い。滝の水の落ちる音と、謎の鳥の声だけが聞こえる。なんだこれは、新手のスタンドが現れたのか?


「ウシオーっ!」


 ゴボゴボッ!


 水から何かが上がってくる。


「プファー」


 水から顔を出した端正な顔の生き物それが大きく息をする。羽根がブヮシャーって開く。天使だ! 顔に髪の毛が貼り付いていてオカルトだ。


「あらあら、ウシオじゃなくて残念ね。子猫ちゃん」


「あ、あ、こんにちわ。エルエルさん。良い天気ですね」


「はい、本当に良い天気ですね。水浴びにはとってもいい天気ですわね。もっとも滝の中は水が荒れ狂ってるのですけど。ホーッホッホッホ!」


 悪役令嬢よろしく手の甲を口に当てて哄笑をあげている。髪と洋服を体に張り付けながら水面に立つ天使。その羽根もペターンと貼り付いている。クソッ、でっかい胸の先端にはニプレス的なものをつけてやがる。という事はあらかじめ待ち受けられてたという事か? 多分コイツは僕を水に引きずり込むつもりなんだろう。なんとか舌先三寸でここをしのがねば。


「ウシオに何をしやがった!」


「簡単な事ですわよ。魔法で浮力を奪っただけですわ。もうじき這い上がって来ると思いますけど、その前にあなたをどう料理して差し上げましょうか?」


 浮力を奪う? と言う事はウシオは沈んだだけか。ウシオの膂力ならなんとかして滝壺を這い上がってくるだろう。それまで保てばしのげそうだ。


「やっぱ、さっきの事根に持ってやがるのか。あれは痛み分けだ。僕だって指の骨を折った」


「そうですわね。ですが、この世に生を受けて幾星霜、あのような辱めにあったのは初めてですわ。あなたにはどういう恥ずかしい事をして差し上げましょうか?」


 かき分けた髪から僕を覗く二つの蒼玉。その中ではまるで炎が燃えているかのようにチラチラ光っている。口の端には笑みを浮かべているが、目が全く笑って無い。なんとか話を逸らさないと。

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