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 森の泉


「おい、どこまで歩くんだ?」


「そんな近くで、天使が水浴びする訳ないじゃん。あんた達じゃあるまいし」


 ハーフエルフはやれやれしてる。


「ちげぇーわ。僕らは露出狂集団じゃねーわ。この森の呪いのせいじゃボケ!」


「なに熱くなってんのよ。揉むわよ」


「触んな!」


 ウシオがガードしてくれる。事あるごとにこいつは僕の乳に触れようとする。そりゃ頭に血がのぼるわ。



 村から出てしばらく獣道を歩くと細い川に突き当たる。ハーフエルフの店員、名前はエルザについて川沿いに僕たちは歩く。もうかれこれ数十回は乳を触られた。たまにウシオのガードもくぐり抜けてくる。こいつ強いんじゃ?


「もう少しよ。けど、そう言えばアンタの仲間の双子、もしかして上流に向かったんじゃないかしら。この川、上流に行くにつれて細くなってくのよ。あとしばらくすると滝壺があって天使が水浴びしてる所に出るわ」


 ん、それもあり得る。川で水浴びしようと思ったら、何も予備知識が無かったら遡ると思う。なんか上流の方が水が綺麗っぽいからな。

 歩くにつれて川幅は広くなり、断崖に突き当たる。下まで20メートルはあるんじゃないだろうか。


「降りるのは簡単そうだが、どうやって登って帰ってくるかだよな」


「ご主人様、それは問題無いです。私でしたらこんな崖を登る事など造作ないです」


 まあ、ウシオならそうだよな。頼もしい。


「あたしはここで待っとくわ。あたしは遠見の魔法使えるから、天使の裸はここから拝ませて貰うわ」


 川は滝になっていて、下には滝壺が見える。今の所誰もいないみたいだ。


「よし、ウシオおんぶだ」


 僕は問答無用でウシオの後ろに回ってしがみつく。


「ご主人様、こ、心の準備が……」


「飛べ、ウシオ! グラビティ・ゼロ!」


 ふわっと体が軽くなる。必殺の重力操作だ。


「わかりましたっ!」


 そして、ウシオは崖から飛び降り僕らはゆっくりと落ちていく。


「あのー、お願いですから、あんまり動かさないで貰えないでしょうか?」


「贅沢言うな。ただ落ちるだけじゃつまらんだろ」


 僕は少し緩急をつけながら降りていく。加速してゆっくり、そしてまた加速してゆっくり。


「ですけど、当たってる感触が……」


 来たっ! 決めゼリフチャンス!




「当ててんのよ!!」




 ヒャッホー! 男子が美少女に言われたい台詞トップ3に入ると思われる名言が今、僕の口から放たれた。


 嗚呼!


 言うんじゃなくて、言われたい。出来ればマリーじゃなくて、キラの時に……


「はい……」


 ウシオが返事する。「はい」って何だよ「はい」って。そして、僕らの間には微妙な空気が流れる。多分、ウシオの語彙力では、なんて返せばいいのか分からなかったのだろう。僕もそんなリアクションされたらなんて返せばいいのか分からない。そして、無言のまま崖の底についた。


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