クリスマスSS 悩殺サンタ
メリークリスマスっ!
『リア充、激しく爆発しやがれ! 人目を憚らずイチャつくクズ共め。等しく混沌を与えてくれよう!』
僕は聖女にあるまじきドス黒い感情に心を支配される。
クリスマス!!
僕はこの世に生を受けてこのかた、恋人なるものと一緒に過ごした事など無い。そして、前々から画策していた計画を今年は実行に移す事にした。目に付く限り手の届く限り全ての恋人達に復讐する事を。
僕は辺りを見渡す。この聖都はもうクリスマス一色だ。どこにもかしこにもクリスマスツリーなる木に訳分からん飾りなんかつけやがって、至る所で流れるクリスマスミュージックなるものが流れてやがる。とても不愉快だ。
そのクリスマス色に染まる中でも、綺麗なイルミネーションでデートスポットと喧伝されている、ここ時計台前の広場はカップルだらけだ。いやカップルだけしかいない。寒い。心も体も。けど僕の心にともる怨嗟の炎が僕をつき動かす。リア充爆ぜろ爆発しやがれ!
よし、始めるか!
僕はコートを脱いで、隣に控えるトナカイに渡す。
「メリークリスマス!」
上目遣いアンド、スーパー猫なで声で、僕は近くにいた手を恋人つなぎしてるカップルに近づく。そして、トナカイからプレゼントを受け取り最高の笑顔で男性に差し出す。
ケケケケケケケケケッ!
奴は僕の胸にある2つの爆弾をチラ見しやがった。そりゃそうだオフショルダーの胸元バチコーンと空いた服でおっぱいの上三分の一くらいは露出させている。これで見ない男はホモだ。ホモに決まっている。けど、ホモなら彼女を連れてる訳がない。よって男は僕の胸元を絶対見る。QED!
しかもこの僕の美貌。そしてあり得ん程に縊れたウエストとすらっと伸びた足。当然スカートはスーパーミニだ。下には見せパンも装備しているぜ! しかも赤と反対色のブルー。パンチラ目立ちまくりだぜ!
赤い帽子も被って、紛う事無きミニスカサンタ様だ。この界隈にはサンタコスのねーちゃんもいるが、間違いなく僕が露出度ナンバーワンだ。けど、めっちゃ寒い。お腹壊しそうだ。
「あ、ありがとうございます……」
しばらく立ち竦んで熱にうなされたような真っ赤な顔で男性は僕のプレゼントを受け取る。ケケッ。呑気なものだぜ! その中身が何かも知らずになぁ!
「もう、何よ! コー君、デレデレしちゃって!」
カップルの女性は手を振りほどいてコー君と呼ばれた彼氏を置いていく。そりゃそうだよな。せっかくのクリスマスのデートで、彼氏が他の女の子に見とれてたら、そりゃあ気分悪いわ。
「コー君、またねっ❤︎」
僕は最高の笑顔でコー君を見送る。
「ま、待ってよミキちゃーん……」
コー君はミキちゃんを追っかけていく。フフッ、この後間違いなく痴話げんかだな。別れない事を祈ってやるぜっ!
「さすがですねー。マリー様。あとはプレゼントを開けた時の奴らのリアクションも見たかったですね」
ウニ、もといトナカイが黒い笑顔を浮かべている。コイツも僕と同様今までソロクリスマスを過ごし続けてきた同志だ。うん、コイツ、見るからにモテなさそうだもんな。むっつりだし。あ、ブーメランか……
「そうだな。この勢いでどんどん不幸をぶり巻いてやるぜっ!」
そして、僕はウニもといトナカイを引き連れてカップルの男共を悩殺しながらプレゼントを配りまくった。やっぱ、流石僕。数多のカップルに存続の危機を迎えさせる事に成功する。これで性交する人間も減る事だろう。良い感じの駄洒落だ。ケケケケケケケッ!
「またね。チー君っ❤︎」
彼女を追っかけるチー君を見送る。あー楽しい!
ぱっちーーーーん!
な、何かが僕の頭を叩く。誰だっ!
「『またね、チー君❤︎』っじゃないわよ。マリーちゃん何やってるの?」
ゲッ、サリー。何で手にハリセン?
「サリー、何でここに?」
「『何でここに?』じゃないわよ。もう、どこでもあなたの噂で持ちきりよ。寒い中、露出狂のような美少女がカップルにいかがわしいプレゼントを配ってるって。マリーちゃん、せっかくのクリスマスに何やってるのよ?」
「そりゃ、世界平和のためだ!」
「あなたが世界平和を乱しているんでしょ! もう、ウニ君もそんな馬鹿な事しないで、止めなさいよ。あっ、それがプレゼントね。没収ですっ!」
サリーはウニからプレゼントの袋を奪う。
「あっ、ダメです。サリー様。開けちゃダメです」
ヤバい、ウニの静止を振り切って、サリーがプレゼントの1つを開ける。いかん、サリーにはこの手の冗談は通じない!
「マリーちゃん。な・に・こ・れ」
サリーは額に青筋立ててるよ。こりゃまじおこだ。
「分子分解!!」
サリーの手から放たれた白い光がプレゼント(大人のおもちゃ)を全て塩に変えた。ああまだ幸せを配りたかったのに。
それから僕とウニはサリーにこってり絞られた。その後のお仕置きはボディタッチ多めなご褒美に近いものだった。アナや、モモさんもいつの間にか乱入してきた。相変わらず、僕、マリーは女子にモテモテだ。
ああ、マリーじゃなくて、誰か男の時の僕を好きになってくれないのだろうか?




