第十八話 自由
「むかつく奴らだったけど、すこしすっきりしたわね」
サリーが走りながら話しかけてくる。
「伯爵家は厄介だな、私達は誰も貴族ではないからな……」
アナも走りながら答える。珍しくまともな事言ってる。
「だから、放置しとけばよかっただろ。マジあいつらクズだからな」
僕はモモさんの背中で口を開く。強いて言うならモモさんが黒騎士スタイルなのが少し不満だ。重い鎧をものともせず走り続けるモモさんは間違いなく人外だ。
あの後部屋を出て町に戻る事になった。3人は日帰り予定で、来るときも走ってきたそうだ。当然それに僕が追いつける訳なく、おんぶされてる次第だ。
地下30層にも中地下1層(地上と地下1層の間の階層)へのワープポータルがあるはずだけど、勢いで部屋を出たし、あいつらを少しでも見たくないという事で、全員同意して地下20層のポータルを目指している。
地下20層には、落とした僕の鎧のパーツがあるはずだ。かさばるから運がよかったら放置されているはず。ちなみに兜と胴鎧は収納にしまってある。モモさんがバキバキにしたけど、まだ修理出来るはずだ。男にいつ戻れるかわからないけれど、大事な鎧なので失いたくはない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あったーっ!」
つい、はしゃいでしまう。地下20層に僕の鎧のパーツは落ちていた。けど、ボッコンボッコンになってる。僕の頭にジェフの顔がよぎる。無駄に踏んだり叩いたりしたのだろう。ヤツは僕の何がそんなに気に食わなかったのだろうか?
「あの、う○こ野郎が!」
つい悪態が出てしまう。アナの影響か汚い言葉をはいてしまう。
「マリー、う○こしたいのか? せめて隠れてしてくれよ」
当然のようにアナがくらいついてくる。相変わらずアクセル全開だ。事故ればいいのに。
「誰がこんなとこでするか、ばかっ!」
「それより、その鎧かなり大きいわよね、しかも男物よね?」
サリーが僕の鎧の破片をまじまじみてる。何て言おう。男から女になりましたって言っても信じてくれないだろう。
「まあ、そだね。理由はいつか話すよ」
「ふうん……」
納得いってなさそうだ。けど、とりあえず、今はごまかすことにした。
僕たちはワープポータルを見つけて僕が最初に飛び込む。ここからが正念場だ。
「グラビティ・ゼロ!」
転移しながら重力をカットして準備する。転移が終わった瞬間に疾走する。これでコイツらとはおさらばだ。一緒にいたら命が幾つあっても足りない。
ラッキー、丁度数組の冒険者が部屋に居る。その頭上を軽く跳躍して越える。これは普通の人は助走しても無理な動きだ。部屋を出て階段を駆け上がる。
「よっしゃー!」
やっと、僕は自由になった。太陽の光が目に沁みる。生還できたんだな。
読んでいただいてありがとうございます。
ここで迷宮から出て、街での話になります。キリがいい所ですので、よろしかったら、ブックマークの登録や、広告の下の☆☆☆☆☆の評価をお願いします。
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