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 第五十四話 牛男無双


「ご主人様! 僭越ながら、この場はこのウシオめに任せていただけないでしょうか?」


 いつも無口なウシオが口を開く。赤い短髪にすこし濃いめの顔。牛は草食動物のはずたけど、まるで獰猛な肉食獣みたいだ。


「ああ、任せた。ウシオの好きなようにやれ」


 ウシオなら問題なく、アンデッド共を殲滅してくれるだろう。


「ありがとうございます。戦い方について何かご注文はございませんでしょうか?」


 別に無いな。巻き込まなければそれでいいが、それはウシオには言わずもがなだろう。


「ああ、自由にしてくれ。ウシオに任せた」


「その期待にお応えいたしましょう!」


 ウシオは立ち上がると騎馬立ちになり全身に力をいれる。体から陽炎のようなものが溢れ出て、その顔がこわばり、毛と角が生え牛の顔になる。昔見た狼男の映画みたいだ。


 けど、よく見るとつぶらな瞳で牛は可愛いよな。


「キャアー! 格好いい!」


 メイさんが黄色い声を上げる。みると、キラキラした目で牛男を見てる。僕の中では牛男は格好いいと思うのだが、共感してくれる人は少なく、理解者が増えてすこし嬉しい。


「それでは、シェイド殿、影の主を私にして下さい。そして皆様影の中でゆっくりとされてて下さい」


 牛男は首筋から何かを出す。斧のチャームが付いたネックレスだ。それを首から外すとみるみる大きくなって、刃だけで僕が隠れる位の超巨大な斧になった。でっかい団扇みたいだな。


「牛男、それどうしたの?」


「すみません、私の斧が使い物にならなくなったので、ご主人様のお母様からいただきました」


 牛男は軽々とそれを掲げる。


「マリーちゃん、あれって精霊女王に貰ったモモの剣と似てない? ちょっと貸して」


 サリーが近づいて牛男から斧を受け取る。


 持てるんかい!


「軽くて重心のバランスもいい、とってもいい斧ね、牛男ちゃん、今からこれで特攻かけるんでしょ。最初1分だけ代わって。お願い!」


 サリーがウシオを片手で拝む。片手ででっかい斧持ってやがる。


「まぁ、私はいいですが、ご主人様いかが致しましょうか?」


 僕はウシオの活躍を見てみたい。


「サリー、最初の1分は牛男でその次サリーじゃ駄目かな?」


「マリーちゃん、牛男ちゃんがいったら、多分1分後には敵は1人も居ないわよ」


 サリーは収納から砂時計を出してテーブルに置く。僕が調理タイマー代わりに使ってるやつだ。


「それじゃ、1分だけ外で戦わせて! 1分たったら呼んで!」


 そう言うとサリーは斧を片手に飛び出した。サリー、ストレスたまってるのかなぁ? まあ、そりゃそうだ。ベルに振り回されてるからな。


「私が無双する予定だったのに……」


 珍しく、牛男がぼやいた。ちょっと可哀想だ。



 読んでいただきありがとうございます。


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