第十三話 破滅の聖女
「では、お前の仲間が来たら、私の仲間を発掘してくれるのだな……」
ロザリンドは、さらに乱れて、服もぼろぼろになっている。にもかかわらず、優雅にコーヒーを飲んでいる。さすが女王。
「任せろ! 全員必ず掘ってやるから。けど、もしかしたら死王と遭遇するかもしれない。ロザリンド、死王について知ってる事を話せ!」
僕も肩で息をつきながら口を開く。髪は多分ボサボサ、服も少し破けたような……
吸血鬼の女王に負けないようにエレガントにコーヒーをすする。なんかここしばらくでロザリンドとかなり仲良くなった気がする。スーパー再生能力という共通点もあるし。強敵と書いて『とも』と呼ぶ。
「そう、わかった。死王は強い。間違いなく塩の山の中で生きている」
「生きてるって、アンデッドではないの?」
サリーが机に来て座る。さすがにもう第三ラウンドはないと思ったのだろう。
「ああ、多分、アンデッドではない。私も直接話した事はないけれどな。いつも副官を介して会話していた」
「では、死王とその副官と戦う可能性が高い訳か?」
「そうだな。悪いが、私はその戦いには参加せんぞ。私の攻撃は全て効かない」
「戦ったことあるのかしら?」
ベルも席につく。ウシオ、メイさんも戻ってくる。シェイドはみんなにコーヒーを準備している。僕たちはみかんを食べコーヒーを飲む。みかんにコーヒーはカフェオレに限る。ブラックは合わない。
「昔、私達は死王と戦った。全く歯がたたなかった、まあ相性の問題だ」
「じゃ、いいけどさ、戦いの時邪魔だけはしないでくれよ」
僕は一口コーヒーをのむ。ロザリンドはこれ以上、死王については知らなさそうだな。次の疑問にいくとするか。
「ロザリンド。何故お前は僕を破滅の聖女って呼ぶんだ?」
「んっ、それは、お前が世界中を争いに巻き込むからだ」
ロザリンドは当然のことのようにそう言うとコーヒーを口にした。世界中に争い? どういう事なんだ?
僕は彼女を見つめる。彼女は再び口を開く。
「聖女……お前は何故死王がここに居座ってたのか、お前が何故狙われてたか知りたくないか?」
ロザリンドは澄んだ目で僕をじっと見つめる。
「知りたい! 知りたい!」
ボクは手を挙げる。
「大金貨十枚……」
ロザリンドは右手をだす。こいつはなんて澄んだ目をして金の事を口に出来るのだろうか。悪、真正の悪の香りがする。
「サリー、よろしくっ!」
僕は今はほぼサリーにたかっている身なので頭を下げるしかない。
「ロザリー……高過ぎるわ! それならせめて、知ってる事洗いざらい話してほしいわ」
サリーはロザリンドの前のテーブルにしぶしぶ大金貨を一枚ずつ十枚置く。サリーにしては殊勝だな?
「死王と聖女について私が知ってる事全て話す。あと、質問があったら1つにつき小金貨1枚いただく」
ロザリンドは微笑む。ずっと微笑んどけば可愛いのに……まだ金とる気なのか。
「死王はもともとは争いを止めるために、骸骨城を作った」
ロザリンドは椅子に座り、僕たち全員の顔を見る。
「ここは、城が出来る前は、魔領と人間領の境で、有史以来ずっと合戦が繰り広げられてきた。数百年前、魔王が降臨したときに、人魔戦争は魔の方に偏り、あと少しで人間は滅ぶ一歩手前まで追い詰められた。
その時、人間族の英雄たちは魔王軍をなんとか後退させて、東は魔道士ガンダーフが川によって魔領と人間領を分断し、西はガンダーフと盟友だった英雄が禁忌に手を染めてネクロマンシーにより死者を集めて、魔族も人間族も踏み込めない要害と化した。
時が流れ、その死者を集めた英雄を人々はこう呼んだ。死王と。そして、死王は魔領、人間領に現れた強い聖属性の者を狩り始めた。自分のアンデッドの軍団を守るために。
そして、いつしか大きな争いを出さないために作ったはずのアンデッドの軍団の目的が、アンデッドを増やす事、聖なる者を狩り尽くす事に変わってしまった。
多分、どこかで死王は魔王の欠片に魅入られたのではないだろうか?
そして、先日人間領で、馬鹿みたいに強力な聖魔法の発動が確認され、その元凶の名を破滅の聖女と呼び、軍団の最優先事項がその者を殺す事になって今に至る訳よ」
そう締めくくると、ロザリンドはコーヒーを口にした。なんか色々疑問が解けたけど。立て板に水のように話されたので理解が少し追いついてない。サリーが何も言わないって事は、情報の価値は適正だったのだろう。
まだ聞きたい事もあるが、お金取るみたいだから、慎重に質問していこう。
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