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 第三十話 ロトンドラゴン


「なあ、リナこれからどこに行くんだ?」


「え、マリー姉様が知ってるのでは?」


「何言ってんだ? 僕はここにくるのは初めてだよ」


「母様が行けばわかるって……」


「マリーちゃんって、アンデッド引き寄せる体質だから、待ってたらドラゴンゾンビ出てくるんじゃないの?」


 僕はサリーに手を引かれてでっかい岩の上に登る。足元悪すぎだろ、ここで戦いになったら、きつすぎるな。


「さすがにそれは無いだろ。僕はアンデッド専用の撒き餌じゃないよ」


「グギャアアアアアーッ!」


 なんか雄叫びが聞こえる。


「おいおい、そんなに都合良くドラゴンゾンビ出てくる訳ないよねー」


「マリーちゃん! グラビティ・ゼロ!」


 サリーが叫び、僕を抱いて跳ぶ。


 丁度さっきまで僕が居たところに巨大ななにかが飛来する。


 まじか、ドラゴンだ!


 茶色系の体で、体の所々がはげてそげ落ちている。臭い、めっちゃ臭い、吐き気がするほど臭い!


 ドラゴンじゃない!


 ドラゴンゾンビだ!


 どうやって飛んできたんだろう?


「ストーン・バレット!」 


「ストーン・シャワー!」


 サリーとシェイドが魔法を発動する。僕を抱えたサリーの前方から岩が飛んでいき、ドラゴンゾンビの上から岩が降り注ぐ。



 ブチュ! グキュルッ!



 汚い音を立てて、突き刺さる! だが、何事も無かったかのように僕達の方を向き口を開ける。口からガスのようなものが放出されるが、サリーと僕は飛翔する。元いた所の岩石は溶けて煙を上げている。


「ロトンブレス! 少しでも擦ると腐るみたいね」


 サリーは冷静に分析する。腐るは嫌だ!


「ディバイン・サンダー!」


 リナの手から雷が降り注ぐ。


 あたった所は焦げるが、ドラゴンゾンビは全く気にせず、飛び上がり、リナに前足を振りかぶる。その動きは緩慢で、軽くリナはかわすが、あたってもいないリナが居た場所が深く抉れる。見えないなにかが放出されているようだ。


「巨大なウインド・カッターね! 風竜がゾンビ化したみたい。厄介だわ!」


 さすが民明書房刊のサリーだ。物知りさんだ。


「相性が悪いわね! スピードタイプの私達だと火力が足りなすぎる! 長期戦になったらジリ貧ね……」


 僕達はドラゴンゾンビの攻撃をかわし続け、攻撃するが、さしたるダメージを与えてるようには見えない。ドラゴンゾンビの動きが止まれば、僕のタッチヒールで浄化出来ると思うが、その時間を作れない。


「キャッ!」


 リナが見えない攻撃にあたって吹っ飛ばされる。やばい! 傷はなさそうだが、追撃しだいでは危険だ!


「インフェルノ!」


 どこからか魔法が放たれた!


 空気を震わすほどの魔力が解放される。


 ドラゴンゾンビの全身が激しい炎に包まれる。一瞬動きが止まる。


「どうりゃーっ!」


 前方からなにかが飛び込んでくる。光が一閃し、ドラゴンゾンビの首が落ちる!


「ウラウラウラウラウラ!」


 金色に光ったマッチョが飛んできてドラゴンゾンビを殴りまくる。


「ウンバラバッパ砲!」


 マッチョが両手を突き出し、その手から放たれた光がドラゴンゾンビに風穴を空けた。


 ドラゴンゾンビの首を落とした者が降り立ち、僕達の前に立つ。鍛え抜かれた上半身をさらけ出し、ボロボロのズボンを穿いている。赤い短髪に意思の強そうな少し角張った整った顔。片手に身の丈ほどある両刃の斧を持ってる。


「ご主人様! お久しぶりです! お手数ですが浄化をお願いします」


 その美丈夫は僕にニコリと笑った。僕には判る。それが誰か。僕たちは魂で繋がっている。


「牛男? 牛男なのか?」


「はい! あなたの牛男です! もう2度とおそばを離れません!」


 僕はあまりにも嬉しくて牛男に抱きついた。僕の意思に関係なく涙が溢れてた。



 読んでいただきありがとうございます。


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