第三十六話 飛翔
攻撃は、熾烈を極める。顔以外全てをさらけ出している今、防御力は皆無だ。
一撃が命取りだ。
特にモミの放つ矢がえげつなく、僕のロンギヌスを正確無比に執拗に狙ってくる。
かまととぶってるくせに、ガン見してやがるな、あいつ。
「キャー! なにあれ!」
「うわっ! きたなっ!!」
「キャッ、大っきい!! ぶるんぶるん揺れてるわ!!」
下では、僕を見て女性達が楽しそうにキャーキャー言っている。こんな状況ではあるが、大きいと言われると、なんか嬉しい。
もっとも、僕は勇者的な行為で賞賛されたかったのだが……
男子禁制のアパートの前に裸で浮かんでる僕は、ある意味勇者ではあるが……
「フレアアロー!」
ぶっとい炎の矢が下から僕のロンギヌスを掠める。チリッと何かが焦げた臭いがする。危ねー! あと少しで、体育会系の宴会芸みたいになるとこだった!
「ライトニングボルト!!」
荒れ狂う稲妻が僕に襲いかかる、すんでのところで躱すが、カボチャパンツに引火する。叩いて消すがあと少しで僕の命綱が絶たれるとこだった。穴があいて僕の鼻が露出する。
ああ、これを穿いたら大事な所丸出しだ。もう穿けないな……
僕の重力操作は、落下をコントロールするだけで、飛べる訳じゃない。ほぼ浮いている状態だが、回避のため、少しずつ高度が下がっている。下はいつの間にか人だかりになっている。
おいおい、何でこんなに若い女の子が、多いんだ……
少しずつ攻撃が掠め始める。このままではジリ貧だ……
だけど、採れる策が何一つない。
諦めるな!
諦めるな!
空中で無様に裸でタコ踊りしながら、僕は自分を鼓舞する。
縦横無尽に華麗に回転し、人としてあり得ないような動きで、直撃を避ける。
傷だらけの僕のロンギヌスが宙を切る。そのなか、一筋の光明が差す。
角度からして下の人だかりを巻き込む危険があるからか、一番えげつないモミからの攻撃が止んだのだ。
ん、モミの姿が見えない!
嫌な予感がする……
「みんな! 避けてー!」
モミが、叫ぶ。その手になんか持ってる。
「死ねーーーッ!! ゴキブリーーーっ!!」
モミは、その手のものを上に掲げる。
アングル的にやばい!
パンツと下乳が見えてる見えてる!
やばい、ロンギヌスが進化しそうだ!
「あちちちちちちちち!」
モミの手の辺りから出た熱湯が僕に襲いかかる! シャワーヘッドを温度マックスで使ったのだろう。雑念と攻撃範囲の広さで、僕は直撃されてしまった!
集中が切れて更に高度が下がる。下には箒やフライパンなどを持った女の子達がわらわらいる。箒もフライパンも間違いなく僕のロンギヌスの天敵だ。
けど、よく見ると、僕の下のお湯が降り注いだ範囲に人が居ない空白が出来ている。
チャンス!
そこに降り立ち再跳躍すればしのげる。
チュイン!!
レーザー光線が、僕を掠める。着地予定の場所にゴーレムが立ち塞がる。
「しょーーーぶだっ!!!」
僕は叫ぶ!!
「ウォオオオオーーーッ!!!」
ゴーレムもなんか叫ぶ! 男のロマンだ! 話が分かる奴だ!
「アルティメットアトミックゴーレムパーーンチ!!!」
ゴーレムが技の名前を叫び拳を突き出す! このゴーレムの作者とは、気が合いそうだ、一緒に酒などあおりながら語り合いたいものだ。
「アクセル、テン!! グラビティ・ゼロ! マキシマム!!!」
咄嗟に勢いで考えた技の名前を叫ぶ。人間に耐えうる最大出力の加速魔法の反動が僕を襲う。
華麗に回転し、突き出された拳の伸びきった所に僕は降り立つ。
音もなくまるで天使のように。
辺りの時が止まる。
全ての目が僕に注がれる。
「私の勝ちだな! さらばだ!」
シュンッ!!
ゴーレムのパンチ力を加速力に変換し跳躍する。みるみるうちに雲を突き抜ける。
あの場にいた者達には、僕は消えたように見えたはずだ。それほどに華麗に決まった。
「ヒャツホーッ! 勝った! 勝ったんだーー!」
何に勝ったのかは解らないが、大空を滑空し、ロンギヌスをぶらぶらさせながら、僕は勝利の雄叫びを上げた!
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