第一八話 よそよそしい態度
「で、どうやったら、マリーに戻るんだ!」
僕の横に王子が座ってこっちを向く。
高度がとれて飛行が安定してきた。前方では金カブがイカを誘導している。魔神と王子と僕以外は、僕の影の中にあるシェイドの部屋に入ってる。魔神はシェイドが嫌がるので放置されている。
「王子、何の事だ?」
「お前マリーなんだろ。前、俺と戦ったときマリーになっただろ。今すぐマリーになれ。昨日の話の続きをしたい」
「おい、昨日はサクラがマリーを操ってたって聞いてないのか?」
「それは、聞いてる。けど、謝りたいんだ。マリーは泣いていた……」
王子は前を向く。
「俺は女を泣かせる男が許せない。自分自身が許せないんだ」
「じゃあ、今度、本人に会った時にいうんだな」
「わかった、そうするよ。すまなかった!」
王子は僕に頭を下げる。けど、恐ろしい事に気付く。という事は、王子はマリーとキラが同一人物だと知っててマリーを狙ってる訳か? バイセクシャルなのか? それならサクラで我慢しろよ。
「うわっと!」
僕は急に影の中に引きずり込まれる。
「BLは禁止よ! キラさん!」
着地すると部屋の中にはサリーとモモさんがいた。
何というか距離感を感じる。みんな話しかけてこないし、目が合ったら逸らされる。明らかによそよそしい。
「他のみんなは?」
「トレーニングしてるわ」
サリーが答える。声がちっちゃい。
モモさんの方を見ると目が合って、モモさんは赤くなってうつむく。
いつもなら、誰かがすぐに抱きついてくるのに、それがないとなんだか寂しい。
「お、キラ、私と手合わせするか? こいつ、話にならない!」
アナが部屋に入ってくる。その後ろから汗だくのアルスがついてくる。
「違う! アナが強すぎるんだ! 俺は決して弱くはない!」
「手合わせは、またで、サリーと2人で話がしたい」
僕は別室にサリーを連れて行く。いつもだったら速攻手を握ってきたりするのが無いのが寂しい。
「で、話ってなに?」
「みんなに、話したい。僕がマリーだって」
「そう、まかせるわ。けど、どうして急に?」
「なんか、明らかに距離を感じるんだ……」
「それは、仕方ないと思うわ、私も戸惑うから。だって、キラさんと一緒にいた時間ってほんの少しだから。けど、今、話したら気まずくなるだけだと思うわ。確かにキラさんは強いけど、あたしたちを信じてもいいんじゃないかな? あたしたちだってマリーちゃんくらいは守れるわ」
まあ、要はサリーは弱くても僕にはマリーで居て欲しいって事か。みんなでマリーを守ってくれるのか。それに、マリーには強力な癒しの力がある。確かにキラの方が強いけど、危険な戦いで誰かが傷ついたらマリーじゃないと回復魔法は使えない。さすがにキラでみんなを守るのは無理だ。
なんだかんだ理由をつけても、実際はいつも通り女の子たちに揉みくちゃにされたいってのが本音だ。
「そうだね、みんなを信じるよ」
僕は、みんなの所に戻ると、なんとなくアルスの頭を叩いて、衣装部屋で変身して着替える。体がもっさりするけど、なんか落ち着く。そして、みんなの所に戻る。
「「マリーちゃん!」」
「「マリー!」」
みんなが笑顔で僕を迎える。なんか複雑だけど、ま、いっか。みんな嬉しそうだし。
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